Archive for category 組合せ

Date: 2月 13th, 2017
Cate: 組合せ

スピーカーシステムという組合せ(セレッションSL600・その3)

セレッションSL600のフロントバッフルの下部中央に、ロゴプレートがある。
これは両面テープで貼られている。

このプレートを指で弾いてみると、いい感じの音はしない。
これを外す。

聴感上のS/N比の優れたスピーカーシステムで、
聴感上のS/N比に充分な配慮をしたセッティングをしていれば、
このプレートを外しただけでも、音ははっきりと変る。

もっとも外した理由は音を良くしたいからではなく、
ロゴプレートのデザインに気に入らなくて、視覚的に外したかっただけである。

けれどSL600での変化は予想に反して鈍い。
同じことは他の個所についてもいえた。

ウーファーの周囲には金属製のプレートがある。
これはネジ止めされている。
これも外してみた。

外したSL600はみっともない。
それでも一度は外した音を確かめておく。

ここでの変化は鈍かった。
ここまで来ると、SL600はもしかすると聴感上のS/N比があまり良くないことに気づく。

他にも試している。
ウーファーのプレートを止めている六角ボルトの頭にゴムキャップをとりつけてみた。
レンチが入るところを埋め、ボルトの頭からの不要輻射を抑えるためである。
同じことをトゥイーターのボルトにやる。

これは当時のダイヤトーンのスピーカーシステムに採用されていた手法である。
ダイヤトーンのスピーカーでは、このキャップがあるとないとでは、はっきりと音の変化がある。

SL600は変化しないわけではないが、変化量が小さい。
これは聴感上のS/N比を大きく疎外している要因があるわけで、
それを抑えてみるために(その2)で書いている方法を採った。

この手法を採った上で、もう一度上記のことをくり返し試す。
あきらかに変化量に違いが出てくる。

これはもうエンクロージュアの素材に起因しているものと判断した。

Date: 11月 23rd, 2016
Cate: ワーグナー, 組合せ

妄想組合せの楽しみ(カラヤンの「パルジファル」・その22)

BBCモニターのLS3/5Aは好きなスピーカーである。
いまも好きなスピーカーといえる。

私にとってのLS3/5Aとは、ロジャース製の15ΩインピーダンスのLS3/5Aである。
そのLS3/5Aを初めて聴いた時から、
この音のまま、サイズが大きくなってくれたら……、
そんな無理なことを考えたし、LS3/5Aと共通する音色を聴かせてくれるスピーカーが登場すると、
これはLS3/5Aの延長線上にあるスピーカーかどうかを判断するようになっていた。

メリディアンのM20。
LS3/5Aと同じ口径のウーファーを上下二発配し、中間にトゥイーター。
ユニットのそのものはLS3/5Aのそれと近い。

M20はパワーアンプを内蔵していたアクティヴ型だった。
専用スタンド(脚)が最初からついていた。

M20をメリディアンのCDプレーヤーと接いで鳴ってきた音には、ころっとまいってしまった。
私には、LS3/5Aの延長線上にはっきりとあるスピーカーと感じた。

LS3/5Aよりも音量も出せるし、その分スケールもある。
反面、小さなスケールから感じる精度の高さはやや薄れたように感じても、
音色は共通するところがあり、この種の音色に当時の私は弱かった。

M20はずいぶん迷った。
買いたい、と本気で考えていた。
買っておけばよかったかな、と思ったこともある。

その後、数多くのスピーカーが登場し、そのすべてを聴いたわけではないが、
めぼしいモノは聴いてきた。
LS3/5A、M20、ふたつのスピーカーがつくる線上に位置するスピーカーは、
私にとってはひさしく登場しなかった。

同じLS3/5AとM20がつくる線上であっても、
人によって感じる良さは共通しながらも違ってくるだろうから、
あのスピーカーは延長線上にある、という人がいても、
私にとってはベーゼンドルファーのVC7まではなかった。

