Archive for category 新製品

Date: 11月 15th, 2014
Cate: 新製品

新製品(その11)

そうなると気になってくることがあった。
ステレオサウンド 54号の瀬川先生の4343Bの試聴記の最後にある。
     *
音量を絞り込んだときの音像のクリアネスでは、旧型がわずかによいのではないか。
     *
これが気になってきた。
54号を読んだときにすでに、すこし気になっていたけれど、
それはBタイプの「ふっくら」と引き替えに、ということで納得できていた。

けれどPM510と4343という、一体いつになったら実現できるのかわからないことを夢想しはじめると、
フェライトの4343Bよりもアルニコの4343こそが、私にとって、ということ以上に、
PM510といっしょに使うスピーカーとして、
音量を絞り込んだときの音像のクリアネスのよさは、よりよいのではないか、と。

アマにこの4343はなくなってしまう。買えないわけだ。
だからウーファーの2231Aとミッドバスの2121だけでも、なんとか買っておこうか、と考えたこともある。

4343と4343Bの違いは、ウーファーとミッドバスだけの違いであり、
エンクロージュアもネットワークも同じである。
正確にはレベルコントロールの表示が4343BではdB表示に変更されている。

とにかく数年後に4343Bをなんとか手に入れるとして、
そのときにウーファーとミッドバスをアルニコのユニットに換装する。
そうすれば新品のアルニコの4343を手に入れたのと同じになる。

これも高校生の私には実現できなかったプランである。
こんなことを夢想しながら、あのころはステレオサウンドを読んでいた。

Date: 11月 15th, 2014
Cate: 新製品

新製品(その10)

4343と4343B。
ステレオサウンド 54号の記事を読みながら、目標は4343Bへと変っていった。
いますぐ買えるのであればどちらにするのかはわからないけれど、
早くても数年後であれば、4343Bということになる。

けれど半年後のステレオサウンド 56号。
ここにロジャースのPM510が登場している。
瀬川先生が書かれている、その記事を読んでいて、
やっぱり4343Bではなく4343かも……、と思いはじめていた。

PM510という新製品は、このスピーカーに惚れたということだけではなかった。

瀬川先生はKEFのLS5/1A、それにJBLの4341の両方を鳴らされていた。
4341は4343になり、最後は4345になっている。

私も……、と当時思っていた。
LS5/1Aは入手できない。
そんなところにPM510が出て来た。

PM510と4343。
実はこれが目標であった。

瀬川先生のPM510の試聴記を読めば、ここにも「ふっくら」とした魅力があることが伝わってくる。

同じ「ふっくら」でもPM510と4343Bのそれとでは同じではないことはわかっている。
わかっていても、PM510も目標となると、
そしてPM510と4343の両方を鳴らすのであれば、4343Bよりも4343のほうが、
両者の個性が際立つのではないか、そんなことを想像していた。

どちらもすぐには買えないのに、だ。

Date: 11月 11th, 2014
Cate: 新製品

新製品(その9)

JBLのユニットが、まずコーン型ユニットからアルニコからフェライトに変更されはじめたのは1980年。
この時4343BWXは一本610000円。
1976年に登場した時の730000円よりは円高のおかげで安くなっていたとはいえ、
スピーカーは二本買わなければならないから、100万円をこえる金額は、
まだ高校生だった私には、どうこうできる金額ではなかった。

4343を買おうとは決めていた。
決めていたけれど、それはあくまでも数年後。
いまアルニコからフェライトの4343Bになるのはしかたないけれど、
もし4343Bよりもアルニコの4343の方がいい、ということになったら、
数年後にはアルニコの4343が新品では手に入らなくなる。

数年後に買える4343はフェライトの4343Bでしかないわけだから、
4343と4343Bの音の違いは、ほかのどんな新製品よりも気になっていた。

ステレオサウンド 54号での特集では、黒田先生、すかの先生、瀬川先生の試聴記が、
新製品紹介のページでは、井上先生、山中先生の対談が、
つまり五人の評価が読めた。

