スーパーウーファーについて(その12)
デジタル信号処理がオーディオ機器の中に取り込まれたことで、
アナログだけの時代では困難だったことも可能になり、しかも価格的にも身近になっている。
エレクトロニッククロスオーバーネットワークに搭載された時間軸の調整がある。
これによりスピーカーの個々のユニット配置の自由度が増した、と一般には言われている。
コーン型ウーファーと大型ホーン型の中高域の組合せだと、たいていホーンの長さの分だけ、
ドライバーの位置は後ろになる。
いうまでもなくウーファーから出た音とドライバーから出た音は、聴き手の耳に到達するまでの距離が異る。
それをデジタル信号処理で補整することができるわけだから、ユニットの配置の自由度が高まる、といわれている。
けれど、この項の(その1)でも書いたように、音源には実音源と、もうひとつ、いわば仮想音源がある。
とくにホーン型、それも大型のホーンになれば、この仮想音源の問題が浮上してくる。
ホーンのどの位置に音像が定位するのか。
たとえば、もうJBLもやらなくなってしまったが、スラントプレートの音響レンズや、
多孔型の音響レンズ(いわゆる蜂の巣状のもの)がホーンの前面についていると、
音響レンズのあたり、つまりホーン開口部あたりに音像はできる。
そういうホーンがある一方でノドの奥に音像ができるものもある。
いまのデジタル信号処理では、この仮想音源の位置までは補整できない。
つまりいかにデジタル信号処理を導入しようとも、仮想音源の位置合せは使い手側に要求される。
音響レンズ付のホーンであれば、ウーファーと同一平面状にマウントされた状態で、
ほぼ仮想音源の位置は揃うことになる。
このままではホーンの長さによってはドライバーの位置がウーファーよりも後ろにくることが多いので、
ウーファーにその分だけのディレイをかければいい。
実際には厳密な距離分だけの時間差の補整ではなくて、最終的には細かな詰めは求められるけど、
デジタル信号処理のメリットがうまくいきるケースといえる。
ノドの奥に定位しがちのホーンでは、ウーファーとホーン開口部を同一平面にしたままでは、
実音源の時間差は補整できても、
仮想音源の位置の補整はできないままなので、物理的な位置合せが求められる。
つまりデジタル信号処理があっても、各ユニットの配置の自由度が増すとはいえない。