VC7を初めて聴いた時、LS3/5A、M20の延長線上にある。
しかもずいぶん時間がかかったおかげか、
LS3/5AとM20の距離よりもずっと離れた位置にVC7はいるように感じた。

Date: 10月 26th, 2016
Cate: 組合せ

スピーカーシステムという組合せ(813と4311・その5)

(その5)としているが、完全に余談である。

オーディオユニオンが4343、4311タイプのエンクロージュアを製品化していたころ、
オーディオユニオンの店舗は原宿にもあった。

原宿の店舗を憶えている人もいるだろうが、
その店舗の前の話で、当時はラフォーレ原宿の四階と五階にあった。
新宿ももう一店舗あり、マイシティ(現在のルミネエスト)にもあった。

ダイナミックオーディオも六本木と青山にも店舗があった。
ダイナミックオーディオの六本木店の隣にロシア料理の食品店があった。
水曜日か木曜日にピロシキが売られていた。
揚げたてのピロシキがおいしかったことを憶えている。

この店のことは、ステレオサウンド 53号の編集後記で、Oさんが少し触れられている。
六本木のE食品店である。
たしかに、ここのレアチーズケーキはおいしかったが、
それは素朴なおいしさだった。

Oさんの編集後記はL洋菓子店のことを書かれている。
ルコントのことだ。
ルコントのレアチーズケーキを、E食品店の前に食べていた。
順番が逆だったら、違うおいしさを感じたのかもしれない。

E食品店はとっくになくなった。
ルコントも六本木からなくなり、すべての店舗が閉店した。
でも数年前に復活していて、広尾と銀座と三越日本橋店にいまもある。

オーディオユニオンはその後、吉祥寺と国立にも店舗ができた。
国立店は閉店している。

なくなった店舗もあれば、新たな店舗もあって、
店舗数としては大きく変っているとはいえないわけだが、
どこにあったのかは、大きく変ってしまった。

Date: 10月 25th, 2016
Cate: 組合せ

スピーカーシステムという組合せ(813と4311・その4)

1980年か1981年ごろ、まだまだスピーカーの自作熱が高かったころ、
オーディオユニオンがエンクロージュアを製品化していた。

4343のエンクロージュアのコピーを出していた。
4343のエンクロージュアのコピーは、他のエンクロージュアメーカーも出していたので、
特に珍しいことではなかったが、オーディオユニオンは4311のそれも出していた。

EN4311WXという型番で、35,200円(一本)。
ユニットはついていないが、ネットワークとレベルコントロール、それに銘板はついていた。
JBLのロゴはaudio unionになっていたけれど、
写真でみるかぎり4311っぽい感じは出ていた。

推奨ユニットとしては、
ウーファーは2213H(これは4311Bと同じ)、
スコーカーは2105H(4311B搭載のLE5-2のプロ用ユニット)、
トゥイーターはフォステクスのFT90HかJBLの2405(4311Bはコーン型のLE25-2)。

どんな音がしたのかはわからない。
こういう製品なので、その評価がオーディオ雑誌に載っているのも見たこともない。
私の周りには、使っている人、使ったことのある人、聴いたことのある人もいない。

2405搭載版は聴いてみたい気もする。
それに、このオーディオユニオン版4311も、
JBLの4311同様、ウーファーを下側にもってくる設置をしたら、うまく鳴らないのか。

このところだけでも知りたいのだが、無理であろう。

Date: 9月 29th, 2016
Cate: 組合せ

スピーカーシステムという組合せ(その5)

パスラボが2004年に発表した4ウェイのアクティヴ型スピーカー、Rushmoreもそうだったと記憶している。
どの帯域だったのかまでは記憶していないが、
カットオフ周波数をあえて離すことをやっている。

