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Date: 12月 18th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その7)

APM8の型番は、Accurate Pistonic Motion を表している。
外観的には、SS-G9をそのまま平面振動板ユニットに置き換えたかのように見えるが、
このスピーカーの開発には約3年かかったときいている。

ハニカム振動板の平面型ユニットは、優秀な特性を示しているが、どうしても音的に満足できずに、
技術者は試行錯誤をくり返し、マイカ製のボイスコイルボビンを、
当初は裏側のハニカムスキンに接着していたものを、ハニカム素材を貫通させることで
表側のハニカムスキンを含め、振動板全体と接着することで、満足できる音が得られた、
と当時のソニーの広告には書いてあったのを思い出す。

高剛性のハニカム振動板だから、裏側だけで接着してもよさそうなものだし、
この違いは測定では検出できないにも関わらず、大きな違いとなってくる。
音とはそういうものだろう。

SS-G7、SS-G9、APM8で、AGバッフル採用のスピーカーは終ってしまう。
APMシリーズの第二弾APM6から、エンクロージュア全体がスーパー楕円へと変化し、
ソニーの4ウェイ・スピーカーは、SS-GR1(1991年登場)へと引き継がれる。

APM (Accurate Pistonic Motion) ──、これはソニーだけではない、
当時の国産スピーカーが懸命に目指していたものだ。

Date: 12月 18th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その6)

ソニーはSS-G7を発売した1976年の、第25回オーディオフェアに、PCMオーディオユニットを展示、
翌77年に、コンシュマー機としては世界初のPCMプロセッサーPCM-F1を発表・発売している。

ビデオデッキと組み合せることで、14ビットとはいえ、デジタル録音・再生を可能にしただけでなく、
マイクロフォン入力端子も備え、電源も交流/直流でも使える、可搬型という意欲作だった。
そして、ソニーは、フィリップスとともにCDを開発している。

推測でしかないが、SS-G7の開発のころから、
デジタル録音のプログラムソースを試聴に使っていたと考えても間違いないだろう。
さらにソニーは、新しいスピーカー解析技術も開発している。

この2つの事柄がなかったら、SS-G7は、
それまでの同社のスピーカーとそれほど変わらないもので終っていたかもしれない。

AGバッフル、ウーファーを前面に突き出させたプラムライン配置は、
デジタル時代の予測から生れてきたものかもしれない。

1979年に、ソニーはエスプリ・ブランドを誕生させ、APM8を発売する。

Date: 12月 17th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その5)

3ウェイ・システムにミッドバスを加え、
4ウェイにまとめあげたシステムとして適例なのが、ソニーのSS-G9である。

4343とほぼ同じころに、ソニーから3ウェイのフロアー型のSS-G7が出ている。
38cm口径のウーファーに、
10cm口径のスコーカーと3.5cm口径のトゥイーター(ソニー独自のどちらもバランスドライブ型)の組合せ。
クロスオーバー周波数は、550Hzと4.5kHz。

型番的にもSS-G7の上級機にあたるSS-G9は、20cm口径のミッドバスを追加している。
ウーファーとミッドバスのクロスオーバー周波数は300Hzになり、1.2kHzまで受け持つ。
クロスオーバー周波数が550Hzから1.2kHzへと高くなったことから、
スコーカーの口径を、8cmと小さくしている。
トゥイーターとのクロスオーバー周波数も4.5kHzから5kHzとなり、
それぞれのユニットの帯域幅を小さくしている。

SS-G7はトゥイーターとスコーカーをサブバッフルにマウントすることで、
わずかでも、ふたつのユニットを近接させようとしていた。

SS-G9ではスコーカー(4ウェイになったのでミッドハイ)の口径が小さくなったことで、
SS-G7以上に、ふたつのユニットの中心は近接している。

SS-G9が4343を意識していることは、フロントバッフルにスリットからも明らかだろう。

SS−G7とG9は、縦横溝が刻まれたフロントバッフル
(ソニーはアコースティカル・グルーブド・ボード、略してAGボードと呼んでいる)を採用している。
ソニーの説明では、このスリットは、波長の短い中高域を拡散させるものだ。

SS-G7では、このスリットがフロントバッフル全面に均等に刻まれている。
4343の2年後に登場したSS-G9では、ウーファーとミッドバスのあいだに、
水平に、他のスリットよりも深くて広く、はっきりと目立つスリットが刻まれて、
見た目のアクセントになっている。