新製品紹介のページでは、先ず山中先生が、中低域のレベルが聴感上で豊かになっている、と指摘されている。
このことは瀬川先生も指摘されている。
     *
ミッドバスの領域では明らかに改善の効果が聴きとれ、歪が減ってすっきりと滑らかで透明感が増して、音像の輪郭がいっそうクリアーになったと思う。
     *
そのこともあって、4343Bの方が、旧型よりも「音のつながりがなめらかだし、ふっくらしている」とある。
同じことを黒田先生も試聴記に書かれている。
     *
旧タイプの音に多少のつめたさを感じていた人は、このスピーカーの音の、旧タイプのそれに比べればあきらかにふっくらとした音にひかれるにちがいない。旧タイプとの一対一比較で試聴したが、その結果、旧タイプの音にいささかの暗さがあったということを認めざるをえなくなる。
     *
ここにも「ふっくら」という表現が出ている。
これらを何度も読みなおして、少しほっとしたことを憶えている。

Date: 11月 9th, 2014
Cate: 新製品

新製品(その8)

改良型の新製品として、私にとって最初に気になったのは、AU-D907Fだった。
何度か書いているようにAU-D907 Limitedを買っていた。

AU-D907FはAU-D907の改良型にあたる。
AU-D907 Limitedの直接の改良型とはいえないけれど、
AU-D907 LimitedはAU-D907がベースになっているのだから、どうしても気になる。

どちらが上なのか。
そんなことを思いながらオーディオ雑誌を、高校生のころは読んでいた。
ただ製品のもつ重みということではAU-D907 Limitedてのだが、
最新技術のスーパーフィードフォワードがなんとかAU-D907 Limitedに搭載できないものか、と、
サンスイに手紙(いまならメールだろうが)を書いたこともある。

返事が来るとは思っていなかった。
でもある日、丁寧な文面の手紙が届いた。
この手紙ですっぱりとAU-D907Fのことは気にならなくなった。

改良型の新製品が気になったのは、他にもある。
いちばん気になったのは4343Bであり、4345、4344だった。

4343を使っていたわけではない。
それでも非常に気になっていた。

ミッドバス(2121)とウーファー(2231A)がフェライトマグネットの2121Hと2231Hに変更された4343B。
ステレオサウンドには54号の特集と新製品紹介ページの両方に登場している。

なぜ所有していないオーディオ機器の改良型が気になったのか。
それは買えなかったからであり、目標でもあったからだ。

Date: 6月 20th, 2014
Cate: 新製品

新製品(フィデリティ・リサーチの場合・その4)

ステレオサウンド 49号に「ロングランコンポーネントの秘密をさぐる」という記事があり、
グレースのF8シリーズとフィデリティ・リサーチのFR1シリーズがとりあげられている。
記事は井上先生と菅野先生の対談による。

グレース(品川無線)の創設者は朝倉昭氏、フィデリティ・リサーチの創設者は池田勇氏、
記事はF8シリーズ、FR1シリーズについて語られているともいえるし、
朝倉氏、池田氏について語られているともいえる内容だ。

この記事を読めば、池田勇氏がどういう人なのか、おぼろげながら掴める。

ボザークについての、井上先生の発言がある。
     *
赤坂の事務所に物すごい箱に入ったボザークがあって、あの重たいボザークが絶妙に鳴っていた。いま考えてみると、スピーカーとカートリッジが相補い合って絶妙な音を出していたんだけれど、それはすばらしい音だった。
     *
このとき井上先生が聴かれたのはFR1EとヘッドアンプのFTR2ということなので、
おそらく1965年ごろのことである。
フィデリティ・リサーチは、最初赤坂にあり、その後東中野に移っている。

菅野先生はFR1の音について、こう語られている。
     *
ぼくがFR1で最初に聴いたレコードはフルートだったんです。フルートの高調波が吹く息と渾然一体となって打ち震えるがごとき音を聴いた時、空白広告で期待したものにさらに輪をかけて強烈な印象を受けましたね。
     *
空白広告とはフィデリティ・リサーチの創立時のオーディオ雑誌への広告のことである。
何を発売するのかはふせたままの広告だった、ときいている。

フィデリティ・リサーチの創業は1964年なので、私は空白広告は見たことはないが、
その後の私が見てきたフィデリティ・リサーチの広告も、空白の多いものであった。

Date: 6月 15th, 2014
Cate: 新製品

新製品(フィデリティ・リサーチの場合・その3)