長年アンプを手がけてきたネルソン・パス初めてのスピーカーシステムにおいて、
この手法をとっていることに、相当に聴き込んで調整していったものだと想像できる。

アンプのエンジニア(電気屋)がつくるスピーカーは特性はいいけど……、
ずっとずっと以前はそんなことがいわれていた。
そういう出来のスピーカーシステムも、昔は少なかったのだろう。

でもアンプのエンジニアであっても、
魅力的なスピーカーシステムをつく上げられる。

ソウル・バーナード・マランツは1968年に、
マランツの社長職をしりぞいている。
よく知られるように、マランツ初のチューナーModel 10Bの開発が長引いてしまったことで、
開発費がかさみすぎて、1964年にスーパースコープの傘下に入っている。

ソウル・バーナード・マランツは1970年にダルクィストの創立に協力するとともに、
製品開発のコンサルタントをシドニー・スミスとともに手がけている。

ということはダルクィストのスピーカーシステムDQ10のネットワークはどうなっているのか。
このことに関心がわく。
DQ10はある種アヴァンギャルド的な要素を持っていた。

あえてQUADのESLのアピアランスに似せている。
そういうスピーカーシステムだから、ネットワークが教科書通りの設計とは思えない。

Date: 9月 29th, 2016
Cate: 組合せ

スピーカーシステムという組合せ(その4)

マランツの管球式のModel 3は、1957年に出ている。
真空管はECC83を三本使った2ウェイ用で、スロープ特性は12dB/oct.。

カットオフ周波数は、
100Hz、150Hz、220Hz、350Hz、500Hz、700Hz、1kHz、1.5kHz、2.2kHz、3.5kHz、5kHz、7kHz。
この12ポイントから、低域側/高域側のカットオフ周波数を選べる。

つまり低域側のカットオフ周波数を350Hzにして高域側を500Hzにするということも可能である。
このことは意外にも重要視されていない節があるが、
スピーカーシステムを構築していく上では、ありがたい機能である。

エレクトリックデヴァイダーはスイッチ、もしくはカードの差し替えで、
クロスオーバー周波数を変更できる。
けれど多くは低域側と高域側のカットオフ周波数を同時に変更する。

つまり低域側を350Hzにしら、高域側も350Hzになってしまうわけだ。
それで何が不都合なのか、と思う人は、
一度低域側と高域側のカットオフ周波数を個別に変更できるようにした音を試してみたらいい。
(なかなかそういう機会はないと思うけれども)

マルチアンプシステムは、LCネットワークよりも計算通りのスロープが得やすい。
スロープ特性がスピーカーユニットのインピーダンス特性とその変動に影響を受けることはない。
それでもスピーカーシステムを構築していくということは、
そう理論通りにはいかないもので、
時として低域側と高域側のカットオフ周波数を離したほうが好結果が得られたりもする。

井上先生は、Model 3のこの仕様を評して、
ソウル・マランツはスピーカーのことがわかっている男だ、といわれていた。

ただModel 3の、この仕様は、ソウル・マランツによるものなのだろうか、
それとも1954年にマランツに入社してModel 2をデザインしたシドニー・スミスによるものなのか、
そのへんははっきりしない。

Date: 9月 17th, 2016
Cate: 組合せ

スピーカーシステムという組合せ(セレッションSL600・その2)

セレッションのSL6という小型スピーカーシステムが登場したときのことは、
いまもはっきりと憶えている。

ステレオサウンドの試聴室で、山中先生の新製品の試聴がそうだった。
それまでの小型スピーカーのイメージは、
良くも悪くもロジャースのLS3/5Aによってつくられていた。
すくなくとも私はそうだった。

それを覆したのがSL6であり、
さらにクレルのKMA200(モノーラルで、A級動作200Wのパワーアンプ)で鳴らした音は、
低音域の相当に低いところにおいても見事としかいいようがなかった。