またバスレフポートもSS-G7ではひとつだったが、ふたつになり、
4343と同様にウーファー下部の左右に設けられている。

レベルコントロールの位置も、SS-G7ではスコーカー、トゥイーターの横に縦方向にあったのが、
SS-G9ではミッドバスとウーファーの間に、横方向へと変更されている。

4343以降登場した国産4ウェイ・スピーカーのなかでも、
SS-G9は、4343を相当意識してつくられたスピーカーといえよう。

Date: 12月 15th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その4)

4ウェイ・スピーカーシステムといっても、開発の方向性はいくつかある。

3ウェイ・システムをベースにして、スーパートゥイーターもしくはサブウーファーを加えたもの、
同じく3ウェイ・システムのベースでも、中低域に専用ユニットを加えたもの、
2ウェイ・システムを中心にして、スーパートゥイーターとサブウーファーを加えたもの、などがある。

スペンドールのBCシリーズを参考例としてあげる。
スペンドールは、1969年に第一作のBCIを開発した。
ウーファーは、BBCがBC2/8MKIIと呼ぶ20cm口径のベクストレン振動板のコーン型。
トゥイーターはセレッション製のドーム型HF1300。
型番のBCはベクストレン(Bextrene) の頭文字Bとセレッション(Celestion) の頭文字Cを組合せを表している。

このBCIをベースに、ウーファーの耐入力を向上させ、
スーパートゥイーターとして、当時ITT参加にあったSTCの4001を追加し、3ウェイとしたのが、
1973年に発表され、日本でもロングセラーモデルとなったBCIIである。

BCIIの成功は、BCIIIの開発へとつながる。
BCIIIは、BCIIの低域のワイドレンジ化を図ったモデルで、BCIIと同じユニットに、
30cm口径のベクストレン・コーン型ウーファーを追加し、
エンクロージュアもひとまわり大きなものとなっている。

BCIIのクロスオーバー周波数は、3kHzと13kHz。BCIIIは、これに700Hzが加わる。

BCI(2ウェイ)から始まり、BCII(3ウェイ)、BCIII(4ウェイ)へと、BCシリーズは発展し完結している。

Date: 12月 15th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その3)

1978年から80年ごろにかけて4ウェイ・スピーカーを開発・発売してきたソニー、テクニクス、
ビクター、Lo-D、パイオニア、ダイヤトーンで、その後も4ウェイシステムを継続して開発したのは、
ダイヤトーン、一社だけと言ってもいいだろう。

テクニクスも4ウェイ・システムをいくつか開発しているが、そのたびに製品コンセプトは変わっていき、
ひとつの製品をじっくり発展していっているとは、私は思っていない。

その点、ダイヤトーンはDS5000(1982年)をベースに、
88年にDS-V9000、翌89年にDS-V5000と発展させ、
84年には、すこし小型化したDS3000というヴァリエーションも出すなど、
4ウェイ・システムの完成度を高めていこうという姿勢があった。

Date: 12月 15th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その2)

テクニクスは、1978年にSB-E500、1981年にSB-M1 (Monitor 1) を出している。

SB-E500は、38cmコーン型ウーファー、25cmコーン型ミッドバス、ミッドハイとトゥイーターはホーン型という、
4343と同じユニット構成となっている。
クロスオーバー周波数は、350、1500、8500Hz。
外形寸法は、W72×H103×D56cm。価格は70万円(ペア)。

SB-M1はmonitor 1の名称がつけられていること、
エンクロージュアの仕上げがグレイ塗装とウォールナットの2つが用意されているなど、
4343をかなり意識した製品づくりといっていいだろう。

ユニットはすべて丸形の平面振動板で、口径はそれぞれ38、22、8、2.8cmとなっている。
クロスオーバー周波数は、280、900、4000Hz。
外形寸法は、W63×H105×D43.9cm。価格は70万円(ペア)。

ウォールナット仕上げのSB-M1 (M)は、エンクロージュア下部に台輪がついているため、
高さが112cmとすこし大きい。価格はちょうど2倍の140万円(ペア)。

ビクターは、1981年にZero-1000を、85年にZero-L10を発表。

Zero-1000は、ブックシェルフ型の4ウェイスピーカーで、
ユニット構成は、ウーファー32cmコーン型、ミッドバス7.5cmドーム型、
ミッドハイ3.5cmドーム型、トゥイーターはリボン型。

