Archive for category 型番

Date: 12月 8th, 2014
Cate: アナログディスク再生, 型番

電子制御という夢(テクニクスの型番)

テクニクスのアナログプレーヤーの型番はSLから始まる。
ターンテーブルはSPから始まる。

テクニクスのターンテーブルのフラッグシップモデルはSP10。
SP10を頂点として、SP15、SP20、SP25などがあった。
数字が大きくなるほど価格は安くなっていく。

これはアナログプレーヤーも基本的には同じである。
SLの後に続く数字が大きいほど低価格帯のモデルであり、数字が小さくなるほど価格は高くなっていく。

けれどSL10の登場で、このシリーズに関してだけは変更があった。
SL10は10万円、型番の数字と定価が一致している。
上級機のSL15は15万円で、SL7は7万円。これもか型番の数字と価格の一致。
だから型番の数字が大きいほど価格は高くなるという、それまでの型番のつけ方は逆になっている。

Date: 12月 2nd, 2014
Cate: JBL, 型番

JBLの型番

JBLのプロフェッショナル用スピーカーユニットの型番は四桁の数字。
2100シリーズがフルレンジユニット、2200シリーズがウーファー、
2300シリーズがホーン、2400シリーズがコンプレッションドライバーが基本となっている。

ミッドバス用のコーン型ユニットは2121、2122という型番だから、
ウーファーのようでもあるが、型番からはフルレンジということになる。
実際はウーファーに分類されるけれど。

数字の順序からすればフルレンジ、ウーファー、ホーン、コンプレッションドライバーとなっている。
ということはJBLの考え方としては、ホーンとコンプレッションドライバーの組合せにおいては、
まずホーンを選べ、ということなのではないか、と型番をみていると思えてくる。

フルレンジもウーファーもスピーカーユニットであり、音を発する。
コンプレッションドライバーもそうだ。
ホーンは違う。
なのに型番的にはウーファーとコンプレッションドライバーのあいだにいる。

ホーンとコンプレッションドライバーの組合せでコンプレッションドライバーを中心に考えるのであれば、
型番のつけ方としては2300シリーズがコンプレッションドライバーのほうがすっきりする。
けれど実際は2300シリーズはホーンの型番である。

誰がどういう意図で型番をつけていたのかはわからない。
けれど2300シリーズをホーンとしたのは、なんらかの意図があったのではないだろうか。

どの程度の空間にどういう指向特性で音を放射するのか。
まずこのことを決めた上でホーンを選び、次にコンプレッションドライバーを選べ、ということではないのか。

Date: 6月 18th, 2014
Cate: JBL, Studio Monitor, 型番

JBL Studio Monitor(型番について・続余談)

リニアテクノロジーは、LTspiceという回路シミュレーターを公開している。
この回路シミュレーターは無料で使える。
これまではMac用はなかったけれど、昨年秋に公開されたことを先月に知った。
さっそくダウンロードした。

このときにリニアテクノロジーのtwitterのアカウントもフォローした。
昨日のツイートに、LTC4320と書いてあった。

4320という型番の製品がリニアテクノロジーにあるのか、と思って、
他にどんな型番の製品があるのか検索してみたら、LT4320というのもあった。

こちらはMOS-FETを使って整流回路を構成するパーツで、
資料には理想ブリッジダイオードコントローラーとある。
これはそのままオーディオにも使える製品である。
それに4320という型番がついているのだ。

他愛のないことだけど、これだけのことで使ってみたい気にさせてくれる。

Date: 5月 21st, 2014
Cate: JBL, Studio Monitor, 型番

JBL Studio Monitor(型番について・余談)

D/Aコンバーターを自作しようと考えたことのある人、
そこまでいかなくとも市販のD/Aコンバーターの内部に興味のある人にとって、
シーラス・ロジック(CIRRUS LOGIC)の名前は聞いたことがあることだろう。