SL6は、だから売れた。
セレッションはエンクロージュアのみアルミハニカムに変更したSL600を続いて登場させた。
SL600は、すぐに購入した。

購入してわかるのは、以前も書いているように、
SL600にはある種の聴感上のS/N比の悪さがある。

いろいろ試してみた結果、
エンクロージュアの材質であるアルミハニカムに起因するものだ、といえる。

SL600を聴感上のS/N比の悪いスピーカーというと、
逆だろう、と思われるかもしれない。

確かによくなっているところはある。
アルミハニカム・エンクロージュアの特質といえる音があるのは確かだ。

でもそれは良い面ばかりでなく悪い面もある、というだけの話で、
それはSL600だけに限った話ではなく、すべてのどんな材質、方式にもいえる。

アルミハニカム・エンクロージュアの可能性は、SL600を鳴らしていて感じていた。
でも、そのままではどうしようもない欠点も感じていた、ということだ。

見た目をまったく気にしないのであれば解決法はある。
けれど、それではあまりにもみっともない見た目になってしまう。

SL600の欠点をはっきりと確認するためには、実験としてそういうことをやっても、
そのままの状態で聴き続けることはしない。

それではどうするのか。
こうすれば解決するのではないか、という方法は考えていた。
でも、それを試すには、当時は無理だった。

Date: 9月 17th, 2016
Cate: 組合せ

スピーカーシステムという組合せ(セレッションSL600・その1)

いまの時代、スピーカーの自作は、昔と比べてどうなのか、と思うことがある。
ここでいう昔とは、私にとっては1970年代後半から1980年代前半ぐらいのことを指す。

JBLのユニットはコンシューマー用、プロフェッショナル用ともに充実していた。
アルテックも、そのころは健在だった。
タンノイもユニットを単売してくれていた。

私が好きなフィリップスのフルレンジユニットも現役だった。
ジョーダン・ワッツのModule Unitもあった。
他にも使ってみたい、鳴らしてみたいユニットが、いくつもあった。

エンクロージュアをつくってくれるところもいくつもあった。
いまはみななくなってしまったが、エンクロージャー、インペリアル、進工社などがあった。
他にもいくつかあった。

その時代のHI-FI STEREO GUIDEをめくっていると、
おもしろかった時代だったな、と思う。

ある時期、昔より自作には向いていないことがあったのは確かだ。
でもいまの時代はどうだろうか。
昔とは違うのはインターネットがあり、さまざまな情報を得られるようになり、
同時にインターネットの普及がサービスを大きく変えていっていることも考え合わせると、
いまの時代、昔よりもスピーカーの自作がおもしろいといえるようにもなってきている、
そのことに気づかされる。

もちろんすべての面で……、とはいわないが、
いまの時代がおもしろいといえることがいくつもある。

Date: 9月 1st, 2016
Cate: 組合せ

スピーカーシステムという組合せ(813と4311・その3)

JBLの4311には4310というモデルが、先に存在していた。
基本的には4310と4311は同じだが、外観ではっきりとした違いは、
トゥイーター、スコーカー、バスレフポートをサブバッフルに取り付けているのが4310で、
4311では一枚のフロントバッフルに三つのユニットとポートが取り付けられている。

4310の写真を見て最初は、このサブバッフルはデザイン的なものだと思った。
ハタチになるかならないかのころだった。

けれどウーファーをバッフル上部に配置することでの加重のかかり方を考えると、
このサブバッフルは、ウーファーを上にもってきたために生じる加重の変化に対応するための、
いわば補強であったのではないか。

三つのユニットの中でウーファーがいちばん重い。
そのウーファーが上にあれば、トゥイーター、スコーカーまわりのバッフルへの加重は、
ウーファーが下にある場合よりも増すことになる。
ならば、この部分の強度を増すことも必要となる。

4310の実物に触れたことはないので、
トゥイーター、スコーカー周りの強度が、
ウーファー周りよりも増しているのか確認できていない。

それでも4310のサブバッフルは音質上不可欠なものだったと考えている。

Date: 9月 1st, 2016
Cate: 組合せ

スピーカーシステムという組合せ(813と4311・その2)

