Archive for category ステレオサウンド

Date: 10月 19th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その76)

ステレオサウンド 54号の黒田先生の単独での試聴。
その試聴風景の写真が、各機種の試聴記の隅に載っている。

それまでの試聴と違い、黒田先生は試聴室に備えてある椅子ではなく、
座面の高い椅子を使われている。

このころのステレオサウンド試聴室の椅子の前にはテーブルがある。
このテーブルの上にアンプやプレーヤーが置かれていることが多い。
黒田先生の前にあるのは、このテーブルではなく机である。

菅野先生、瀬川先生がテーブルと座面の低い椅子に対し、
黒田先生は机とそれ用の椅子で試聴に臨まれている。

試聴風景の写真は扱いが小さいため細部まで確認できないが、
おそらく机の上にはスコアが広げられていたであろう。

このことと関係して、特集の巻頭座談会の最後に、こう語られている。
     *
 ところで、スコアを机にひろげてレコードを聴くことが多いというぼくの習性にも関係すると思うのですが、自分の耳が自分の尾骶骨より後ろにいくと、音楽をムード的に聴いてしまうように想うのです。そこで今回のテストでは無理をお願いして、机に向かって椅子に坐り、聴き耳をたてたわけです。聴く方は耳を尾骶骨より前に出して、細大もらさず聴きとろうと一所懸命なのですから、スピーカーをつくる方もその期待にこたえるだけの真剣さがほしいと思うのです。
     *
つまり黒田先生は、試聴機材を含めて自宅での聴き方を、
できるだけそのままステレオサウンド試聴室に持ってきての試聴であったわけだ。

だからこそ読み手も、それだけの真剣さで試聴記を読んでこそだ、と思う。
もちろんどう読もうと個人の自由ではあるけれども……だ。

Date: 10月 18th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その75)

ステレオサウンド 54号の特集は「いまいちばんいいスピーカーを選ぶ・最新の45機種テスト」。
ステレオサウンドは、44号と45号の二号にわたるスピーカーの総テストを行い、
46号ではモニタースピーカーに絞っての総テストを行っている。

三号続けての総テストに較べると45機種という数は多いとはいえないけれど、
その間に登場したスピーカーの大半が登場している。

44号、45号では、岡俊雄、黒田恭一、瀬川冬樹の三氏、
46号では岡俊雄、菅野沖彦、瀬川冬樹の三氏。
54号では黒田恭一、菅野沖彦、瀬川冬樹の三氏である。
52号、53号のアンプ総テストでも、三人の試聴だった。

54号の試聴で注目したのは、黒田先生だった。
44号、45号での総テストでは、岡先生と一緒に試聴されている。
それが今回は単独での試聴である。

私が読みはじめたのは41号からで、
その後バックナンバーを読んでみても、黒田先生が単独で試聴されているのは54号が初めてのはずだ。

試聴とは、鳴っていた音を聴くことである。
音が鳴るためには、鳴らし手が必要となる。
つまり誰が鳴らした音、もしくは自分で鳴らした音を試聴室で聴いてのテストということになる。

ステレオサウンド別冊HIGH-TECHNIC SERIES 3ではトゥイーター試聴に、
黒田先生は井上先生、瀬川先生とともに参加されている。
ここでの試聴での音の鳴らし手は瀬川先生である。

黒田先生は瀬川先生が鳴らされた音を聴いての、トゥイーターの評価であったし、
44号、45号では岡先生が鳴らされたスピーカーの音の評価であった。

それが54号では違っている。
もちろんスピーカーの交換・設置などは編集部が行う。
黒田先生が、瀬川先生のように細かいセッティングまでやられているわけではない。
その意味では、鳴らし手はステレオサウンド編集部といえる部分もあるにはあるが、
それでも試聴機材として、
アナログプレーヤーは導入を決められているパイオニアのExclusive P3、
パワーアンプは自宅で使われていたスレッショルドの4000 Custom、
コントロールアンプは試聴室リファレンスのマークレビンソンLNP2である。

