新製品(その13)
ステレオサウンド 60号は創刊15周年記念号で、特集はアメリカン・サウンドだった。
瀬川先生が登場された最後のステレオサウンドになった。
4345について、瀬川先生が語られている。
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もちろん、中~高域にかけて、ネットワークやユニットの部分改良があり、全体によくなっているという発表はありますが、それだけではないと思うんです。やはり、あの低音の土台あっての柔らかさだ。自分のうちへ持ち込んでみてびっくりしたんですが、音がすばらしくソフトなんです。実に柔らかくてフワーッとしています。しかしそれは、腰抜けの柔らかさじゃなくて、その中にきちんと芯がある。かなり惚れ込んで聴いています。
もちろん、まだまだパーフェクトだとは思いません。むしろ、4345まで聴いてみて、改めて、JBLでは鳴らせない音というものが、だんだんぼくの頭の中ではっきりし始めました。
たとえばイギリスのBBCの流れをくむモニタースピーカーを、いい状態で鳴らしたときに、弦楽四重奏なんかをかけると、鳴った瞬間からウッドの胴体を持った弦の音が突然目の前に出現するけれど、4345では、いきなりそういう感じはなかなか出ないですね。どうしても中に金っ気がまじります。JBL嫌いの人は、昔からそこを非常にオーバーに指摘してきた。それは4345になってずいぶん抑えられたとはいうものの、どうしようもなくちゃんと持っていますね。あそこは越えがたい一線じゃないかという気がする。スピーカーがかなりパーフェクトに近づいてきて初めて、そこのところが見えてきたみたいな……。あるは少しはあばたがえくぼでなくなってきたのかなという気はします。でも、全体としてはやっぱり凄く惚れ込んでいますよ。
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ステレオサウンド 58号の記事はもうほとんど記憶していた。
やっぱり4345はいいスピーカーなんだ、PM510はもう目標としなくともいいのかもしれない、と思いながら、
途中まで読んでいた。
けれど、4345まで聴いてみて、改めて、JBLでは鳴らせない音がある、と発言されている。
そしてBBCモニターを引き合いに出されている。
こうも言われている。
「スピーカーがかなりパーフェクトに近づいてきて初めて、そこのところが見えてきたみたいな……。」と。
やはりPM510は必要なのか。
そうなると4345とPM510となるのか。
だが4345は4343ほどカッコよくない。
ステレオサウンド 58号で書かれていたことが浮んでくる。
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♯4343と並べてみると、ずいぶん大きく、しかもプロポーションのせいもあってか、ややズングリした印象だ。♯4343は、初対面のときからとてもスマートなスピーカーだと感じたが、その印象は今日まで一貫して変らない。その点♯4345は、寸法比(プロポーション)も、またそれよりもいっそう、グリルクロスを外して眺めたときのバッフル面に対するユニットの配置を含めて、♯4343の洗練された優雅さに及ばないと思う。この第一印象が、これから永いあいだに見馴れてゆくことで変ってゆくのかゆかないのか、興味深いところだ。
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瀬川先生は4345のプロポーションを見馴れてゆかれたのだろうか。
それについての発言は60号にはなかった。
見馴れてゆくにしろ、4343の「洗練された優雅さ」は4345にはないことは変ってゆかない。
ならば、4343(アルニコ)とPM510ということになるのか。
目標が揺らいでいく……。