ステレオサウンドで働くようになって、まもなくのことだった。
なにかのきっかけでフィデリティ・リサーチが話題になった。

どなたにきいたのかをもう忘れてしまったが、
FR1とFR7の音があれだけ違うのは、発電構造が違うだけではない、と話された。

フィデリティ・リサーチの創立者の池田勇氏のスピーカーが変ったからだ、と教えてくれた。

それまでのスピーカーがボザークだったのは、何かで読んで知っていた。
ボザークのスピーカーは、私がいたころはステレオサウンドの試聴室で鳴らされることは一度もなかった。
ほとんど聴く機会のなかったスピーカーだが、わずかに聴いた印象と、
ボザークに関する記事、それに井上先生のスピーカーだということから、
だいたいのイメージはできあがっていたし、それは大きく外れてはいなかったはずだ。

私のなかでのボザークの音、
これにFR1の音はうまく相補うような気がする。
もしこれから先ボザークのスピーカーを聴く機会が訪れるとしたら、
なんとかしてFR1を探してきて、それで鳴らしてみたい。

ボザークから何に替ったのは、なぜか失念してしまった。
FR1からFR7への音の変りようからすれば、ボザークとは傾向の違うスピーカーであることは確かだ。

もし池田勇氏のスピーカーがボザークのままだったら、
FR7の音も違ってきた可能性はあるのではないか。

Date: 6月 15th, 2014
Cate: 新製品

新製品(フィデリティ・リサーチの場合・その2)

FR7はなぜシェル一体型なのか。
それまでのフィデリティ・リサーチのカートリッジにシェル一体型はなかった。

FR7の構造図をみれば、すぐに理解できる。
シェル一体型でなければ実現できない構造である。

ステレオサウンド 47号の新製品紹介のページにFR7は登場した。
記事は井上先生が書かれている。
その他に井上先生と山中先生が、このカートリッジについて語られている。
このふたつを読めば、FR7がどういうカートリッジなのかは伝わってくる。

そして構造図が掲載されていた。
通常のMC型カートリッジはマグネットはひとつだけである。
FR7はふたつのマグネットを持つ。
そのためどうしてもカートリッジの横幅が通常の、マグネットがひとつのタイプよりも増すことになる。

井上先生は、FR7の発電方式をプッシュプルと紹介されていた。

FR7の音が、それまでのフィデリティ・リサーチのカートリッジとはずいぶん違ってきていることは、
47号の特集ベストバイでの評価を読んでもわかった。

それにしても、どうしてこうも変ったのだろうか、ともそのとき思っていた。

Date: 6月 14th, 2014
Cate: 新製品

新製品(フィデリティ・リサーチの場合・その1)

私のフィデリティ・リサーチについてのイメージは、
ステレオサウンド 43号の瀬川先生の文章で、でき上がった。
     *
この独特の音質をなんと形容したらいいのだろうか。たとえばシンフォニーのトゥッティでも、2g以上の針圧をかけるかぎり、粗野な音や荒々しい歪っぽい音を全くといっていいほど出さないで、あくまでもやさしく繊細に鳴らす。油絵よりも淡彩のさらりとした味わいだが、この音は一度耳にしたら好き嫌いを別として忘れられない。出力がきわめて低いので、良質なトランスかヘッドアンプを組み合わせることが必要条件。
     *
オルトフォンのSPU、EMTのTSD15、それにデンオンのDL103といったMC型カートリッジが、
発電コイルの巻き枠に磁性体を使用したタイプに対し、
フィデリティ・リサーチのFR1は空芯コイルのMC型だった。

鉄芯と空芯。
このふたつの言葉がイメージする音が、そのままフィデリティ・リサーチのFR1と重なっていた。
といってもFR1の音を、このとき聴いたことがあったわけではない。

フィデリティ・リサーチはおもしろい会社で、
FR1のあとに、FR1E、FR1MK2、FR1MK3と出しているけれど、
1978年ごろはすべて現行機種てあった。

型番末尾にMK2、MK3とついているわけだから、改良型であることに違いない。
ふつう改良型が出るときに以前のモデルは製造中止になるのに、フィデリティ・リサーチは違っていた。

オーディオに興味をもちはじめたばかりのころは、これが不思議でならなかった。
そのフィデリティ・リサーチが、1978年に新製品を出した。
FR1MK4ではなく、FR7という、シェル一体型の、
それまでのフィデリティ・リサーチの製品とは趣の異るカートリッジだった。

Date: 6月 13th, 2014
Cate: 新製品

新製品(その7)

