Archive for category 映画

Date: 10月 17th, 2016
Cate: 映画

映画、ドラマでのオーディオの扱われ方(その1)

2002年の香港映画「インファナル・アフェア」の冒頭には、
香港のオーディオ店でのシーンがある。

「いいケーブルを使えば、いい音が得られる」とか、
「レトロな曲には、こっちのケーブルの方があう」とか、
そんな会話がなされているシーンだ。

オーディオ機器が、ワンシーンだけとか小物として登場する映画やドラマは、けっこうある。
マッキントッシュのアンプは割とよく登場する。
比較的最近ではアメリカのテレビドラマ「CSI」にも、マッキントッシュが登場していた。

テレビドラマ版の「マイノリティ・リポート」には2065年のアナログプレーヤーが出てくるし、
映画「ダークナイト」にはB&OのBeoLab 5が使われている。

「ダークナイト」での、主人公ブルース・ウェインの屋敷が焼失した後の住い、
マンションでのBeoLab 5は、いかにも、という感じでぴったりくるけれど、
「CSI」でのシーズン9までの主任だったギル・グリッソムの自宅のマッキントッシュは、
少し合わないような感じがした。

映画、ドラマでのオーディオ機器の選択は、どれだけ考えられて行われているのだろうか。
今回改めてそう思ったのは、アメリカのテレビドラマ「グリッチ」に登場するオーディオ機器が、
2015年制作の、時代設定も新しいにも関わらず、
主人公の自宅にあるのは、古いオーディオ機器であったからだ。

そこにはCDプレーヤーは映っていなかった。
アナログプレーヤー(型番はわからず)とアンプとチューナーとスピーカーである。

しかもアンプはラックスのSQ38Fである。
SQ38FDでもなければFD/IIでもなく、SQ38Fである。
1968年ごろのアンプが、どうしてだか登場している。
チューナーもラックスのT300。

この選択は、なかなか異色である。

Date: 4月 27th, 2016
Cate: 映画

「兼子」という映画

兼子」という映画が、YouTubeで公開されている。

柳兼子。
この名前を知ったのは、いまから40年ほど前のステレオサウンドに載っていた広告だった。
オーディオラボの広告に、柳兼子の名前と写真を初めて見た。

オーディオラボのレコードはほとんどがジャズだった。
一部クラシックもあったけれど、それでも柳兼子氏のレコードは、少し異色に思えた。

機会があれば聴いてみたい、とは思っていたけれど、
それ以上積極的に聴こうとは思わず、ずっとそのままだった。

柳兼子氏がどういう人なのかを知ったのは、ずっと後だった。

「兼子」はレコードがかかっているシーンで始まる。
ここで映っているアナログプレーヤーは、すぐにどのモデルなのかわかるし、
柳兼子氏のレコードがオーディオラボから出ていたということは、
録音を手がけられたのは菅野先生であり、
最初に登場してくるアナログプレーヤーは、菅野先生所有のモノだとわかる。

「兼子」はドキュメンタリー映画である。
多くの人が登場する。

心ある人に観てもらいたい映画である。

Date: 3月 19th, 2016
Cate: 映画

映画で気づくこと

映画を観ていて気づくことは多々ある。
ブルースチールもそうだし、Blue Steelに別の意味があることを、
やはり別の映画「ズーランダー」で知る。

数ヵ月前に「サタデー・ナイト・フィーバー(Saturday Night Fever)」をやっと観た。
1978年当時、話題になっていた。
でも近所の映画館では上映されていなかったし、
「サタデー・ナイト・フィーバー」を観るために、
往復で映画の入場料金をこえる金額を交通費に払えるだけの余裕もなくて、そのままずっと来ていた。

やっと観たのはHuluで公開されたからだった。
勝手にイメージしていた内容とはかなり違った映画だった。
「こういう映画だったか」と思いながら観ていた。

ジョン・トラボルタが演じるトニーがダンスコンテストに出る。
会場となったディスコには、アルテックのA7が登場する。

この時代、アメリカのディスコではA7が鳴らされていたのか、と早とちりしそうになったが、
おそらくこのアルテックのスピーカーは、1236のはずだ。

“MUSICAL SOUND LOUDSPEAKER SYSTEM”の名をもつこのシステムは、
ウーファーは421-8LF、ドライバーには808-8B、ホーンは511B、
ネットワークはN1209-8Aから構成されている。

A7、A5が”The Voice of the Theatre System”の愛称で呼ばれるとおり、
トーキー用のスピーカーシステムとして開発されたのに対し、
1236はディスコなどでの使用を考えての開発・システム構成である。

