型番について(その22)
QUADのESLは、マーク・レヴィンソンがHQDシステムの中核として使っていたスピーカー、
というイメージが、1970年代後半からオーディオに興味を持ち始めた私にはある。
Electro Static LoudSpeakerの頭文字をとったESLではあるが、
昔からいわれているように、loudな音は苦手とするスピーカーである。
音量はどちらかといえば控え目で繊細な表現を得意とするESLだから、
よりloudな音を要求する人は、ESLを二段スタック、さらには三段スタックの道に行く。
それに発音原理上、平面波ということ、そして3ウェイという構造もあいまって、
聴取位置はかなりシビアなスピーカーシステムでもあった。
それでも、このスピーカーシステムでしか聴けぬ音の表現があったからこそ、
ながいこと、多くの人の支持を得てきたし、
いまもドイツのQUAD Musikwiedergabe GmbHの手によって再生産されている。
オリジナルのESLが持つ、そういうところについては、
開発・設計者のピーター・ウォーカーがいちばんよくわかっていたことであろうし、
だからこそ1963年という早い時期から次期モデル開発をスタートさせたのだろう。
ESL63に関する記事がステレオサウンドが載った時、
そのころ魅かれていたロジャースのPM510とともに、
ESL63は私にとって、かなり理想に近いスピーカーシステムとなるのではないか、
そう感じていた。
音を、はやく聴きたい、と思っていた。