目には直接的には見えない物理現象が、音にも影響を与えている。
重力もそのひとつである。

もし地球の重力が半分くらいになったら、
重力がなくなったとしたら、その他の諸条件はまったく同じでも、
音は大きく変化する、と予測できる。

UREIの813、JBLの4311。
これらウーファーが上にくるタイプのスピーカーを、
通常と同じウーファーを下側にくるようにセッティングすると、
バランスがくずれてしまうのも、重力が大きく関係している、といえる。

ステレオサウンドで働くようになって、
井上先生の試聴で鍛えられたのは、この目には直接見えない物理現象が、
音に影響を与えていることを常に意識するようになったことが、ひとつ挙げられる。

ダブルウーファーのスピーカーには、
二つのウーファーを水平位置にしたものと垂直配置にしたものとがある。

ウーファー専用エンクロージュアを用意して、
縦置きと横置きにした場合の音の違いは、部屋の影響の度合が変化することももちろんあるが、
それだけでなく縦置き(垂直配置)と横置き(水平配置)とでは、
ここのウーファーユニットへの加重が違ってくる。
バッフルへの加重も縦置きと横置きとでは違ってくる。

無限大の強度を持つ材質が世の中にあって、
それでバッフルをつくり、ウーファーのフレームをつくるのであれば、
垂直配置、水平配置における重力の影響による違いはかなり小さくなっていくと思われるが、
現実にある材質は、無限大の強度とはほど遠い強度しかない。
ゆえに垂直配置、水平配置における重力の影響は、無視できないレベルで音の変化としてあらわれる。

Date: 9月 1st, 2016
Cate: 組合せ

スピーカーシステムという組合せ(813と4311・その1)

ステレオサウンド 46号で、UREIの813が登場した。
アルテックの同軸型ユニット604-8Gにサブウーファーを追加したユニット構成なのだが、
サブウーファーは604の上側に配されていた。

通常のスピーカーシステムであればウーファーが下にあり、
その上に中域、高域を受け持つユニットが配置される。

けれどまれにウーファーが上段にくるスピーカーシステムがある。
813の前から存在していた4311も、ウーファーが上にくるタイプである。

813の試聴記で、
《スピーカーユニットの配置が独特なので、試みに天地を逆さまにして床に直接置いてみたが、これでは音像がべったりして全然よくない。指定どおり、高域ユニットが耳の高さ附近にくるように、高めの台に乗せることが必要のようだ。》
と瀬川先生は書かれている。

これを疑いはしなかったけれど、
なぜそういう結果になるのか、その理由が当時は理解できなかった。

604のホーンが、耳の高さ附近にくればいいようにも感じた。
サブウーファーが下に来ることで床の影響はその分受けるだろう。
でも大半のスピーカーは下にあって、床の影響受けてもきちんとしたバランスの音を出す。
なぜ813では、だめなのか。

4311を逆さまにしたらどうなるのか。
この場合もウーファーを下にするとうまくいかない、ときいている。
JBLは後継機の4312で、ウーファーを下にもってきた。

ウーファーが上にくるモデルでは、スタンドの問題がついてくる。
813はフロアー型にも関わらず、かなり高めのスタンド(台)が必要となり、
しっかりしたモノとなると、813にピッタリのモノはなく、特註することにもなる。

813は813Bのコンシューマー版813Bxで、ウーファーが下側についた。

Date: 8月 23rd, 2016
Cate: ジャーナリズム, 組合せ

組合せという試聴(その8)

ステレオサウンド 42号についていたアンケートハガキ(ベストバイ・コンポーネントの投票)、
この記入は考え方次第で、楽にもなるし、考え込むことにもなる。

知っている範囲で、欲しいと思うコンポーネントのブランドと型番を、
各ジャンルで書いていくのであれば、楽である。
自分で買えるかどうかはこの際考えない。

とにかく「欲しい」と思うモノを記入していく。
その結果、どういう組合せになるだろうか。

ひとりの人間が「欲しい」と思うモノだから、
スピーカーにしてもアンプにしても、カートリッジにしても、
音の傾向がまるで違うモノが並ぶことは、原則としてはあり得ないはずだ。