試聴機材の選定からいっても、メインの鳴らし手は黒田先生自身といえる。

Date: 10月 18th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その74)

ステレオサウンド 53号には「オーディオ巡礼」が載っていなかった。
もっとも楽しみにしていたものがなかった。

原田勲氏の編集後記に、
《連載中の「オーディオ巡礼」は五味先生ご病気のため休載です。》とあった。
まだこの時は、すぐに連載が再開されるものだと信じていた。

ステレオサウンド 54号の表紙は、JBLの4343BWXだった。
ミッドバスとウーファーが、それまでのアルニコ採用からフェライトに変った。
4343Bの上には2231Hが置かれていた。

この表紙が示すように、54号の特集はスピーカーシステムである。
個人的に、いいタイミングでのスピーカーの総テストだと感じていた。

53号にはアルテックの6041の他に、ロジャースのLS5/8が、
新製品紹介のページに登場している。
一年前の49号で、瀬川先生が紹介されていたチャートウェルPM450Eが、
ロジャースにかわり、外観も少し変更になってようやく市販されるようになった。

タンノイからは新しい同軸ユニットを搭載したSuper Red Monitorが出ていたし、
KEFのModel 105もII型へと改良されていた。
他にもいくつか興味あるスピーカーシステムがあった。
それらのほとんどが54号の特集に登場している。

菅野先生、黒田先生、瀬川先生が試聴をされている。

知りたい(読みたい)と思っていたものが過不足なくあった、と感じた。
でも54号にも「オーディオ巡礼」はなかった。

五味先生の病気が長引いているのか、恢復(連載再開)は次号なのか、と思っていた。
55号には「オーディオ巡礼」が載るものだ、と思っていた。

Date: 10月 17th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その73)

私が読者として読んできたステレオサウンドについて、
41号から順をおって書いている。

ステレオサウンドは素晴らしいオーディオ雑誌だ、と持ち上げる意図はない。
読んできて感じたことを思い出しながら書いている。

すでに書いているように51号のようなつくりには疑問を感じた。
そういう疑問は、読み続けていくとともに少しずつあらわれてきた。

53号の「プロフェッショナルたちがあなたの装置のトラブルや、不満をチェックすると、こうなります」、
この記事も、まさしくそうだ。

広告と雑誌との関係についてほとんど何も知らない10代の私が読んでも、
この記事が載っているのはおかしく感じたものだった。

つまり、いまに続く悪しき芽は、すでにこのころからあったわけであり、
決して大きくはないが、はっきりとあらわれている。

50号の巻頭の座談会で、瀬川先生が語られていたことを、
53号の、この記事を担当した編集者はどう受けとめていたのか、と思う。
受けとめてすらいなかったのだ。
私はそう思う。

瀬川先生は、この記事をどう読まれたのだろうか。

Date: 10月 17th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その72)

ステレオサウンド 53号には、不思議な記事があった。
「プロフェッショナルたちがあなたの装置のトラブルや、不満をチェックすると、こうなります」
というタイトルの記事である。
宇田川弘司氏という方が書かれている。

41号からステレオサウンドを読んできたが、初めて見た名前だった。
それにしても不思議な印象を拭えない記事だった。

記事のタイトルからいえるのは、宇田川弘司氏はオーディオのプロフェッショナルということになる。
しかもタイトルには「プロフェッショナルたち」とある。
なのに宇田川弘司氏しか登場していない。

ということはこれから、この記事は続いていくのか。
宇田川弘司氏は今回で、次回以降は別の人たちが登場するのか。
でも54号には、この記事はなかった。
53号だけの単発記事だった。

なのに、なぜ「プロフェッショナルたち」なのだろうか。
53号の時点で私は16歳だった。プロフェッショナルではなかったけれど、
この記事に書かれていることが、オーディオのプロフェッショナルの仕事とはどうしても思えなかった。