仮になかったとしても、CS8412といった型番は記憶のどこかにあるとおもう。

シーラス・ロジックはD/Aコンバーターのチップもつくっている。
このシリーズの型番は43ではじまる。
CS4341、CS4344、CS4345、CS4348、CS4350、CS4365と、
JBLのスタジオモニター4300シリーズの型番と重なるものがある。

こういう型番を見ると、単純に嬉しい。

シーラス・ロジックの場合、電子部品だからあまり馴染みはないだろうが、
ソニーの1970年代半ばの製品には、PS4350(アナログプレーヤー)、
TC4350SD(オープンリールデッキ)があった。

オーディオとはまったく関係ないけれど、4300シリーズの数字をよく見かけるものとして、
アメリカのドラマ「デスパレートな妻たち」がある。
登場人物が住む家には、それぞれ番地が大きく表示されていて、ほとんどが4300番台なのだ。
4355という家も登場する。

単なる数字でしかない。
シーラス・ロジックの製品が43から始まるのは単なる偶然だろうし、
デスパレートな妻たちの番地もたまたまなのだろう。
それでも、もしかすると……、と考えるのが馬鹿馬鹿しいのはわかっていても楽しかったりする。

Date: 4月 21st, 2014
Cate: アナログディスク再生, 型番

型番について(その30)

空気の力でターンテーブルプラッターを一定速度で回転させるには難しい面があるのは容易に想像できる。
それに空気の力でスムーズに回転させられるようになったとしても、
起動時の問題が残るはずだ。

軽量のターンテーブルプラッターであれば少ない力でも静止状態から動き出すけれど、
テクダスのAir Force 1や、これまで音が良いとされてきたプレーヤーのターンテーブルプラッターは、
たいていが重量級である。

重量級のターンテーブルプラッターを静止状態から動かすには、けっこう大きな力を必要とする。
おそらく空気の力でそれを実現するのはさらに困難なことだろうと想像がつく。

でもいいじゃないか、とも思う。
いまアナログディスク再生に、これだけのプレーヤーを手に入れようとする人ならば、
これまでどのプレーヤーでも鳴らすことができなかった音の領域を提示してくれるのであれば、
起動時に使い手が手動で勢いをつければ、問題は簡単に解決する。

この一手間を面倒だと感じる人は、そもそも今の時代にアナログディスク再生にこれほどの情熱をかけたりはしない。
もっと普及価格帯のプレーヤーであれば、
どんな人が使っても常に一定性能が発揮できることが重要になるけれど、
数百万円もするアナログプレーヤーは、そういうことを無視しようと思えばできる位置に、いまはある。

Air Force 1という型番は、それほどいい型番とは思えない。
それでもどういうプレーヤーであるのかを表しているから不足のない型番とはいえる。
型番を変えたほうがいい、とはいわない。

いいたいのは、製品の内容から型番がつけられる。
今度はその型番の意味をもう一度考え直すことで、
その型番がつけられた製品の目指す方向が見えてくるのではないか、ということ。

Date: 4月 20th, 2014
Cate: アナログディスク再生, 型番

型番について(その29)

マイクロRX5000+RY5500の二連ドライヴの記事を憶えている人、
実際にその音を聴いたことのある人、
さらに自分のモノとして二連ドライヴでレコードを鳴らされていた経験のある人、
そういった人の中で、経済力のある人ならば、
テクダスのAir Force 1を二台購入して二連ドライヴを実行するかもしれない。

そんな経済力のない私でも、Air Force 1の二連ドライヴは、いったいどんな音がするのか、と考える。
できれば今年のインターナショナルオーディオショウのステラのブースにおいてデモをやってほしいところだが、
こんな大がかりのプレーヤーでも、モーターを外すことはできない。

モーターとターンテーブルプラッターの間にもうひとつターンテーブルプラッターをいれることで、
モーターの影響を低減できることはできても、モーターの追放とはならない。

