Archive for category ワイドレンジ

Date: 7月 11th, 2009
Cate: TANNOY, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その35)

リビングストンによれば、バッキンガム、ウィンザーに関しては、世界市場も含めて、
月12台くらいという予測を立てていたのに対して、
カナダ放送局でのスタジオモニターとしての使用をはじめ、予想の3倍以上の40台のペースで注文が来ていたとのこと

両機種とも手作りなこともあり、生産が追いつかない状況だったらしい。
そのためテストサンプルが用意できなくて、オーディオ誌に、あまり試聴記事が掲載されなかったのだろうか。

「世界のオーディオ」シリーズのタンノイ号には、
井上先生の組合せ記事(オートグラフをマッキントッシュMC2300で鳴らす組合せもこの記事のひとつ)のなかに、
ウィンザーもバッキンガムも登場する。

そこで、両機種の概要について、2ウェイの宿命として、周波数レスポンスとしては問題ないが、
エネルギーレスポンスでは、どうしても中域のエネルギーが不足しがちだあり、
その問題をタンノイが、マルチウェイ化によって解決を図ったのは妥当なことであると、と語られている。

Date: 7月 10th, 2009
Cate: TANNOY, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その34)

インタビュー記事を読んでいて、意外だったのは、取材の時点(1978年か)で、瀬川先生も、
バッキンガム、ウィンザーを試聴されたことがなかったということだ。

瀬川先生は
「実はウィンザーとバッキンガムについては、申しわけないのですが、われわれ少し認識不足だったようです。というのは、1年前に発表されたにもかかわらず、品物がほとんどなくて、テスト用サンプルを借り出すことも不可能だったものですから、われわれとしても勉強不足の点が多々あります」
と、リビングストンにことわりをいれている。

リビングストンは、バッキンガムを、車に例えればロールスロイスで、
ウィンザーはジャガーだとしたうえで、両機種とも、
「オートグラフとGRFと同じ考えで、一点一点、全部手作りで、
タンノイの最高の技術とパフォーマンスを利用して作っている」
と語っている。

オートグラフと技術的な指向(それは時代の違いからも来ているといってもいいだろう)は異なるものの、
手間を惜しまず、持てる技術を駆使している点で共通しているのは、
どちらもその時代のタンノイを代表するシンボル的な存在であるからだろう。

バッキンガムは、どんな音を響かせていたのだろうか。

Date: 7月 9th, 2009
Cate: TANNOY, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その33)

バッキンガム、ウィンザーでの試みが、実際にどのように音に反映されていたのかは、
どちらも残念なことに、聴く機会がなかったため、なんともいえない。

少なくとも商業的には日本ではうまくいかなかったと思われる。
アーデンはどこのオーディオ店でも見かけたが、バッキンガムとウィンザーは、いちども見かけたことがない。

バッキンガム、ウィンザーが登場した1970年代後半は、
日本では、オートグラフ、GRFやレクタンギュラーヨークといった機種の印象がまだまだつよかったこともあり、
現代的、いいかえれば合理的な設計思想のバッキンガムに対しては、拒否反応が、多少なりともあったのだろうか。

安易な音響レンズはともかくとして、話題になるだけの内容はそなえていたと思っているだけに、残念である。
1979年にステレオサウンドから出版された「世界のオーディオ」のタンノイ号に、
タンノイの生き字引といわれていたリビングストンに、瀬川先生がインタビューされている。

Date: 7月 9th, 2009
Cate: TANNOY, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その32)

バッキンガムとウィンザーの違いは、
サブウーファーの数とそれにともなうエンクロージュアのプロポーションにある。
核となる25cm口径の、音響レンズ付の同軸型ユニットは共通、サブウーファーは30cm口径のものが、
バッキンガムは2本、ウィンザーは1本で、クロスオーバー周波数は、どちらも350Hzと3.5kHz。