いま読み返しても、そこに関しては同じである。

なぜ、こんな記事が載ったのか。
その理由に気づくのは数年後だった。

53号の486ページに、ある広告が載っている。
オーディオのチューニングを仕事とする会社の広告である。
「貴方はJBLを使いこなしてますか。」とキャッチコピーがあり、
4343の写真がある広告だ。

この会社の名称がウダガワ・ラボである。
ウダガワは宇田川であろう。

結局、あの記事は広告絡みというか、広告であったのか、と気づいた。
1979年のころから、そうであったのか……、とも気づいた。

Date: 10月 17th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その71)

ステレオサウンド 53号で、ひとつ気になったことがあった。
瀬川先生の「ひろがり溶け合う響きを求めて」の中に、それはある。
     *
 リスニングルームの空調でもうひとつ重要なのは換気の問題だ。昔から煙草は嫌いだったが、どういうものかこの煙草嫌いは、やや病的ではないかと自分でも思うほど、近年ますます極端になってきた。道を歩いていて、数メートル先を歩いてゆく人の吸う煙草の煙のように、ふつうならちょっと気づきにくい匂いも、なぜか鋭敏に嗅ぎとってしまう。外をあるいていてさえそうなのだから、まして室内ではよほど換気がよくないといけない。人の集まる場所から帰ってくると、衣服にも髪の中にも煙草の匂いがしみついているのがわかって、それが嫌でたまらない。
     *
私は喘息持ちだから、煙草はこれまで一度(一本)も吸ったことがない。
瀬川先生の煙草嫌いはわかる。

瀬川先生も《やや病的ではないか》と書かれているが、
《数メートル先を歩いてゆく人の吸う煙草の煙のように、ふつうならちょっと気づきにくい匂いも、なぜか鋭敏に嗅ぎとってしまう》ことがある。

私の場合でいえば、体調が悪い時ほど鋭敏に嗅ぎとれる。
なので瀬川先生も、体調があまりすぐれないのではないだろうか……、
そう思いながら「ひろがり溶け合う響きを求めて」を読んでいた。

後でわかる──、53号の原稿を書かれている時点で体調を崩されていた。

Date: 10月 9th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その70)

同じ《STATE OF THE ART》賞でも、一回目の49号と53号とでは選ばれる機種数が大きく違う。
53号では17機種。

瀬川先生はアルテックのModel 6041の他は、
マークレビンソンのML6のことを書かれている。
個人的には、あと一機種担当されていれば……、と思っていた。

もう一本の特集、アンプテストで瀬川先生は53号ではまったく書かれていないからだ。
52号では特集の巻頭に「最新セパレートアンプの魅力をたずねて」を書かれていた。
でも、これは仕方ないことだとわかっていても、もの足りなさを感じる。

けれど53号を読み進めていくと、瀬川先生はかなりの量を書かれていることがわかる。
53号には「ひろがり溶け合う響きを求めて」の三回目が載っている。
そして「JBL#4343研究」の三回目も載っている。

この「JBL#4343研究」は、4343のバイアンプ駆動である。
それもマークレビンソンのパワーアンプML2を六台用意しての、
4343を極限まで鳴らしてみようという試みである。

この他に「サンスイ・オーディオセンターの〝チャレンジオーディオ〟五周年」、
「ついにJBLがフェライトマグネットになる 新SFGユニットを聴いてみたら」、
この二本も、である。

これらをあわせると、かなりの量である。
読み応えもあった。

瀬川先生に関してだけではない、
52号から連載が始まったザ・スーパーマニアは、カンノ製作所の菅野省三氏が登場されている。

カンノアンプの名は、どこかで見て知っていたけれど、
詳細について知りたいと思っても、それ以上は知りようがなかった。
そのカンノアンプについて、単なる技術的な詳細だけでなく、
そのバックボーンについても知ることができた。

Date: 10月 9th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その69)