となると少しでもモーターの影響から逃げるために、
二連で音がよくなるならば、さらにもう一台追加して三連、四連……、
とますます非現実的なことになってしまう。

レコードを回転させなければアナログディスク再生は成り立たない。
ということはモーターからはいつまでたっても解放されないのだろうか。

このところにエアフォースを利用することはできないのか。
つまりモーターではなく、空気の力でターンテーブルプラッターを廻すことはできないのだろうか。
そうすればモーターから、アナログディスク再生が解放されることになる。

Date: 4月 20th, 2014
Cate: アナログディスク再生, 型番

型番について(その28)

ステレオサウンド 55号のアナログプレーヤーの試聴で、
瀬川先生はAir Forceの原点ともいえるマイクロの糸ドライヴ、RX5000+RY5500で、
二連ドライヴということをやられている。

RX5000+RY5500という型番は、
RX5000というターンテーブルユニットとRY5500というモーターユニットからなる。
二連ドライヴとはRX5000を二台用意して、レコードを載せる(実際の再生に使う)RX5000とRY5500のあいだに、
もう一台のRX5000を介在させるというものである。

モーターからターンテーブルプラッター、
ターンテーブルプラッターからもうひとつのターンテーブルプラッターへ、と回転は伝えられる。

なんと無駄なことを……、と思う人もいるけれど、
これは少しでも回転を滑らかにするための手段である。
お世辞にもスマートな手段とはいえない。

RX5000+RY5500は、それでなくとも使い手の技倆に頼っているところの多い製品であり、
いいかげんな使いこなし・調整ではいい結果は得られない。
そういうアナログプレーヤーであるRX5000+RY5500に、さらに調整箇所を増やすわけである。

置き場所の確保も二連にすれば大変になる。
それでも二連ドライヴにする価値はあるのだろうか。

瀬川先生はRX5000+RY5500の試聴記に書かれている。
     *
二連駆動で、AC4000MCをAX7G型アームベースにとりつけて、調整を追い込んだときの音は、どう言ったらいいのか、ディスクレコードにこんなに情報量が刻み込まれていたのか! という驚きである。音の坐りがよく、しかも鮮度高く、おそろしくリアルでありながら聴き手を心底くつろがせる安定感。マニアならトライする価値がある。
     *
通常の使用方法では決して得られない音の領域が姿を現してくる。

Date: 4月 20th, 2014
Cate: アナログディスク再生, 型番

型番について(その27)

テクダスのアナログプレーヤーの型番、Air Forceは、
空気の力を利用してターンテーブルプラッターを浮上させたり、ディスクをターンテーブルプラッターに吸着、
外部振動を遮断するためのエアーサスペンションといったことを表すものであることは、
すぐにわかることである。

確かに空気の力を利用したアナログプレーヤーである。
そのことには異論はない。

そのAir Force 1でもターンテーブルプラッターを廻すにはモーターの力を借りている。
この部分にエアフォースは使われていない。

ターンテーブルプラッターをいかに滑らかに回転させるか。
そのためにはターンテーブルプラッターに回転エネルギーを与えるための手段を、
モーター以外にないものか、ということにもなる。

以前書いたようにリンのLP12を井上先生が手で廻されたときの音は、ほんとうに澄んだ音だった。
あの音をいまも思い出すと、モーター以外の手段はほんとうにないのか、と考えることになる。

これもすでに書いているが、昔から、手廻しの音の良さは一部のマニアでは知られており、
深い井戸を掘って……、ということを考えたくなる。
だがこれは非現実過ぎる。

Date: 2月 23rd, 2014
Cate: 型番

型番について(その27)