改良型としての新製品でもっとも気になるのは、
いま自分が使っているモデルの改良型が新製品として登場してくることである。

最初はベタボレして買ったオーディオ機器でも、何年か使っていると、
いいところもそうでないところもはっきりとしてくる。
そのオーディオ機器を使っている何年かの間に、自分の部屋以外では音を聴かないということはまずない。
オーディオショウ、オーディオ販売店にでかけたり、
オーディオ仲間のリスニングルームを訪問をしたりして、いくつもの音を聴いていく。

そうやって聴いた音の中には、自分のシステムが不得手とするところをうまく鳴らしていることもある。
そういう音を一度でも耳にすれば、よけいに自分のシステムの不得手なところがはっきりとしてくる。

そんなときに、タイミングよく、いま使っているスピーカーもしくはアンプの改良型の新製品が出た。
これは気になる。
気に入っているところはそのまま残していて、
気になっているところがなくなってくれれば、それがいちばんありがたい。

改良型の新製品が、いまは懐の事情で買えないとしても、
改良型の新製品が、元のモデルとどこがどう違っているのか。
細部をよく観察していくことで、得られるものはきっとある。

Date: 3月 6th, 2014
Cate: 新製品

新製品(その6)

新製品といっても、大きく分ければふたつある。
ひとつは、いわゆる新製品である。
それまでなかった製品が、あるメーカーから発売になる。
もしくは新顔のメーカーのデビュー作も、この新製品である。

もうひとつは評判の高いオーディオ機器の改良モデルといえる新製品である。
こういう新製品は、型番の末尾にMK2とついたり、アルファベットがつけられたりして、
基本となった製品との区別がつくようになっている。

同じ新製品であっても、まったくの新製品に対して、いったいどういうモノだろうという期待がある。
既存のメーカーのそういった新製品であれば、ある程度の予測ができないわけではないが、
まったくの新ブランドの新製品となると、そういう期待はふくらむ。

改良型としての新製品に対しては、
以前の製品とどう変ったのかについての興味の方が強くなる。
それはこういった製品の記事を読む側にとっても、そのはずだ。

以前のモデルと技術的にどう違って(進歩して)いるのか、
デザインの変更はあるのか、
そしていちばん肝心なことは音がどう変ったのか、である。

改良型が出るモデルは、少なくとも一定の評価を得ているモデルである。
まったく不評だったモデルの改良型を出すようなことは、メーカーはまずやらない。

Date: 2月 19th, 2014
Cate: 新製品

新製品(その5)

突発性感激症──、
これこそが新製品紹介のページの担当者に必要なことではないのか。

そんなことを仕事が終った後の編集部の中での雑談で話しあっていたことがある。

試聴という取材を経てつくられていても、特集記事と新製品紹介の記事とでは、
性格的に違うところがあり、
特集記事の担当編集者に求めることと、
新製品紹介の担当編集者に求められることでは違う面がある。

新製品紹介というお披露目の場の担当編集者は、突発性感激症であったほうが、
読者にとってよりインパクトのある誌面になろう。

どんな新製品が目の前にあらわれようとも、冷静な目と耳によって紹介されてしまっては、
新製品が新製品としてではなく、ほかの記事で紹介されてしまうのとたいして変らなくなってしまう。

突発性感激症という熱がなくては、読み手からしたら、つまらない新製品紹介のページとしか思えなくなる。

Date: 2月 18th, 2014
Cate: 新製品

新製品(その4)

ステレオサウンドに限らずオーディオ雑誌には新製品紹介ページが必ずといっていいほどある。

国内・海外の新製品は、まず新製品紹介のページに登場する。
その後に特集記事に出てくることもある。

つまり新製品紹介のページはお披露目のページである。
だからこそ、新製品紹介のページでは、欠点よりも長所を全面的に打ち出す、ということになっている。
少なくとも私がいたころのステレオサウンドの編集方針はそうであったし、
これはいまも大きくは変っていないように感じている。

新製品紹介のページで読者への顔見せがすんだら、次は特集記事への登場である。
特集記事はアンプの総テストだったり、スピーカーの総テストだったりするわけだから、
そこでは新製品紹介の時とは違ってくる。

同じ試聴という言葉であらわされるけれど、
新製品紹介の時の試聴と総テストの試聴とでは、微妙に違ってくるところがある。

総テストでは、すべてのテスト機種を同条件で扱うため、欠点も容赦なく出てくることがある。
一方、新製品紹介の試聴では、少しでもいいお披露目にしたいという気持があるわけだから、
じっくりと聴き込む試聴となる。