ステレオサウンド 53号の表紙はSUMOのThe Goldである。
1979年12月に53号は出ている。

この時点で、私が欲しかった(憧れていた)パワーアンプは、
マークレビンソンのML2が筆頭で、製造中止になっていたけれどSAEのMark 2500が次にいた。

このころの私は、男性的といわれる音を特徴とするボンジョルノ設計のアンプには、
優秀なアンプであり、ユニークな存在であっても、どこか無関係な世界のこととして捉えていた。

だから53号の表紙から六年後、このアンプを手にしていようとはまったく想像していなかった。

53号の特集は49号に続く、第2回《STATE OF THE ART》賞と、
52号から続きで、アンプテストの二本立て。

《STATE OF THE ART》賞で私の目を引いたのは、アルテックのmodel 6041だった。
理由は瀬川先生が書かれていたからだった。

いくつかの注文をつけられながらも、Model 6041を高く評価されていた。
     *
エンクロージュアのデザインにJBLの♯4343WXを意識したのではないかと思えるふしもあるが、その音質は♯4343とはずいぶん傾向が違う。というより、いくら音域を広げてもマルチ化しても、やはり、アルテックの昔からの特徴である音の暖かさ、味の濃さ、音の芯の強さ、などは少しも失われていない。
 ただ、604-8Hの低音と高音を補強した、という先入観を持って聴くと、620Bとかなり傾向の違う音にびっくりさせられるかもしれない。620Bよりもかなりクールな、とり澄ました肌ざわりをもっている。ところが♯4343と聴きくらべると、♯6041は、JBLよりもずっと味が濃く、暖かく、華麗な色合いを持っていて、ああ、やっぱりこれはアルテックの音なのだ、と納得させられる。
     *
これだけで、すぐにでも聴いてみたいと思った。
瀬川先生は、Model 6041のスーパートゥイーターを、
JBLの2405よりも聴き劣りする、と書かれている。

ならばこのスーパートゥイーターが改良されて、
モデルナンバーも6041IIとかではなく、6043にでもなれば、
相当に完成度の優れた、そして4343の独走態勢にストップをかける存在に成り得るようにも感じた。

4341が4343になり独走態勢に入ったように、
Model 6041もModel 6043になれば……、そんなことを思っていた。

Date: 10月 3rd, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンド 200号に期待したいこと(その5)

ステレオサウンド 50号と200号(創刊50周年記念号)。
号と年の違いはあるけれど、どちらも50という数字がつく。

ステレオサウンド創刊10周年は40号。
40号と50号を比較すると、50号がはっきりと記念号としての特集を組んでいる。

50号は春号だった。
次の51号の特集はベストバイだった。

200号は秋号。
次の201号の特集は、もう決っている。
ステレオサウンド・グランプリとベストバイである。

なんと似ているんだろう、と思ってしまう。
しかも51号のベストバイ特集は、以前書いているようにつまらなかった。
何も201号の特集が、51号のようにつまらない、といいたいわけではない。

もうマンネリの企画が201号で、変ることなくくり返されるであろうことに、
もううんざりしてきている。

201号にふさわしい企画は、望めないのははっきりしている。
けれど、ひとつ手はある。

ステレオサウンド・グランプリとベストバイをまとめて一冊のムックとして出すことだ。
そうすれば201号の特集は、次なる50年に向けての第一歩としての企画を組める。

ステレオサウンド・グランプリとベストバイのムック化は、
ずっと以前からそうすべきだと思っていた。
私と同じように思っている人も少なくないはずだ。

私が編集部にいたころは、
ベストバイの号だけは買わないという読者がいた。
ならばいま、ステレオサウンド・グランプリとベストバイの冬号は買わない、
という人がいても不思議ではないし、
反対にベストバイの号だけ買うという人もいたから、
ムックとして出版すれば、どちらの望みにも応えられる。

Date: 9月 30th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンド 200号に期待したいこと(その4)

ゲーテが語っている。
《古人が既に持っていた不充分な真理を探し出して、
それをより以上に進めることは、学問において、極めて功多いものである》と。
(ゲーテ格言集より)

