型番について(その26)
ステレオサウンド 80号は1986年に出ている。
ESL63が登場した1981年にまだ10代だった私も、1986年には20代になっていた。
ESl63もESL63Proという派生モデルを生み出している。
1982年にはCDが登場している。
いくつもの変化が、周囲にも私自身にもあって、
ESL63Proの音の良さを、それまで頭で理解していたところがあったのが、
素直に、いいなぁ、と思えるようになってきていた。
ESL63よりもESL63Proのほうを、私はとる。
ただ外観に関してはESL63Proは、いかにも仕事用のスピーカー然としていて気にくわないところはある。
けれど、なによりも型番の63が、1963年生れの私にとっては、
無視できない魅力として、このスピーカーが登場したときから続いている。
このころになると、ESL63Pro、たぶんいつかは手に入れるんだろうな、とも思うようになった。
でもできればESL63の外観で、ESL63Proの音であってほしい、という希望つきでもあったけれど。
これは決意ではなかった。
予感、といったほうがいい。
そんな予感は、いつの日か現実になるようだ。
1986年から10数年以上経ったころ、ESL63Proを譲ってくれる人がいた。
ESL63Proの中でも、古いロットのモノであったが、相場からするとずいぶんと安く譲ってもらった。
全面的に修理が必要な状態なため、いまは押入れの中で眠ったままになっている。
いつの日か、きちんと鳴らしたい。
音だけでいえば、現行のESL2912、2812の方がいいに決っている。
でも、両スピーカーの型番には63の文字がないから、このESL63Proを鳴らす。
それに、このESL63Proは小林悟朗さんのモノだったのだから、なおさらだ。
いまふりかえると、63という数字は、私にとってひとつの縁だった。
小林悟朗さんから譲られたESL63Proも縁である。