マーク・レヴィンソンがマークレビンソンの次に興したチェロのコントロールアンプにEncoreがある。
小改良が施され、Encore 1MΩとなった。

型番末尾の1MΩが表しているように、ライン入力のインピーダンスを1MΩに変更したモデルである。
ライン入力のインピーダンスは以前は100kΩ、50kΩ、47kΩが一般的だったが、
たいていのコントロールアンプはライン入力からの信号は入力セレクターの次にはボリュウムが来る。
このボリュウム(ポテンショメーター)のインピーダンスがそのまま入力インピーダンスとなる。

高域特性を考慮するとこの値は低い方が有利である。
ただあまり低すぎると、CDプレーヤー、チューナー、テープデッキといった、
ライン入力に接続される機器にとっては負荷として適当とはいえなくなるので、
10kΩあたりで低い方は落ち着いている。

Encore 1MΩは1MΩという高いインピーダンスのボリュウムを採用したのではなく、
ボリュウムの前に1MΩという高い入力インピーダンスをもつバッファーアンプを設けて実現している。

その改良(変更)点を、型番の末尾に1MΩとつけることでアピールしている。
マーク・レヴィンソンらしい型番のつけ方のうまさ(ずるさかもしれない)である。

いかにもEncore 1MΩ以前に、
これだけの高入力インピーダンスのアンプはなかったかのように思わせることができるし、
事実、そう思ってしまった人を知っている。

けれど、ヤマハはC2の改良型C2xにおいて、CDプレーヤーの入力に関してはバッファーアンプを追加して、
2.2MΩという、Encore 1MΩよりも数年早く、しかも2倍以上の高入力インピーダンスをやっていた。

けれど型番のどこにも高入力インピーダンスを謳ってはいない。
最初のC2からC2aに、C2xになったわけだが、型番からはどういう変更点があったのかはわからない。

それに最近オーディオを始めた人にとっては、
C2が最初のモデルということはわかっても、次がC2aなのかC2xなのかははっきりとしない。

このことはアキュフェーズのC200、P300についても同じことがいえる。
このシリーズは末尾にS、X、Lがつくように改良されていったが、
アルファベットの順序に従えば、L、S、Xというふうになっていったと思われる。

もっと型番のつけ方がうまくなってほしい。

Date: 8月 27th, 2013
Cate: 型番

型番について(その26)

ステレオサウンド 80号は1986年に出ている。

ESL63が登場した1981年にまだ10代だった私も、1986年には20代になっていた。
ESl63もESL63Proという派生モデルを生み出している。
1982年にはCDが登場している。

いくつもの変化が、周囲にも私自身にもあって、
ESL63Proの音の良さを、それまで頭で理解していたところがあったのが、
素直に、いいなぁ、と思えるようになってきていた。

ESL63よりもESL63Proのほうを、私はとる。
ただ外観に関してはESL63Proは、いかにも仕事用のスピーカー然としていて気にくわないところはある。
けれど、なによりも型番の63が、1963年生れの私にとっては、
無視できない魅力として、このスピーカーが登場したときから続いている。

このころになると、ESL63Pro、たぶんいつかは手に入れるんだろうな、とも思うようになった。
でもできればESL63の外観で、ESL63Proの音であってほしい、という希望つきでもあったけれど。

これは決意ではなかった。
予感、といったほうがいい。
そんな予感は、いつの日か現実になるようだ。

1986年から10数年以上経ったころ、ESL63Proを譲ってくれる人がいた。
ESL63Proの中でも、古いロットのモノであったが、相場からするとずいぶんと安く譲ってもらった。

全面的に修理が必要な状態なため、いまは押入れの中で眠ったままになっている。
いつの日か、きちんと鳴らしたい。

音だけでいえば、現行のESL2912、2812の方がいいに決っている。
でも、両スピーカーの型番には63の文字がないから、このESL63Proを鳴らす。
それに、このESL63Proは小林悟朗さんのモノだったのだから、なおさらだ。

いまふりかえると、63という数字は、私にとってひとつの縁だった。
小林悟朗さんから譲られたESL63Proも縁である。

Date: 8月 25th, 2013
Cate: 型番

型番について(その25)