そうなると、同じ試聴室で鳴っているにも関わらず、ずいぶんと違う鳴り方をする。
そういう違いが聴こえてくるものである。

Date: 2月 2nd, 2014
Cate: 新製品

新製品(その3)

JBLのHarknessに、トーレンスのTD224、
それからJBLの2441+2397、
他にもずいぶん以前のオーディオ機器が手元にあり、それで音楽を聴いている。

このブログでは、JBLの4343、マークレビンソンのLNP2について、何度も書いている。
これからも書いていくであろう。

だからといって、ヴィンテージ機器、ヴィンテージ・オーディオとか、
最近でそう呼ばれるようになった、そういう時代のオーディオ機器だけが好きなわけではない。

新しいオーディオ機器が好きだし、むしろ、古いオーディオ機器よりも好きなところがある。
それにHarknessにしろ、TD224にしろ、
これらのモノが登場したときには、新製品であった。

いまでは古くなってしまったオーディオ機器であっても、
新製品だった時が、かならずあった。

この項のタイトルは「新製品」にした。
新製品を紹介するためのタイトルではなく、
「新製品」とは、について書いていくためのタイトルである。

Date: 2月 1st, 2014
Cate: 新製品

新製品(その2)

ステレオサウンド 56号の「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」の扉をめくると、
そこにはトーレンスのリファレンスがあらわれる。

トーレンス
リファレンス
¥3,580,000

これらの文字が続いて目に入り、

超マニア用「トーレンス・リファレンス」はたいへんな製品だ。すごい可能性、すごい音質、そしてその偉容

という見出しがあり、そこには瀬川冬樹の文字もあった。

このリファレンスの記事は8ページあった。

このリファレンスの記事だけでも、それまでの新製品紹介のページと、
56号からの「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」が大きく違っていて、
「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」が「あたらしいページ」であることを実感できた。

リファレンスについての瀬川先生の文章もいい。

リファレンスという、
当時のアナログプレーヤーの多くとは決定的に異る偉容をもつプレーヤーにふさわしい。

55号までのスタイルでの新製品紹介であっても、
リファレンスのすごさは伝わってきたであろうが、
ここは瀬川先生以外誰がいたであろうか。

そして56号から新製品紹介のページを大きく変えたのは、
リファレンスが登場してきたからではないのか──、そんなことさえ思ってしまう。

Date: 1月 31st, 2014
Cate: 新製品

新製品(その1)

ステレオサウンドの新製品の紹介記事は時代によって変化してきている。
私が読みはじめたのは41号からで、
この時代の新製品の紹介は井上先生と山中先生のふたりが担当されていて、
スピーカーシステム、アンプ関係、プレーヤー関係と大きく三つにわけられていて、
まずその号での新製品の動向について語られ、
つづくページで個々の製品について書き原稿であったり、対談であったりしていた。

このやり方が大きく変ったのは、56号からである。
56号から新製品の紹介記事にカラーページが使われるようになった。

そしてカラーページには「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」、
モノクロページには「Pick Up 注目の新製品ピックアップ」とそれぞれタイトルがつけられている。

「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」の扉には、こう書いてあった。
      *
あたらしい、すぐれた製品との出会いは、私たちにとって、いつもドラマティックな体験です。心おどろせ、胸はずませて、あたらしい出会いを待ち受け、そして迎えるさまは、とうていマニアでない人びとには理解してもらえないでしょう。
そのマニアの中のマニアともいうべき、本誌筆者の方々に、毎号いちばんあたらしい、いちばん感動的な出会いについて書いていただこうというのが、このあたらしいページです。
やがて月日が経つとともに、それぞれの方々の出会いの歓びの鮮度は色あせていくかもしれません。あるいは、使いこんでいくうちに、日ましにその製品がもたらす歓びは色濃くなっていくかもしれません。
でも、それぞれ筆者自身にとっての、いまの真実は、ここに記されているとおりです。
     *
文末に(編集部)とある。
新製品の紹介ページの扉の文章だから、読んでいないという人がいても不思議ではない。
読んでいても、さらっと読んだくらいで、どんなことが書かれていたのかなんて、
まったく憶えていない人も少なくないだろう。

あまり日の目をみないところに書かれた文章ではあるけれど、
当時読んでいてもいい文章だと思ったし、いまあらためて読み返してみて、
こうやってキーボードで入力してみても、さりげないけれど、いい文章だと思っている。