新製品(その14)
あのころは新製品が出るたびに、かなりわくわくしていた。
まだ学生で自由になるお金はほとんどなかった。
それでも目標だけは大きかった。
社会人になれば、そう遠くないうちに買えると思っていたからだし、
実際に当時憧れていたオーディオ機器は、頑張れば買えない価格ではなかった。
ステレオサウンドの新製品紹介のページを読んでは、
目標が少し変ったり、また元に戻ったりということがあった。
そんなふうに読んできた申請非紹介のページだったが、
いつのころからか、こちらの読み方が変ってきた。
変ってきた理由のひとつには、ステレオサウンドで働いていたことも関係している。
でもそれだけではない。
すべての新製品をそういう視点で見ているわけではないが、
いわゆる話題の新製品、そのブランドのトップクラスの新製品、
それから超高額といえる新製品が出た時には、
これらはいったい何年使えるのだろうか、とふと思ってしまうようになっていた。
スピーカーシステムで、ペアで一千万円前後するモノがある。
そういったスピーカーが、仮にいい音を聴かせてくれたとしよう。
けれど、それはいったい何年使えるのか。
ここで使えるのか、という意味は、
新製品として登場した時点での最先端にあったであろう音は、
数年後には最先端ではなくなっていることが多い。
それは仕方のないことなのだが、毎日、そのスピーカーで音を聴いてきて、
10年、20年、30年……と使っていけるのだろうか、という意味でだ。
この新製品のモノとしての「耐久性」はいったいどの程度なのか。
このことを、高額なオーディオ機器に対しては冷静に判断するようになっていた。