もちろんA7の可能性もある。
どちらにしろアルテックのシステムである。
それまでアルテックとディスコ・サウンドと結びつくことはなかったけれど、
そういう時代もあったのか、と思っていた。

Date: 10月 13th, 2014
Cate: 映画

オーケストラ!(Le Concert)

通俗名曲と言葉があって、
どの曲を思い浮べるかは、人によって多少の違いはある。

私が通俗名曲としてすぐに思い浮べるのは、惑星、新世界、幻想などがあり(他にもけっこうある)、
チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲もそうだ。

五味先生の書かれたものを読んで、ベートーヴェンの後期の弦楽四重奏曲、
後期のピアノソナタをいきなり聴いても、なにかすごい、ということだけは感じても、
一曲聴き通すだけでもしんどいことだったし、よさがわかっていたわけではない。

だからといって、そのころにこれらの曲を聴く必要がない、というわけではなく、
一度は聴いておくべきだと思う。

そんなベートーヴェンの後期の曲にくらべれば、通俗名曲と呼ばれるものは耳に馴染みやすいメロディがある。
難解な曲とは感じられない。よさが感じられやすい。

でも、頭のどこかに通俗名曲ということがひっかかっている。
そのためか、聴かなくなるようになっていった。
チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は、どこかで耳にすることはあっても、
自分のシステムでかけることはなくなってしまっていた。

2009年に公開された「オーケストラ!(Le Concert)」という映画がある。フランスの映画だ。
この映画のクライマックスはチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の演奏シーンである。

いい映画だと思う。2010年の公開時に映画館で観た。今日、二回目の鑑賞。
二回目だから、ストーリーはすでにわかっている。
それでも演奏シーンには感じるものがあった。チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲のよさに、気づいた。
若いころに感じていたよさももあるし、そのころは感じえなかったよさもあった。

それは映画のストーリーもいくぶん影響してのことだとはわかっていても、
それでもいいではないか、といまは思える。

Date: 2月 3rd, 2012
Cate: 映画

映画「ピアノマニア」(続々続・観てきました)

何度か私も書いていることであるし、他の人も同じことを語られたり書いてたりすることに、
同じ場所で同じ時間に、ある音を聴いても同じ音として聴き取っているわけではない、ということがある。
このことは何度か経験してきたことでもある。

人ひとりひとり感性が違うから、それにわずかとはいえ同じ場所に坐って聴くことは不可能だから、
物理的にも音の変化があるのだから、違って聴こえて当然、ということがいえるといえばいえる。

映画「ピアノマニア」での、
ピアニストのピエール=ロラン・エマールとスタインウェイの調律師、シュテファン・クニュップファーの、
「フーガの技法」に必要なピアノの音色についてのやりとりを観ていると、
このふたりは、同じ音を聴いていることに気がつく。

ピアニストと調律師という立場の違いもあるし、
クニュップファーは必ずしもピアノの前(ピアニストの位置)で音を聴いていると限らない。
それでも、このふたりが同じ音を聴いていることは、ふたりの対話からわかる。

結局、スピーカーからの音を聴いて、ひとりひとり感じ方が違うのは当然のことといえると同時に、
違うのは、聴く人のレベルが違いすぎているから、ともいえる。
はっきり書けば、それは未熟だからこそ、違って聴こえる。

と同時に、このブログを書き始めたころの「再生音とは……」に書いたこと──、
「生の音(原音)は存在、再生音は現象」からなのかもしれない、とも思えてしまう。

Date: 1月 24th, 2012
Cate: 映画

映画「ピアノマニア」(続々・観てきました)

日本ではやっと上映がはじまった「ピアノマニア」だが、
本国ドイツのサイトを観ると、すでにDVDとBLU-RAYが発売されているし、
さらにiTunesStoreにもラインナップされている(ただしいまのところ日本からは購入できない)。
日本語字幕を必要としない方ならば、それにパソコンで観るのであればドイツのAmazonから購入でき観れる。

日本ではいつになるのかわからないけれど、
発売されたら購入してもういちど観て確かめたいところがいくつかある。
それは、音の変化に関して、である。
いくつかは観ていて気がついたが、いくつかはわかりにくいところもあった。
そこうもういちど、ひとりでじっくりと観て聴きたい。

調律師のクニュップファーが、エマールがモーツァルトのピアノ協奏曲の弾き振りのためあるものを発明する。
その発明品の音の効果の表現は、届くか届かないか、であり、これに関してははっきりと違いを聴きとれる。
こういうところを聴いているんだな、ということもわかってくる。
他にもいくつかそういうところがある。その意味では勉強的要素もある映画だ。