ステレオサウンド 80号での「フィガロの結婚」の試聴でのESL63Proのセッティングは、
通常の試聴におけるセッティングとは異り、フィリップスの録音チームがやっているのと同じようにしている。

ESL63Proの中心が聴き手の耳の高さと合せるためにまず通常よりも高いスタンドを用意し、
さらにここがもっとも特徴的なのだが、スピーカーを110度ほどに、思いっきり振っている。
実際の配置の詳細は80号の476ページに写真と図が掲載されているので、そちらを参照してほしい。

こういうセッティングとすることで、低音の音圧感は減るものの、
このセッティングならではの音場感が浮び上ってくる。

黒田先生はこう語られている。
     *
よく音がこちらにくるという表現を使いますが、このスピーカーの配置で聴くと、音は、絶対にこちらにきません。幹スピーカーの右端と左スピーカーの左端の線のむこう側に音場があって、むこう側で終わっている感じがするから、いちいち首をつっこんで、あすこにおまえがいるというふうに聴いてしまう聴こえかたなんですね。音を大きくすると、それがあまってくる。この中で形成する音量で、音場があったところを確かめるという聴こえかたですね。今度はオペラではなくて、楽器は動いたりしないから、よけいにそれが鮮明にでた。
     *
この発言で「オペラではなくて」は、「フィガロの結婚」を聴いた後で、
同じフィリップス録音の、ハイティンク指揮アルプス交響曲を聴いてのものであるからだ。

この時の試聴は、個人的に興味深く、いまでも憶えている。
黒田先生の「この中で形成する音量で」の発言にもあるように、
ヨーロッパのクラシック・レーベルの録音モニター時の音量は、
日本で想像されているよりもずっと低い、ということを、
このときのESL63Proの独特のセッティングと、そこでの音量が如実に語っていた。

Date: 8月 25th, 2013
Cate: 型番

型番について(その24)

QUADのESL63は、その後ESL63Proという、いわば録音モニター用のモデルも出している。

ESL63は早い時期からフィリップスの録音エンジニアたちモニタースピーカーとしてつかわれていて、
そのときから高域のリニアリティを少しでもよくするためにネットを外していたのが、
QUADがフィリップスの録音チームの、そういう要望をきき、
ESL63のパンチングメタルの孔を大きくしている。
その他保護回路の働き(設定)が通常モデルとは異る。

ESL63Proが出る、ときいて、それでも少し期待していた。
もっとも冷静に考えれば、型番の末尾にProとつくのだから、
ESLのしっとり感を、このモデルに期待するのは無理だというのは聴く前からわかってはいた。

それでも、もしかするという、わずかな希望をもっていた……。

ESL63ProはESL63のシックな外観から、いかにも可搬型として使いやすいように変っていた。
音はESL63よりも、モニター的性格を聴き取ろうと思えば聴きとれるような、そういう変化だった。

このESL63Proを使って、フィリップスの最新録音を聴くという企画が、
ステレオサウンド 80号に載っている。
黒田先生、諸石幸生氏、草野次郎氏で、
ネヴィル・マリナー指揮のモーツァルトの「フィガロの結婚」を聴くというものだった。

タイトルは、
フィリップスのモニターサウンドで聴く最新録音『マリナー/フィガロの結婚』。

Date: 8月 25th, 2013
Cate: 型番

型番について(その23)

QUAD・ESL63が出て、そう経たないうちにステレオサウンドで働くようになったから、
意外にも早く、それも販売店の試聴室とは比較にならない、いい条件で聴くことができた。

たしかに、ステレオサウンド 61号で、
特集「ヨーロピアン・サウンドの魅力」と長島先生による「QUAD ESL-63研究」、
この二本の記事で高い評価を得ていたし、期待はふくらむだけふくらんでいた、
そして実際のESL63の音は、ステレオサウンド 61号に書かれている通りの音だった。