色合いは異るが、フロントバッフルはブルー、側板、天板はウォールナット仕上げと、
言葉だけで表すと4343WXの仕上げと同じ。
とはいえ、フロントバッフルはカーブしているし、どちらかといえば水色ということもあり、
見た目の印象はずいぶん違う。
クロスオーバー周波数は、500、5000、12000Hz。
外形寸法は、W44×H79.3×D37.1cm。価格は42万円(ペア)。

Zero-L10は、1985年と、発売が遅いこともあって、専用ベースST-L10が別売りで用意されている。
フロアー型なのに? と思われる方もいるだろうが、
この考えが発展して、90年発売のSX1000 Laboratoryの専用ベースへとつながっている。
Zero-L10のユニット構成は、ウーファー39cmコーン型、ミッドバス21cmコーン型で、
振動板は紙ではなく、セラミックとカーボンの複合素材を使用している。
ミッドハイとトゥイーターは、セラミック振動板のドーム型で、口径は6.5、3cm。
クロスオーバー周波数は、230、950、6600Hz。
外形寸法は、W58×H100.5×D47cm。価格は160万円(ペア)。

ダイヤトーンもビクター同様、ブックシェルフ型の4ウェイを先に出している。
1980年発売のDS505は、ウーファー32cmコーン型、ミッドバス16cmコーン型で、
アラミドハニカム振動板を採用している。ミッドバス4cm、トゥイーター2.3cmのドーム型。
クロスオーバー周波数は、350、1500、5000Hz。
外形寸法は、W44.2×H72×D42.5cm。価格は38万円(ペア)。

フロアー型のDS5000は、1982年に登場した。
ユニット構成は、ウーファー40cmコーン型、ミッドバス25cmコーン型で、
アラミドハニカム振動板採用はDS505と同じだが、
成型の難しい、この素材で、ミッドバスはカーブドコーンとしている。
ミッドハイ、トゥイーターは6.5、2.3cmドーム型。
クロスオーバー周波数は、30、1250、4000Hz。
外形寸法は、W63.5×H105×D46cm。価格は99万円(ペア)。

ヤマハからもGF-1が登場しているが、1991年と、ずいぶん後になってのことなので除外した。

Date: 12月 14th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その1)

4343は、ペアで140万円超えるスピーカーとして驚異的な売行きと言われる。
これだけ売れたスピーカーは、いわゆる売れ筋の価格帯のスピーカーでも、そう多くはない。

そのため、といってもいいだろう、4343の成功に触発されて,
国産メーカーからも4ウェイ・スピーカーシステムが登場しはじめた。
それらのスピーカーとの対比で4343を見ていくと、
当時の国産メーカーのスピーカー技術者が4343をどう捉えていたのかが、わかってくるというものだろう。

どういう4ウェイ・スピーカーが出ていたのか、ざっと振り返ってみる。
ソニーからは、1978年にSS-G9が登場した。4343と同じ38cm口径のウーファー、20cmのミッドバス、
8cmのミッドハイ、3.5cmのトゥイーターという構成。
ミッドハイとトゥイーターは、ソニーが新たに開発した、
ドーム型とコーン型を一体化した形状の振動板のバランスドライブ型。
クロスオーバー周波数は、300、1200、5000Hz。
外形寸法はW60×H108×D45.5cm。価格は57万6千円(ペア)だ。

さらにソニーは翌年、エスプリ・ブランドで、平面振動板の4ウェイ・システム、APM8を出す。
クロスオーバー周波数は、320、1250、4500Hz。
外形寸法はW65×H110.5×D45cm。価格は200万円(ペア)だ。

パイオニアからは、平面振動板の4ウェイ同軸ユニットを搭載したS-F1が、1980年に出ている。
クロスオーバー周波数は、500、2500、8000Hz。
外形寸法はW70×H117×D47cm。価格は170万円(ペア)だ。

Lo-Dは、1978年に、
コーン型、ドーム型ユニットの凹みに発泡樹脂を充填した平面型4ウェイのHS10000を発表している。
HS10000には、スーパートゥイーターを追加した5ウェイ・モデルも用意されていた。
使用ユニットは、30、6、3.5、1.8cm口径(0.9cm:5ウェイ仕様のスーパートゥイーター)。
クロスオーバー周波数は、630、2500、4500Hz(9000Hz:5ウェイ時)。
外形寸法はW90×H180×D60cm。価格は360万円(ペア)だ。
このスピーカーは、いわゆる2π空間使用前提の設計は、4343と共通しているし、
コンセプトからして、プロトタイプ的性格が強い。