けれど実際は違う。
編集部にとってアンケートハガキは、興味深いものである。
編集部に戻ってくるハガキの数は、読者のすべてではないことはわかっている。
送ってくる人よりも送らない人のほうが圧倒的に多い。

それでも最新号が書店に並んで数日後、
ぽつぼつとアンケートハガキが戻ってくるのに目を通すのは、楽しかった。

読者の選ぶベストバイ・コンポーネントの集計は、私が担当していた。
だからよくわかっている。
アンケートハガキには、投票機種の記入だけでなく、
現用機種の記入欄もあったから、そこから読みとれることはいくつもあるといえる。

感じたのは、意外にも組合せとしてちぐはぐに感じられるモノが並んでいるハガキがあること。
それも少なくなかった、ということ。

42号でのアンケートハガキでの記入で、
私がいちばん考えたのは、組合せとしてどういう音を聴かせてくれるのか、だった。

Date: 8月 20th, 2016
Cate: 組合せ

スピーカーシステムという組合せ(その3)

スピーカーと書いても問題なく伝わるけれど、
スピーカーは垂直的組合せと捉えているから、
このブログでは極力スピーカーシステムと書くようにしている。

スピーカーシステムは、確かに垂直的組合せによるモノだが、
水平的組合せが、その中に含まれている。
コンプレッションドライバーとホーンの組合せ、
コーン型ウーファーとエンクロージュアの組合せは、
垂直的ではなく、水平的組合せといったほうがいい。

そしてここにネットワークが加わるから、
スピーカーシステムという組合せが、ますますおもしろくなる。

コンポーネントとしての水平的組合せでは、
アナログプレーヤーの領域、CDプレーヤーの領域、
コントロールアンプの領域、パワーアンプの領域は決っている。
コントロールアンプがパワーアンプの領域の一部を担うことはない。

スピーカーシステムにおいては、ウーファーとトゥイーターの2ウェイであっても、
それぞれの領域をどうするのかは、ユーザー(この場合はビルダーか)に委ねられている。
クロスオーバー周波数をどのあたりに設定するのか。
減衰特性はどうするのか。
ウーファーの領域、トゥイーターの領域の設定は、
ユニットを破損させない範囲では自由に設定できる。

クロスオーバー周波数が800Hzというと、
ウーファーのカットオフ周波数、トゥイーターのカットオフ周波数も800Hzであると思われがちだが、
それぞれのユニットのカットオフ周波数とクロスオーバー周波数は、一致していないこともある。

マルチアンプを長年やっている人に訊いてみればいい。
エレクトリックデヴァイダーの中には、クロスオーバー周波数ではなく、
それぞれのユニットのカットオフ周波数を個別に設定できる製品がある。
古くはマランツの管球式のModel 3がそうである。

Date: 8月 14th, 2016
Cate: 組合せ

スピーカーシステムという組合せ(その2)

組合せの記事は昔からの定番である。
いままでオーディオ雑誌全体で、
どれだけの数の組合せがつくられてきたのかは数える気にもならない。
とにかく多かった。

参考になる組合せもあれば、ほとんど参考にならない組合せ、
自分の音楽的嗜好とは違うけれど、興味深い組合せなどがあった。

予算別の組合せもけっこうあった。
予算というのは現実的なものである。
そして、オーディオ雑誌に載った組合せそのままを買える(買った)人は、
いったいどのくらいいるのだろうか。