でも、私としては不満があった。
音がしっとりしていない、ただその一点だけがどうしても受け入れられなかった。

音がしっとりしていない、
つまり音が乾燥気味に聴こえる。
ただ、これはあくまでもESLのしっとり感と比較しての印象であって、
乾ききった音ではないのだが、
どうしてもコンデンサー型スピーカーに対して照らし合せると、
しかもそのコンデンサー型スピーカーの音イメージは旧型のESLによってつくられているから、
だからこそやっかいなのだが、
ESL63の音は立派ではあっても、しっとり感が足りないというだけで不満だった。

型番がESL63ではなく、ESL62とかESL64だったら、
そこまで不満にも思わなかった。
ESL63だから、1963年生れの私は、個人的な強烈な思い入れがあった。
その思い入れが、ほんのすこしだけ損なわれた、というだけの話であっても、
当時まだ10代だった私は、とても大きなことではあった。

Date: 8月 25th, 2013
Cate: 型番

型番について(その22)

QUADのESLは、マーク・レヴィンソンがHQDシステムの中核として使っていたスピーカー、
というイメージが、1970年代後半からオーディオに興味を持ち始めた私にはある。

Electro Static LoudSpeakerの頭文字をとったESLではあるが、
昔からいわれているように、loudな音は苦手とするスピーカーである。

音量はどちらかといえば控え目で繊細な表現を得意とするESLだから、
よりloudな音を要求する人は、ESLを二段スタック、さらには三段スタックの道に行く。

それに発音原理上、平面波ということ、そして3ウェイという構造もあいまって、
聴取位置はかなりシビアなスピーカーシステムでもあった。
それでも、このスピーカーシステムでしか聴けぬ音の表現があったからこそ、
ながいこと、多くの人の支持を得てきたし、
いまもドイツのQUAD Musikwiedergabe GmbHの手によって再生産されている。

オリジナルのESLが持つ、そういうところについては、
開発・設計者のピーター・ウォーカーがいちばんよくわかっていたことであろうし、
だからこそ1963年という早い時期から次期モデル開発をスタートさせたのだろう。

ESL63に関する記事がステレオサウンドが載った時、
そのころ魅かれていたロジャースのPM510とともに、
ESL63は私にとって、かなり理想に近いスピーカーシステムとなるのではないか、
そう感じていた。
音を、はやく聴きたい、と思っていた。

Date: 8月 25th, 2013
Cate: 型番

型番について(その21)

QUADのコンデンサー型スピーカーシステムが、ずいぶんよくなっている、ときく。

現在のラインナップは6枚パネルのESL2912と4枚パネルのESL2812がある。
個人的には放射面積の広さが増えることのメリットをとりたいので、
ESL2812よりもESL2912の方に魅力を感じる。

スピーカーとしての奥行き、横幅はどちらも同じなのだから、
背の高さが気にならなければESL2912であり、
現在日本に輸入・販売されているスピーカーシステムのなかで、
いま何を選ぶかとなると、その第一候補としてESL2912がある。

ESL2912は前作のESL2905から、細部のいくつものところが改良されている、とのこと。
そうなると原型といえるESL63と比較すると、その改良点はどれだけの数になるのだろうか。

いろいろな箇所が改良されている、ということは外観からもうかがえる。
ESL2912の音は聴いていないが、音は間違いなく良くなっている、と確信している。

ESL63が日本に登場したのは1981年。
もう30年以上前のことになる。
外観もずいぶん変っている。
QUADという会社の体制も変っている。
そんなことを考えると、ESL2912と型番がなってしまったのは当然とは理解できても、
どこかにESL63の後継機種であることを示してほしい、と思う。

「63」と数字を活かした型番に、個人的にはしてほしかった理由がある。

ESL63の「63」という数字には、
1963年から開発が始まった、という意味がこめられている。