Date: 12月 10th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と2405(その4)

早瀬(文雄)さんは、2405のことを「清潔感のある音」とよく言う。
瀬川先生の言われる「切り絵的」な描写が、早瀬さんには清潔感として聴こえてくるのだろう、と私は想っている。

4343と4343Bを聴く限りで言えば、アルニコの、ソリッドで引き締った音が、
2405の特長とうまく作用し、見事な切り絵を表現してくれるのかとも思う。
フェライトのまろやかで柔らかい感じは、2405の魅力を損なう方向に働くのか。

いまもし新品同様の4343と4343Bがあったとして、どちらを選択するかとなったら、
メインスヒーカーとして4343だけ、というのなら、フェライト仕様の4343Bにする。
他のメインスピーカーを使っていて、もう一組というのであれば、アルニコの4343を、
どちらもためらうことなく選ぶだろう。

そして仕上げは、アルニコならばサテングレイ塗装にブラックのフロントバッフルのスタジオ仕様を、
フェライトならウォールナット貼りにブルーバッフルのWX仕様にする。

スピーカーを選択するということは、そういうことではないだろうか。

Date: 12月 10th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と2405(その3)

1978年79年にかけて、ステレオサウンドから別冊として「HIGH TECHNIC SERIES」が出た。
Vol.1がマルチアンプ、Vol.2が長島先生によるMCカートリッジの詳細な解説、
Vol.3がトゥイーター、Vol.4がフルレンジの特集だった。

Vol.3の巻頭記事で、4343のトゥイーターを2405を含めて、
他社製のトゥイーターに交換しての試聴が行なわれている。
試聴方法は、それぞれのトゥイーターの能率も異るし、
4343の内蔵ネットワークは2405に有利に働くこともあるということで、
トゥイーター用に専用アンプを用意して行なわれていた。

試聴者は、井上先生、黒田先生、瀬川先生の3人。
私が何度も読み返したのは、ピラミッド社のリボントゥイーターT1と2405のところだ。

井上先生と黒田先生は、T1をひじょうに高く評価されこのとき聴いた中ではもちろんベストの存在だし、
当時4343をお使いだった黒田先生はT1に心を動かされていたと記憶している。

瀬川先生は、というと、T1のポテンシャルの高さは充分認めながらも、
「2405の切り絵的な表現に騙されていたい」ということを言われていた。

このことが、いまでも強い印象として残っている。

T1に置き換えたときの音像を立体的とすれば、2405の音像は平面で切り絵的。
T1にすることで、4343がより自然な音に変化することよりも、
2405が演出する世界に騙されることで、レコード音楽にワクワクドキドキしていたい、
そう私は受けとめた。

2405のフェライト仕様は、おそらくその切り絵的世界が、ずいぶんと失われているのではなかろうか。
他のトゥイーターと比較すれば、それでも切り絵的世界の音だろうが、
切り絵ならば、その切り口がスパッと見事であってほしい。
迷いながらの未熟な、甘い切り口では、そんな切り絵には騙されたくない。

騙されていたいと思うのは、それが見事なものであるからだ。

Date: 12月 10th, 2008
Cate: 4343, JBL, 井上卓也

4343と2405(その2)

4343にはアルニコ仕様とフェライト仕様の4343Bがある。
ときどきアルニコ仕様の4343のことを4343Aと書く人がいるが、4343Aというモデルは存在しない。

4350、4331、4333には改良モデルのAが存在する。
型番末尾の「A」はアルニコの頭文字ではなく、改良モデルを表している。
ついでに書いておくと、4345BWXと書く人もいる。
4345が正しい表記で、4345にはフェライト仕様しかないので、
アルニコ仕様と区別するための「B」はつかない。
またWXも仕上げの違いを表すもので、4345以降はウォールナット仕上げのみとなったため、型番にはつかない。

4343と4343Bの違いは、ウーファーの2231Aとミッドバスの2121が、
フェライト仕様の2231H、2121Hに変更されているだけだ。
ミッドハイの2420、トゥイーターの2405はどちらもアルニコ仕様である。