はじめてシステムを一式揃える人、
つまりオーディオの入門者の場合は、オーディオ雑誌掲載の組合せそのままということもあろう。

けれど、そこから先はシステムを一式買い換える人はそうはいない。
最初のシステムのどこかをまず買い換える。
アンプだったり、スピーカーだったりする。
最初にアンプを買い換えた人は、次はスピーカーかもしれないし、プレーヤーかもしれない。

予算に制約がなければ、オーディオ雑誌推奨の組合せを一式、
もしくはオーディオ販売店推奨のシステム一式ということもできるが、
そんな人はそうそういない。

ひとつずつ(少しずつ)、システムのどこかを買い換えてグレードアップしていく。
そのためシステム全体の組合せとしては、一時的にちぐはぐなところができてしまうことだってある。

同じことはスピーカーシステムの構築においてもいえる。
最初から目的とするユニットをすべて揃えられるのならば結構。
でもそうはいかない人(こと)のほうが多い。
構築の過程においては、一時的にちぐはぐなシステム(組合せ)になろう。

audio sharing例会で使うスピーカーも、
ウーファーにJBLの2220、2205、2231あたりが用意できればと思う。
でも、そこにあるモノを鳴らしていく。

制約・制限がある中で、どれだけ自在に鳴らしていけるかで、
鳴らし手の力量が問われるからこそ、面白いと感じる。

それに同じ組合せといっても、
システム全体の組合せを水平的とすれば、
スピーカーシステムの組合せ(自作)は垂直的といえる。

Date: 8月 13th, 2016
Cate: 組合せ

スピーカーシステムという組合せ(その1)

喫茶茶会記で毎月第一水曜日に行っているaudio sharing例会。
そこでの音出しに使うスピーカーは、既製品のスピーカーシステムではない。

いわば自作のスピーカーシステムということになり、
アルテックのウーファーとエンクロージュアは固定だが、
上の帯域に関してはアルテックの807-8A+811Bであったり、
JBLの2441+2397であったりする。

ネットワークも一般的な12dB/oct.スロープであったり、
6dB/oct.スロープの直列型であったりする。
クロスオーバー周波数もいくつか試している。
先日は別項で書いているように2405を追加して3ウェイにした。

こうやって一月に一回、もしくは二月に一回だったりするが、
スピーカーそのものをいじっていると、なかなか楽しいし、
スピーカーシステムも組合せだということを、いまさらながら実感させられる。

私がオーディオに興味を持ち始めたころは、
既製品のスピーカーシステムを使うのが一般的といえた。

自作スピーカーの書籍、ムックも、いまより出ていたし、
エンクロージュア製作の会社も、けっこうな数あった。

いまよりも自作スピーカーに向いていた時代でもあったけれど、
それでも最初は既製品だった。

10cm口径のフルレンジユニットを買ってきて、
手頃なエンクロージュアに入れれば、それも自作スピーカーといえる。
これならばそれほど手間もお金もかからない。

たいした音はしないだろう、と思うかもしれないが、
小口径フルレンジには、これならではの魅力があるし、
ここで終ってしまうわけでもない。

次のステップとしてエンクロージュアを変えてみる、という選択もあるし、
トゥイーターをつけて2ウェイにするという選択もある。
あまりしないだろうが、トゥイーターではなく、ウーファーをつけ加えて2ウェイにするのもありだ。

トゥイーターにするか、ウーファーするかは、
つくりあげようとするスピーカーに何を求めるかによって変ってくる──、
というよりも、オーディオを始めたばかりの人にとっては、
特に若い人にとっては予算の都合が、どちらを選択するかを決定する、ともいえる。

トゥイーターならば、ユニットだけでもすむ。
ユニットの価格もウーファーほどではないし、
ネットワークもウーファー用はコンデンサーもコイルも値の大きいモノが必要となり、
同程度のグレードのパーツで組むのなら、トゥイーターの方が安く済む。

プレーヤー、アンプ、スピーカーからなる組合せも予算の都合が影響大だが、
スピーカーも制約があるのは同じであり、だからこそ発展させていく面白さがある。