そろそろステレオサウンド秋号の発売時期。
おそらくJBLのSA750の試聴記事が載っているはずだ。
カラーページで取り上げられるのではないだろうか。
モノクロ1ページということはないはずだ。
カラー見開き2ページでの紹介。
書いているのは、おそらく小野寺弘滋氏と思う。
誰だろう? と考えてすぐに浮びもするし、
消去法でいっても小野寺弘滋氏が残る。
カラーかモノクロなのかは断言できないけれど、
小野寺弘滋氏が書いているのは、断言できる。
他にいないからだ。
SA600とのデザインの比較について書いてあるのだろうか、
アーカムのSA30のことはどうなのだろうか。
SA750の内部写真は載っているのか。
載っているならば、アーカムのSA30がベースモデルかどうかは一目瞭然である。
Googleで画像検索すれば、SA30の内部写真はすぐに表示される。
SA750の内部写真を載せているのか載せていないのか。
その説明をどう書いているのか。
このあたりも興味がある。
といっても、いちばん興味があるのは、その音である。
瀬川先生は、SA600のことを、こう書かれていた。
*
そこに思い当ったとき、記憶は一度に遡って、私の耳には突然、JBL・SA600の初めて鳴ったあの音が聴こえてくる。それまでにも決して短いとはいえなかったオーディオ遍歴の中でも、真の意味で自分の探し求めていた音の方向に、はっきりした針路を発見させてくれた、あの記念すべきアンプの音が──。
*
瀬川先生は、ステレオサウンド 52号の特集の巻頭で、
《SA600を借りてきて最初の三日間というものは、誇張でなしに寝食を惜しみ、仕事を放り出して、朝から晩までその音に聴き耽った》
とも書かれている。
1981年、ステレオサウンド別冊の巻頭では、
《およそあれほど無我の境地でレコードを続けざまに聴かせてくれたオーディオ機器は、ほかに思い浮かばない》
と書かれている。
SA600とSA750は違うことは承知している。
時代も違う。
それでも、どこか期待してしまう。
期待するだけ、無駄と半分わかっていても、そうしてしまう。
そういう音は、おそらくSA750からは鳴ってこない(はずだ)。
聴いてもいないのに、そう書いてしまっている。
私がオーディオ評論家だったとして、
SA750の新製品紹介の依頼があったとしたら、即答でことわる。
SA600への思い入れを無視して、なにかを書けるわけではないからだ。