4343の後継機4344となると、すこし事情が違ってくる。
最初の頃は、4343Bと同じようにウーファーとミッドバスがフェライトで、
ミッドハイとトゥイーターはアルニコだったが、
どうも途中からミッドハイの2421Bがフェライトに変わっている。

2405は最後までアルニコだったと思っていたが、
どうもこれも後期のロットにはフェライト仕様の2405Hが搭載されているものがあるときく。

世の中にはアルニコ神話に近いものがある。
自分の使っているスピーカーに、アルニコ仕様とフェライト仕様があるならば、
やはりどちらが良いのか、とうぜん気になってくる。それがマニアなのだろう。

たまたま井上先生の取材の時に、そういう話になったとき、
「JBLに関しては、アルニコとフェライトは良し悪しじゃなくて、好みで選んでいいよ」
と言われたことがあった。
どうもスタジオモニターのユニットをひとつひとつ、
アルニコとフェライトに入れ換えて試聴されたうえでの、結論のようだった。

でも、つづけて「2405だけはアルニコだね。これだけはアルニコの方が良いよ」と言われた。

Date: 12月 9th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と2405(その1)

4300シリーズのトゥイーターといえば、なんといっても2405である。
この2405の位置は、4341、4343、4344で異っている。
基本的にミッドハイの2420の横なのは一緒だが、
4341は2420(というよりもホーン2307の開口部)の真横ではなくやや下にズレている。
4343は反対に上にすこしシフトしている。
4344で、やっと真横に位置している。

4344は2405の位置を変えられないが、4341、4343は右でも左でもつけ換えられる。
そのための穴が開いていて、メクラ板で塞いでいる。

2307の開口部の両脇にお味大きさの穴がふたつ開いている。
そのため、視覚的バランスをとるため、上か下にシフトしているのだろうか。

このメクラ板が音質にけっこう影響を与えている。
フロントバッフルと面一(ツライチ)になっていたらそれほどでもないのに、
凹みができるように取りつけられている。
メクラ板が鳴き、その前にちょっとしたホーンのようなものがついているだけに、
このメクラ板を鳴きをどう抑えるかが、使いこなしのポイントになってくる。

メクラ板の材質を変えてみるのもいいだろうし、バッフルと面一になるように加工するのもいいだろう。

Date: 12月 3rd, 2008
Cate: 4343, 4350, Celestion, JBL, SL6
4 msgs

4343と4350(補足)

ボイスコイル径で思い出したことがあるので補足しておく。

セレッションのSL6(SL600)は、グラハム・バンクがユニットを、
サイズにとらわれることなく一から設計したことは「サイズ考」に書いたが、
SL6のユニットも、ウーファーとトゥイーターのボイスコイル径は等しい。

推測にしかすぎないが、おそらくいくつもの口径のユニットとともに、
ボイスコイル径もいくつも試作した結果だろう。

Date: 12月 3rd, 2008
Cate: 4343, 4350, JBL
2 msgs

4343と4350(その2)

4350の大きな特長は、ダブルウーファー構成よりも、
ウーファー2231A、ミッドバス2202A、ミッドハイ2440、
これら3つのユニットのボイスコイル径が4インチで、同じだというところだ。

オーディオに興味をもちはじめたばかりの頃、2ウェイのホーン型システムが、
高域のドライバーに4インチ・ダイヤフラム、2インチ・スロートが多いのを疑問に思ったことがある。
2ウェイで、高域を伸ばすなら、4インチ・ダイヤフラムよりも2インチのほうだろう、と考えていたわけだ。
なぜ4インチなのか。その理由はしばらくしないとわからなかった。

4インチ・ダイヤフラムのコンプレッションドライバー採用のシステムは、
ほぼすべて15インチ(38cm)口径のウーファーを搭載している。

ユニットを組み合わせて、自作スピーカーを構築している人には当り前の事実だろうが、
JBLやガウスの15インチ・ウーファーのボイスコイル径は4インチとなっている。
ガウスはJBLを離れたバート・ロカンシーを中心として興されたメーカーだけに、
HF4000(ドライバー)のボイスコイル径は4インチ、
ウーファーはいくつものモデルがあるが15インチ口径のユニットのボイスコイルは同じく4インチ、
12インチ口径のウーファーも4インチになっている。