厳密にいえば、バッキンガムはウーファーを並列接続しているため、ユニットのインピーダンスは16Ωで、
ウィンザーのウーファーは8Ωという違いはある。
最近、ほとんど注目されなくなったが、BL積は、とうぜんだが16Ωのユニットの方が高い。

見ためは、バッキンガムとくらべるとウィンザーは、ややずんぐりむっくりしたプロポーション。
価格はウィンザーが35万円(1本)なのに、ウーファー1本増え、エンクロージュアの高さが、
ほぼウーファー1本分だけ増したことからすると、65万円(1本)と、
30万円の価格差(ほぼ2倍の価格)は大きいように感じられる方もおられるだろう。

バッキンガムの価格におけるエンクロージュアのしめる割合はそうとうにあるということだろうし、
また、それは、しっかりとつくっているということを示しているといっていいだろう。

Date: 7月 8th, 2009
Cate: TANNOY, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その31)

バッキンガム、ウィンザーは、中心となる同軸型ユニットが、他のタンノイのシステムのものとは違うだけでなく、
エンクロージュアのつくりも、アーデンが、エンクロージュアの剛性を、あえてそれほど高くしないことで、
適度なブーミングを意図的にねらっているとしか思えない、やや緩めといえるつくりに対して、
バッキンガム、ウィンザーのつくりは、同じメーカーの、同じ時期の製品とは思えないほど、
ロックウッドのMajorシリーズのエンクロージュアを意識したかのような、
ひじょうにしっかりとしたものに仕上っている。

パーティクルボードを主として使っているが、積層構造で、外装から、
VENEER(ツキ板)、PARTICLE BOARD(パーティクルボード)、VENEER、
BITUMEN LAYERS(アスファルト層)、PARTICLE BOARD、
BITUMEN LAYERS、ABSORBTION FORMとなっている。

外形寸法は、アーデンが幅60×高さ95×奥行き37cm、
バッキンガムは幅60×高さ117.5×奥行き45.4cmと、大きな差はないのに、
バッキンガムは95kgと、アーデン(43kg)の2倍以上の重量だ。
バッキンガムは、25cm口径の同軸型ユニットに、30cm口径のウーファーが2本、
アーデンは38cm口径の同軸型ユニットが1本と、ユニット総重量の違いはあるものの、
バッキンガムのエンクロージュアは、重くしっかりとつくられている。

おそらくタンノイの歴史の中で、バッキンガム以前で、これほど高剛性のエンクロージュアは存在しない。
タンノイは、ワイドレンジ化にあたって、単にウーファーを追加しただけでなく、
まったく新規に、細部を再検討していることが、うかがえる。

Date: 7月 7th, 2009
Cate: TANNOY, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その30)

タンノイがハーマングループだったころ、1977年に、バッキンガムとウィンザーが出た。
同軸型ユニットを中心としながらも、ウーファーを追加しワイドレンジ化を図ったシリーズである。

これらに使われた同軸型ユニットの口径は25cmだが、イートンに採用されていたHPD295Aではなく、
新たに開発されたユニットで、従来のタンノイの同軸型ユニットが、
ウーファーとトゥイーターのマグネットを兼用していたのとは異なり、
フェライトマグネットを、ウーファー用、トゥイーター用とそれぞれ独立させている。

さらにトゥイーター・ホーンの開口部には、JBLのスタジオモニターの影響からなのだろう、
音響レンズがとりつけられている。

そのこともあって、ウーファーのコーン紙はストレートになっている。
これまではカーブドコーンがトゥイーターのホーンの延長の役割を果していたが、
音響レンズの存在によって、この、いかにもイギリス的な発想による合理的な構造は変更を受けてしまってた。

クロスオーバー周波数は、従来の同軸型ユニットが1kHzなのに対し、
バッキンガム、ウィンザー搭載の新型ユニットは、3.5kHzとかなり高くなっているのは、
ウーファーをホーンの延長として使っていないためである。

