ステレオサウンドについて(その72)
ステレオサウンド 53号には、不思議な記事があった。
「プロフェッショナルたちがあなたの装置のトラブルや、不満をチェックすると、こうなります」
というタイトルの記事である。
宇田川弘司氏という方が書かれている。
41号からステレオサウンドを読んできたが、初めて見た名前だった。
それにしても不思議な印象を拭えない記事だった。
記事のタイトルからいえるのは、宇田川弘司氏はオーディオのプロフェッショナルということになる。
しかもタイトルには「プロフェッショナルたち」とある。
なのに宇田川弘司氏しか登場していない。
ということはこれから、この記事は続いていくのか。
宇田川弘司氏は今回で、次回以降は別の人たちが登場するのか。
でも54号には、この記事はなかった。
53号だけの単発記事だった。
なのに、なぜ「プロフェッショナルたち」なのだろうか。
53号の時点で私は16歳だった。プロフェッショナルではなかったけれど、
この記事に書かれていることが、オーディオのプロフェッショナルの仕事とはどうしても思えなかった。
いま読み返しても、そこに関しては同じである。
なぜ、こんな記事が載ったのか。
その理由に気づくのは数年後だった。
53号の486ページに、ある広告が載っている。
オーディオのチューニングを仕事とする会社の広告である。
「貴方はJBLを使いこなしてますか。」とキャッチコピーがあり、
4343の写真がある広告だ。
この会社の名称がウダガワ・ラボである。
ウダガワは宇田川であろう。
結局、あの記事は広告絡みというか、広告であったのか、と気づいた。
1979年のころから、そうであったのか……、とも気づいた。