アルテックには515、416などのウーファーは3インチのボイスコイル径だが、
コンプレッションドライバーの288のボイスコイル径もまた3インチである。

ボイスコイル径を揃えることが、技術的にどういうメリットがあるのかは説明できないが、
音の上では、コーン型と、コンプレッションドライバー+ホーン型という異るユニットを
うまくまとめるノウハウなのだろう。

4343、4341のミッドバス2121のボイスコイル径は、発表されていないが、おそらく3インチのはず。
ウーファー2231Aは4インチ、ミッドハイの2420ドライバーは2インチと、すべて異る値だ。

これだけですべてが語れるわけではないことは承知しているが、
4350Aが、ぴたりとうまく鳴ったときのエネルギー感の統一感のある凄まじさ、
その音と較べると、4343が、どうしても中低域のエネルギーがやや不足気味なのは、
ボイスコイル径と無関係ではないと思う。

Date: 12月 2nd, 2008
Cate: 4343, 4350, JBL

4343と4350(その1)

4343(4341も含む)と4350の、いちばん大きな違いは、中低域の再現力の差だと感じている。
システム全体の構成も、もちろん大きく違う。
4350Aは4343、4341と同じウーファー(2231A)の二発使用で、バイアンプ駆動が前提。
ミッドバス帯域のユニットも、25cm口径の212から30cm口径の2202に、
ドライバーも2420から2440に、全体的にスケールが一回り大きくなっている。

4343が、ある節度を保った、破綻の少ないまとまりのよさを見せるのに対して、
4350Aは凄みのある雰囲気を持つ。

バスレフポートの数も4343は2つ、4350Aは6つ、
エンクロージュアの奥行きも4350Aは50.3cmと、4333、4341とほぼ同じ値だ。

違いはいくつもあるが、それでもいちばんの違いは、中低域だ。

4341のときからそうだが、ミッドバスを加えた4ウェイ構成にも関わらず、
中低域の豊かさが不足している。
周波数特性的に問題なくても、聴感上、エネルギー感が不足気味で、
ミッドハイの2420とウーファーの2231Aの間にはさまれて喘いでいる、そんな印象さえ受ける。

もっとも4341では、逆にこのことが魅力にもつながっており、
スリムでセンシティヴとも言える音は、好きなひとにはたまらないはずだ。

4343になり、ユニットは同じながらも、中低域の鳴りの悪さは改善されており、
4341と比べると、音全体のスケール感は大きく、安定している感がある。
それでも中低域の豊かさを感じさせてくれるかというと、
中低域専用ユニットを持っているのに……、と言いたくなる。

4350Aは、さすがにそんな印象はまったくない。
4ウェイ構成の良さが──うまく鳴ったときの音に限るが──見事に活きている。
これが、JBLが、はじめて開発した4ウェイ・スピーカーだから、おそれいる。

正確には言えば、最初のモデルは4350で、2230ウーファーを搭載している。
4350は聴いたことがないので、4350Aで話を進めていく。

Date: 11月 19th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と4341(その4)

4341と4345には台輪(ハカマ)がついている。台輪の下に何かを置いて床から持ちあげても、
底板の鳴りは基本的に変化しない。
台輪の内側にブロックをかませたら、もちろん変化するが、台輪を利用するかぎり、
底板の鳴り(天板の鳴り)はメーカーが意図したままである。

4343に限らないが、台輪がないスピーカーを床にベタ置きしたとしよう。
底板は床によって補強されたのと同じになり、底板の鳴りは大きく減る。
するとどうなる。天板の鳴りが、逆に増えてしまう。
これはダイヤトーンが測定で明らかにしている。

天板の上に石や木を乗せて振動を抑えると、
次はエンクロージュアの強度的に弱い箇所の振動が増える。

どこかでエンクロージュアにたまっているエネルギーを消費しないと、
イタチごっこになってしまうわけだ。

4343の底板の四隅に木のブロックを、できるだけ外側にもってきて、
つまり底板が何にも接触していない面積をできるだけ広くした状態の音を聴いて、
ブロックを少しずつ内側に入れていく。
つまり底板の、フリーな面積が減ることになる。低音の表情が変化していく。

トーンコントロールやイコライザーなどの電気的なコントロールとは、
また違う、低域のコントロール方法である。

4343が縦置きだけのスピーカーで、もし台輪がついていたら、
4343の評価はすこし変わっていただろう。