Date: 12月 9th, 2008
Cate: ALTEC, ワイドレンジ, 瀬川冬樹

ワイドレンジ考(その29)

先に書いているが、Model 19と604-8Hから、アルテックは、システムは2ウェイ構成ながら、
多素子のネットワークによって3ウェイ的レベルコントロールを実現している。

BBCモニターのようにレベルコントロールはないものもあるが、この多素子のネットワークで、
スピーカーシステムのトータルの周波数特性をコントロールする(ヴォイシング)手法は、
イギリスのスピーカーが、以前から得意としているところである。
BBCモニターもそうだし、タンノイのスピーカーもかなり以前からそうである。

Model 19の、レベルコントロールをいじったときの周波数特性が発表されている。
中域のツマミを反時計回りにいっぱいにまわし、高域のツマミを時計回りにいっぱいにまわす、
この時の周波数特性は2kHzが約10dB近く下がる。その上の帯域は徐々にレベルが上がる。

瀬川先生が、6041、620Bのレベルコントロールをどのように調整されたかはわからないが、
かなり大胆にいじっておられたことは書かれていた。
上の周波数特性からもわかるように、おそらく中域をかなり絞り、高域はある程度あげることで、
瀬川先生が苦手だった中域の張りの抑えられるとともに、
BBCモニター的なヴォイシングに、自然とそういう音にもっていかれたのだろうか。

実は、604-8KS(604-8Hのフェライトモデル)がはいった612Cを、一本だけ所有している。
モノーラル専用なわけで、同じようにレベルコントロールをいじっている。

「瀬川冬樹氏のこと(その9)」に書いたように、
瀬川先生は620Bに、アキュフェーズC240とマイケルソン&オースチンのTVA1を組み合わされている。
架空の話になってしまうが、瀬川先生がクレルのPAM2とKSA100のペアを聴かれていたら、
絶対アルテックの620Bか6041と組み合わされていたはずだ。

Date: 12月 3rd, 2008
Cate: ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その28)

アルテックの6041にはモデルというか、前例がある。
1977年に日本に登場したUREIの813だ。

アルテックの604-8Gのマルチセルラホーンを、UREI独自のホーンに交換し、
さらに604-8Gのウーファーとトゥイーターの振動板の位置ズレをネットワークで補正、
サブウーファーを加えることで、アルテックの620Aよりもワイドレンジになっている。

同軸ユニットを中心にして、サブウーファーとトゥイーターを追加してワイドレンジ化を図る手法は、
指向性の問題を考慮すると、意外と有効なのだろう。

1980年にはパイオニアから同軸4ウェイユニットによるS-F1が登場している。
平面振動板のメリットを活かして、振動板の位置を揃えることに成功している。
ただしボイスコイルの位置は、揃っていなかったと記憶している。
ボイスコイルの位置を揃えた同軸型ユニットは、KEFのUniQが最初のはずだ。

S-F1搭載の4ウェイ同軸型ユニットは、
世の中にないものを生み出してやろうという技術者の意地を感じさせる意欲作だが、
製造はかなり困難だったように想像する。

カバッセのラ・スフィアのように、
3ウェイ同軸型ユニット+ウーファーという構成が(価格のことは置いておいて)現実的なのかもしれない。

KEFは、1999年にThe Maidstone で、UniQ搭載のフラッグシップモデルを開発している。
システム構成は5ウェイで、UniQユニットは400Hzから12kHzまで受け持つ。

タンノイからも、その3年前にキングダムを発表している。
同軸型ユニットが受け持つ帯域は、100Hzから15kHz(キングダム12のみ16kHz)。

ドイツのELACも、X-JET COAXという独自の同軸型ユニットを開発し、400Hz以上を受け持たせている。

これから先、同軸型ユニットを中心にまとめあげたシステムが増えてくるのかどうかはなんともいえないが、
すくなくとも水平・垂直両方向の指向性の問題に対する解答のひとつであるのは確かである。

