新製品(その9)
JBLのユニットが、まずコーン型ユニットからアルニコからフェライトに変更されはじめたのは1980年。
この時4343BWXは一本610000円。
1976年に登場した時の730000円よりは円高のおかげで安くなっていたとはいえ、
スピーカーは二本買わなければならないから、100万円をこえる金額は、
まだ高校生だった私には、どうこうできる金額ではなかった。
4343を買おうとは決めていた。
決めていたけれど、それはあくまでも数年後。
いまアルニコからフェライトの4343Bになるのはしかたないけれど、
もし4343Bよりもアルニコの4343の方がいい、ということになったら、
数年後にはアルニコの4343が新品では手に入らなくなる。
数年後に買える4343はフェライトの4343Bでしかないわけだから、
4343と4343Bの音の違いは、ほかのどんな新製品よりも気になっていた。
ステレオサウンド 54号での特集では、黒田先生、すかの先生、瀬川先生の試聴記が、
新製品紹介のページでは、井上先生、山中先生の対談が、
つまり五人の評価が読めた。
新製品紹介のページでは、先ず山中先生が、中低域のレベルが聴感上で豊かになっている、と指摘されている。
このことは瀬川先生も指摘されている。
*
ミッドバスの領域では明らかに改善の効果が聴きとれ、歪が減ってすっきりと滑らかで透明感が増して、音像の輪郭がいっそうクリアーになったと思う。
*
そのこともあって、4343Bの方が、旧型よりも「音のつながりがなめらかだし、ふっくらしている」とある。
同じことを黒田先生も試聴記に書かれている。
*
旧タイプの音に多少のつめたさを感じていた人は、このスピーカーの音の、旧タイプのそれに比べればあきらかにふっくらとした音にひかれるにちがいない。旧タイプとの一対一比較で試聴したが、その結果、旧タイプの音にいささかの暗さがあったということを認めざるをえなくなる。
*
ここにも「ふっくら」という表現が出ている。
これらを何度も読みなおして、少しほっとしたことを憶えている。