私がステレオサウンド 200号に最も期待していたのは、これである。
200号までの50年をしっかりと検証することで、
不充分な真理を探し出すことが、
200号という大きな区切りに、もっともふさわしい特集(テーマ)である、と思う。

そして次の50年への第一歩となる201号から、
《それをより以上に進める》ことが始まる。

望めるのだろうか。

Date: 9月 14th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンド 200号に期待したいこと(その3)

すでにステレオサウンド 200号は書店に並んでいるのだから、
ここのタイトルも変えなければならないのだが、
それでも、あえて変えずに書こう。

まだ200号は見ていない。
それでも目次だけは、ステレオサウンドのウェブサイトで見ることができる。
ざっと眺めて思ったり感じたりすることは、いくつもある。

そのひとつを書けば、先ほど別項で書いた「糸川英夫のヘッドフォン未来雑学」。
この種の、いわば地味な記事、けれど年月が経って読んでも興味深い内容、
むしろ年月が経つことで、よりおもしろく読める内容の記事を、
いつのころからか現ステレオサウンド編集部は軽んじている、と感じることだ。

200号には附録がついている。
200号らしい、創刊50周年らしい附録と思う人の方が世の中多いであろう。

でも、今回の附録は200号らしい、というか、200号にふさわしい附録だったのだろうか。
これまでの50年が終り、次の50年への一歩となる201号のほうが、よりふさわしかったのではないだろうか。
そんなことを思う。

200号らしい、つまり50年という区切りをつける号の附録としてふさわしいのは、
地味で、手間もかかるけれど、50号の巻末附録である。

50号の巻末附録は、地味である。
けれど役に立つ。丹念に見ていくことで気づくことがいくつもある。

文字だけ、といっていい巻末附録。
丹念に見ていくのは、けっこうしんどいと感じても、得られることが多々ある。
50号分(正確には49号分と別冊分」だけでもそうだった。
200号(50年分)となれば、50号の四倍以上のボリュウムになる。

こんな面倒で、しかも誌面が地味になってしまうことを、
現ステレオサウンド編集部がやろうはずがないことはわかっていた。
それでも……、というおもいがあって、(その1)で書いた。

それにしても地味でも味わい深い記事が、まったくなくなってしまった。
違う表現で書けば、
これからのオーディオについて考えていくうえできっかけ、手がかりを与えてくれる記事が、
過去の記事ばかりという現実である。

Date: 9月 12th, 2016
Cate: ステレオサウンド

夏の終りに(ステレオサウンド)

野球にほとんど関心のない私でも、
広島カープが25年ぶりに優勝したことは知っているし、
いくつかのニュースを読んでいる。

その中に、広島カープは1番から9番まで、チーム生え抜きの選手、というものがあった。
他球団の有名選手を金銭トレードで獲得して、チーム強化を図るのを悪いことだとも思っていないが、
それでも広島カーブのような球団があるのか、と少し驚くとともに、
ステレオサウンドは広島カープではないな、と思っていた。

ステレオサウンドは、はっきりと広島カープとは対極の方針である。
いわば読売ジャイアンツ的である。

このことは私がいたころから編集部で何度か話していた。
生え抜きの書き手がいるだろうか。
一から書き手を育てるのかどうか。
そういうことを話していた時期がある。

ステレオサウンドに書いている人たちは、ほとんどがどこかで書いていて、
それからステレオサウンドに書くようになった人たちだ。

野球選手とオーディオ評論家は同じには語れないのはわかっている。
野球選手は同時に複数の球団に所属できないが、
書き手はいくつもの出版社の雑誌に書いていける。

そんな違いがあるのはわかったうえで書いている。
ステレオサウンド生え抜きの書き手は……、と。

Date: 8月 25th, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンド 200号に期待したいこと(その2)