Date: 12月 3rd, 2008
Cate: 6041, ALTEC, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その27)

アルテックの6041のユニット構成は、604-8H同軸ユニットに、
サブウーファーとして416-8BSW(低f0の416-8B)に、トゥイーター6041STを組み合わせている。

瀬川先生も指摘されていたが、トゥイーターの質感に、やや残念なところがある。
詳しくは書かないが、6041STはアルテック純正のトゥイーターではなく、他社製のOEMである。

6041はその後、フェライト化された604-8KSと416-8CSWに変更された6041IIになるが、
JBLの4343が、4350をリファレンスとして、4341から確実な改良を施されて、
システムとしての完成度を高めているのから見ると、
6041はそのものが急拵えの感を拭えず、しかも地道な改良が施されたわけでもない。

同軸型ユニットにこだわりつづけているタンノイが、キングダムで高い完成度を実現したのを見ると、
もしアルテックが6041に本腰をいれていたら……、と思わずにいられない。

Date: 12月 3rd, 2008
Cate: 6041, ALTEC, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その26)

アルテック、はじめてのワイドレンジ設計のModel19について、瀬川先生はこう書かれている。
     ※
604Eをオリジナルの612Aエンクロージュアごと(あの銀色のメタリックのハンマートーン塗装は素敵だ)入手して聴いていたこともあるが、私にはアルテックの決して広いとはいえない周波数レンジや、独特の張りのある音質などが、どうも体質的に合わなかったと思う。私の昔からのワイドレンジ指向と、どちらかといえばスリムでクールな音の好きな体質が、アルテックのファットでウォームなナロウレンジを次第に嫌うようになってしまった。
しかし最近、モデル19を相当長時間聴く機会があって、周波数レンジが私としてもどうやら許容できる範囲まで広がってきたことを感じたが、それよりも、久々に聴く音の中に、暖かさに充ちた聴き手にやすらぎをおぼえさせる優しさを聴きとって、あ、俺の音にはいつのまにかこの暖かさが薄れていたのだな、と気がついた。確信に満ちた暖かさというのか、角を矯めるのでない厳しさの中の優しさ。そういう音から、私はほんの少し遠のいていて、しかし、それが私のいまとても欲しい音でもある。おもしろいことにJBLが4343になってから、そういう感じを少しずつ鳴らしはじめた。私が、4341よりも4343の方を好ましく思いはじめたのも、たぶんそのためだろう。もっと齢をとったら、もしかして私もアルテックの懐に飛び込めるのだろうか。それともやはり、私はいつまでも新しい音を追ってゆくのだろうか。
(ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ ALTEC」号より)
     ※
いま読むと、ひじょうに興味深いことを書かれている。
その瀬川先生が、6041をどう評価されていたかは、ステレオサウンド 53号をお読みいただきたい。
手元にその号がないので、引用したいところだが残念ながら無理。

記憶では、レベルコントロールを大胆にいじることが前提だが、かなり高い評価だったはず。

アルテックはModel19、マルチセルラホーンからマンタレーホーンになった604-8Hから、
2ウェイ構成ながら3ウェイ的なレベルコントロールが可能なネットワークになっている。
604-8Hを搭載した620Bに関しても、瀬川先生は、レベルコントロールを積極的にいじることで、
ご自身の音に仕上げられる可能性を感じた、という趣旨の記事を書かれている。

Date: 12月 3rd, 2008
Cate: 6041, ALTEC, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その25)

マルチウェイ化にともなう水平・垂直両方向の指向性の不整合に対する解答のひとつが、
同軸ユニットだと私は捉えている。
そして同軸ユニットをうまく使うことが、4ウェイのシステムへの、解答のひとつでもあろう。

4343が日本で爆発的に売れていた時期に、アルテックから6041が登場した。
型番から推測できるように、アルテックの代表的なユニット604を中心にまとめあげた、
同社としては初のワイドレンジ指向のスピーカーである。