それに非常に興味深い、クニュップファーの発言もあった。
低音から高音まで音のバランスが均一であることに神経質なピアニストが弾いた後のピアノは、
より音のバランスが均一に揃っている、という。

Date: 1月 24th, 2012
Cate: 映画

映画「ピアノマニア」(続・観てきました)

上映中に、何度も笑いが起きる。
私も何度か笑っていた。
ただその笑いは、他の観客と同じ笑いでもあったし、苦笑いでもあった。

65席しかないシネマート2の座席は、半分くらいは埋っていた。
このうちの多くは、オーディオマニアではない、と思う。
オーディオマニアなら、苦笑いしかできないところがいくつか出てくる。
それに、オーディオマニアなら苦笑いしたくなるけど、オーディオマニアでない人にはそうではないところもある。

観ていると、設定を少し変えるだけで、「オーディオマニア」という映画になりそうなくらい、
「ピアノマニア」に登場している人たちの、ピアノの音に対する、その追い求め方は、
オーディオマニアとなんら変ることはない。

ピアニストと調律師のやりとり、そこに出てくる音の表現。
オーディオマニア同士のやりとりそのまま、とも感じられる。
クニュップファーがピアノに試すあれこれをみていると、
スピーカーシステムに対するあれこれと完全にダブってくる。
ピアノがスピーカーシステムになれば、同じことをわれわれオーディオマニアはやっている。

オーディオマニアは、「ピアノマニア」を観れば嬉しくなるだろう。
でも、オーディオマニアでない人たちは、どうなんだろうかと思う。

「ピアノマニア」を観れば、ピアニスト、調律師、録音スタッフ。
音楽に関わっている人たちは音に対して、つねに真剣である。

そうやって演奏された・録音されたものを、相応しい態度で聴いているといえるのだろうか。
音に対して真剣でない聴き方をしていることに気がついているのだろうか。
オーディオマニアは音ばかり気にして、音楽を聴いていない、という人がいる。
そんな人も「ピアノマニア」を観ているのかもしれない。そして、何を感じ何を思っているのだろうか。

Date: 1月 24th, 2012
Cate: 映画

映画「ピアノマニア」(観てきました)

東京でも上映しているのは新宿のシネマートのみ。
シネマートはいわゆるシネコンで、スクリーン数は2つ。
シネマート1は席数335、シネマート2は席数65。
ピアノマニア」は、シネマート1と2の両方で上映している。
ただし上映時間によって、シネマート1(10:00と12:05の回)、シネマート2(14:55、19:20の回)となる。
ただしこの上映スケジュールは1月27日までのもで、28日以降については変更の可能性あり。

できれば335席のシネマート1で観たかったのだが、いつまで上映しているのかもはっきりしていないし、
平日の午前中は難しいので、19:20の回を、今日観てきた。

席数65ということから、スクリーンはかなり小さいものと予想していたけど、
実際に劇場に入ると、「小さいなぁ」と思う。うしろの席からも「スクリーン、小さいね」という声がきこえてきた。
あたりまえだが、シネマート1で観るのとシネマート2で観るのと、入場料金は同額。
正直、映画が始まるまでは、やっぱりシネマート1で観たかったなぁ、などと思っていたけれど、
はじまってみると、スクリーンの小ささはさほど、というよりもまったく気にならない。

むしろ映画の内容からすると、あまり大きなスクリーンよりも、
ほどほどのサイズのスクリーンのほうが向いているかも、と思えてきた。

「ピアノマニア」はドキュメンタリーである。
主人公というか主役は、スタインウェイの調律師、シュテファン・クニュップファー。
そして、もうひとりピアニストのピエール=ロラン・エマール。
ほかにアルフレート・ブレンデル、ラン・ランなども登場してくる。

描かれているのはエマールの「フーガの技法」の録音に関することが中心となっている。
エマールの「フーガの技法」のディスクは4年前に出ている。
この「フーガの技法」は、こういう過程を経て録音されたのか、と、
すでにこのディスクを聴いている人ならばより興味深く感じられるはず。
まだ聴いていない人なら、聴いている人も、「ピアノマニア」を観終ったあとは、
エマール、クニュップファーが追い求めていた音をどれだけ再現できているのか、と聴きたくなる、と思う。

Date: 1月 20th, 2012
Cate: 映画

映画「ピアノマニア」

明日(1月21日)から公開される映画「ピアノマニア」。
見逃せない、と思っている。