〆切本」が8月下旬に発売になる。
90人の書き手の〆切にまつわる話を収録したもの。おもしろそうな本だと思う。

9月になったら発売されるステレオサウンド 200号。
200号に、〆切話が載っていたら……、とちょっと期待してしまう。

瀬川先生、岩崎先生は遅かった、と聞いている。
それでも大関クラスで、横綱は五味先生だったそうだ。

私がいたころでも、〆切に関する話はいくつかある。
原田勲会長からきいた瀬川先生と五味先生の話は、実に興味深いものだった。

もしかするとステレオサウンド 200号に乗っているかもしれないから、
どういう違いがあったのかについては書かない。

Date: 8月 22nd, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その68)

ステレオサウンド 52号については、あとひとつだけどうしても書きたいことがある。
166ページに載っているグラフだ。

このグラフはJBLの4343のクロスオーバー特性である。
ウーファー、ミッドバス、ミッドハイ、トゥイーター、
四つのユニットのそれぞれの周波数特性(ネットワーク経由の特性)が測定されている。

4ウェイのスピーカーシステムでは、
三つのクロスオーバーポイントがあると思いがちだが、
実際には四つであったり五つであったりする。

三つのクロスオーバーは、
ウーファーとミッドバス、
ミッドバスとミッドハイ、
ミッドハイとトゥイーターではあるが、
それぞれのユニットの受持帯域の広さと、それからネットワークのスロープ特性によっては、
ウーファーとミッドハイ、ミッドバスとトゥイーターがクロスするポイントが生じることもある。

52号のクロスオーバー特性をみると、4343の場合、
ウーファーとミッドハイ(しつこく書くがミッドバスではない)は、800Hz付近でクロスしている。
通常のクロスオーバーポイントは-3dBであるが、
4343のウーファーとミッドハイのクロスオーバーポイントは、レベル的には-17dBくらいである。
とはいえ確実にウーファーとミッドハイはクロスしている。

ここで気づくのは、やはり800Hzなのか、ということ。
ミッドバスのない4333のウーファーとスコーカーのクロスオーバー周波数は、
カタログでは800Hzと発表されている。

いうまでもなく4343のウーファーとミッドハイ、
4333のウーファーとスコーカーは同じユニット(2231Aと2420、ホーンは少し違う)。

ミッドバスとトゥイーターは、4kHzより少し低いあたりでぎりぎりクロスしているかしていないか、
そんな感じである。
もちろんミッドバスのレベルを上げれば、ぎりぎりクロスすることになるだろう。

4343のクロスオーバー特性。
少なくとも他のオーディオ雑誌では見たことがなかった。

Date: 8月 21st, 2016
Cate: ステレオサウンド

ステレオサウンドについて(その67)

ステレオサウンド 52号には、残念ながら「ひろがり溶け合う響きを求めて」が休載だった。
でも、瀬川先生の原稿の量を見れば、それもしかたないことだと思った。

編集後記には、原稿が入らずに、とある。
瀬川先生の原稿が入っていたら、
「ひろがり溶け合う響きを求めて」は、52号のどこにあったのだろうか。

もしかすると「EMT927Dstについて、わかったことがもう少しあります」が、
代替記事だったのかもしれない。

52号では、ちょっと驚いたことがあった。
音楽欄の安原顕氏の「わがジャズ・レコード評」の冒頭にあった。
     *
 周知の通り、マーク・レヴィンソン(1946年12月11日、カリフォルニア州オークランド生れ)といえば、われわれオーディオ・ファンにとって垂涎の的であるプリアンプ等の製作者だが、彼は一方ではバークリー音楽院出身のジャズ・ベース奏者でもあり、その演奏は例えばポール・ブレイの《ランブリン》(BYG 66年7月ローマで録音)などで聴くことが出来る。
     *
マーク・レヴィンソンはコネチカット州に住んでいたし、
マークレビンソンという会社もそこにあったわけだから、てっきり東海岸出身だと、
52号を読むまで、そう思っていた。

生れは西海岸だったのか。
いつごろコネチカット州に移ったのだろうか。