JBLが積極的にユニットを開発し、それらを組み合わせて3ウェイ、4ウェイと、
多マルチウェイ・システムを構築しワイドレンジを実現していくのに対して、
アルテックは、小改良をユニットに施すことで、少しずつではあるが確実にレンジを広げてきた。

6041の数年前に登場したアルテックのコンシュマーモデルのModel19とModel15は、
やはりアルテック伝統の2ウェイ構成である。
どちらも、高域用ドライバーに、断面がミカンを輪切りにしたような形を持つフェイズプラグを採用、
さらにネットワークによる周波数コントロールも併せることで、
従来のアルテックの2ウェイ・システムがなだらかに高域が落ちていくのに対して、
20kHzまでほぼフラットを実現するとともに、アルテックならではの高能率もほとんど犠牲にしていない。

厳密に言えば、ネットワークで周波数コントロールを行なっている分、
同様のユニット構成のA7と比較すると、やはり能率は、少しだが下がっている。

Date: 12月 2nd, 2008
Cate: ワイドレンジ, 井上卓也

ワイドレンジ考(その24)

スピーカーのワイドレンジ実現のための有効な手段のひとつが、マルチウェイ化だ。
フルレンジよりも2ウェイ、2ウェイよりも3ウェイ、そして現実的には4ウェイが限界だろう。

周波数レンジの拡大だけでなく、それぞれのユニットを良好な帯域のみで使用することで、
低歪化も狙えるし、最大出力音圧レベルの点でも有利になる。

井上先生──ことわるまでもないが、私にとって井上先生は、井上卓也氏のこと──が、
「2ウェイは二次方程式、3ウェイは三次方程式、4ウェイは四次方程式みたいなもので、
解くのがだんだんと難しくなってくる」とよく言われていたのを思い出す。

4ウェイとなると、同軸ユニットを使わない限り、最低でも4つのユニットが必要になり、
ユニットの口径も、4343を例にあげれば、ウーファーは38cm、
トゥイーターの2405のダイヤフラムの口径は1-3/4インチとかなりの開きがある。

これだけ大きさの異るものをどう配置するか。
定位の再現性を考慮すれば、できるだけ個々のユニットは近づけたいが、
それぞれのユニットの音響面を少しでも理想的にするには、
そしてユニット同士の干渉──音響面だけでなく磁気的な面も含め──を減らすには、
ユニット間の距離は逆に広げたい。

問題になるのは、指向性である。水平方向の指向性は確保できても、
垂直方向の指向性をほぼ均等に保つことは、かなり難しい。

Date: 10月 18th, 2008
Cate: ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その23)

バイワイヤリング対応のスピーカーを鳴らす際、スピーカーケーブルが2組用意できれば、
そのままバイワイヤリング接続をすればいいが、1組だけのとき、
2組あるスピーカー端子のどちら(ウーファー側かトゥイーター側か)にケーブルを接くか。

もちろん最終的には両方の音を聴いて、好ましい方を選べばいいのだが、
最初に音を出すときは、当然だが、どちらかを選んで接がなければならない。
なかにも、ケーブルのプラスをウーファー側に、マイナスをトゥイーター側、
もしくはその逆に接ぐ人もいるが、ふつうはウーファーかトゥイーター側のどちらかだろうし、
それはいつまで聴いて好ましいことが多かった方を、自然と選ぶものだろう。
無頓着に、そのときの気分で、という人はあまりいないだろう。

私はと言うと、100%、ウーファー側に接続する。
これまでいろんなスピーカーで試してきた結果から、ウーファー側を選んでいる。

基本はウーファー側に接ぐ、というのが、私の中にはあるし、
ほとんどの人がそうだと勝手に思い込んでいた。

ところが、意外にトゥイーター側を選ぶ人が多いことに、2年ほど前に気がついた。
しかも、その人たちが、私よりも10歳くらい若いということにも。
もちろん私よりも上の世代で、トゥイーター側を最初に選ぶ人も、極端に少ないけどいる。
とはいえ、私のまわりでは、ウーファー側を選択する人がほとんどだ。

