スーパーウーファーについて(低音再生とは)
低音の波長は長い。
可聴範囲の最下限の20Hzの波長は、音速を340mとすれば17mになる。
オーディオの本には、低音の再生には部屋の一辺の長さが再生したい低音の最下限の半波長分が必要となる、
と書かれている。
つまり20Hzまで再生したければ、当然そこまで再生できるスピーカーが必要になるばかりではなく、
最低では20Hzの波長、8.5mの距離が部屋のどこかになくてはならない、ということだ。
天井高が8.5mの部屋なんて、そうないだろう。
となると部屋の縦方向か横方向の一辺が8.5m。
仮に正方形の部屋とすれば、8.5m×8.5mは72.25㎡になる。40畳ほどの、かなり広い部屋だ。
もうすこし一辺が8.5mより短いとしても、極端に短くなってしまうとプロポーションがひどいものになり、
音響的に好ましくない結果を生むことになる。
となると常識的な比率からもう一辺を決めれば、やはり日本では贅沢な空間となってしまう。
理想をいえば半波長なんてけちくさいことをいわずに20Hzの一波長分、
つまり一辺が17m以上ある部屋ということになる。
17m×17mは289㎡……。もう夢の話になる(私にとっては)。
だから広い空間を用意できない人は、低音再生はあきらめたほうがいい、というふうにも、
ここのことを持ち出していわれる。
そして「部屋が狭いから低音はいさぎよくあきらめました」とか
「質の悪い低音を無理に出すよりも出さない方が、音全体のクォリティは高くなる」などいう人もいる。
半波長の長さを必要とする──、
これは果してスピーカー(ウーファー)から音を出している場合にもあてはまることなのだろうか。
ウーファーのほほすべてはピストニックモーションで空気を、いわば強制駆動している。
実際の楽器が低い音をだしているときの空気のふるまいと、
ウーファーが低い音を再生しているときの空気のふるまいを、同一視していいのだろうか。
共通するところは多い、とは思う反面、音の出し方そのものが大きく異るため、
違う捉え方も要求されるはずである。
私の経験からいえば、たしかに広い空間のほうが、無理を感じさせない、自然な低音を出しやすい。
そのことは否定しないし、広い部屋は欲しいけれど、
狭い部屋だからといって、質の高い低音が出せないわけではない。
ただ難しい、というだけにすぎない。
だから部屋が狭いから……、などという言い分けはせずに、
そして固定観念、それに一般的な常識にはいっさいとらわれずに、
あれこれ挑戦してこそ、低音再生はおもしろい、といえる。
つまり低音再生は、鳴らす部屋込みで考えるべきもの、ということを忘れないでほしい。