どうも、このことは聴く音楽のジャンルとは関係ないようだ。
世代による違いと関係がある、と私のまわりの人たちだけを見ての感じではあるが。

それであれこれ考えて、私なりの結論が、
もしかすると中心周波数の630Hzが、
育ってきた環境によって上の周波数にズレてしまったのではないか、である。

Date: 10月 18th, 2008
Cate: ワイドレンジ, 瀬川冬樹

ワイドレンジ考(余談)

周波数帯域以上にワイドレンジ化していると感じられるのが、昨今のオーディオの機器の価格の幅。

熊本のオーディオ店でのイベントで瀬川先生が、
オーディオ機器の価格帯についても、40万の法則と同じようなことが当てはまると、
と言われたのを思い出した。

当時はカタログ誌のハイファイ・ステレオガイドが出ていた。
これに掲載されているオーディオ機器の最低価格と最高価格の積の平方根が、
そのジャンルのオーディオ機器の中心価格であり、
その価格の前後の価格帯が、価格と音質向上の度合いが比例関係にある、という内容だった。

横軸を価格、縦軸を音質向上の度合いに設定したグラフを描くと、
中心価格帯のところは、45度以上の急な直線だが、
その価格帯を外れると、上も下もゆるやかなカーブに移行する。

中心価格帯からはずれた、より高額な価格帯は、カーブが寝てきて、
価格をかけた割にはそれほど音質は向上しない、つまり飽和状態に近くなるし、
また反対に下の価格帯にも同じことが言える、とも。

最近では、極端に高価格のモノが存在するが、
いちおう同価格帯でいくつもの候補が存在するまでを最高価格として、
最低価格は、オーディオマニアが使えるギリギリのモノとしてする。
今はカタログ誌がないから、価格の参考になるのは、冬に出るステレオサウンドのベストバイの号か。

ベストバイに選ばれた機種の最低価格と最高価格の積の平方根を、
それぞれのジャンルで出してみたあとで、どういうモノが選ばれているか、
製品分布はどうなっているかをチェックしてみるのもおもしろいだろう。

Date: 10月 18th, 2008
Cate: ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その22)

幼い頃から耳にしている再生音(スピーカーからの音)は、テレビやラジオの音がいちばん多いと思う。
最近ではテレビのない家庭も増えていると聴くから、一概にそうとは言えないだろうが、
私と同世代、もしくは上の世代の人には、やはりテレビ、ラジオの音を、
意識するしないに変わらず、もっとも長く聞いてきていると思う。

そのころのテレビといえばモノーラルだったし、
ラジオについていたスピーカーもフルレンジ一発だった。

ところがテレビの音声多重放送がはじまりだして、
テレビのスピーカーがフルレンジから安っぽいトゥイーターをつけた2ウェイが現われ出したし、
ラジカセもステレオが当然になり、フルレンジから、
これも品のないトゥイーターを付け足したモノがあっという間に増えた。

レンジが広がり、音の品位が向上するのならいいが、
そういったテレビ、ラジカセの存在を私は知らない。
特にラジカセで、一時期流行ったスタイル──アザラシの死体のような外観の、
黒くてぶざまな製品から出てくる音のひどさといったら……。

アザラシの死体、という例えは、どなたの発言だったか忘れてしまったが、ぴったりの表現だと思う。

存在を強調するように鳴るトゥイーターがついたテレビの音、ラジカセの音を、
幼い頃からずーっと聞いてきたとしたら、
もしかすると、人の体にある630Hzという基準が高い方にズレてしまう気がする。
大きく40万の法則から外れた音に馴染んでしまうことによって。
私の勝手な推測にすぎないことは断っておく。

なぜ、こんなことを思うようになったかといえば、
バイワイヤリング対応のスピーカーの接続の例を、いくつか見てからである。