Date: 11月 1st, 2014
Cate: ジャーナリズム

オーディオにおけるジャーナリズム(ウィルソン・ブライアン・キイの著書・その2)

ウィルソン・ブライアン・キイの「メディア・セックス」は、目につく本だったからすぐに購入して読んだ。
「メディア・レイプ」も読んでいるけれど、どちらも手元にない。
誰かに貸したままになっている。

こういう時代になっているから、もう一度読んでおこうかな、と思いながらも、
二冊とも書かれている内容をほとんど憶えていない。
内容よりも、「メディア・セックス」、「メディア・レイプ」というタイトルの方が印象が強く、
タイトルだけをいまでもふいに思い出すことがある。

だから、この項で書くことは本の内容とは関係のないことになるだろう。
あくまでも「メディア・セックス」、「メディア・レイプ」に対してのことになると思う。

私が上京した1981年ごろの電車では、文庫本か新聞を読んでいる人が目についた。
そこにいつのころからかマンガ週刊誌が加わった。
少年ジャンプの発行部数が600万部を超えたころの月曜日の電車は、
男性に限ってではあったが、学生も社会人も少年ジャンプを熱心に読んでいた。

これが発行部数600万部による現象なのか、と思っていた。
ステレオサウンドで働きはじめたころ、電車でステレオサウンドを読んでいる人をみかけると、うれしかった。
でもそのころでもあまり見かけることはなかった。
いまでは電車でステレオサウンドを読んでいる人をまったくみかけなくなった。

少年ジャンプとステレオサウンドの発行部数を比較する方が無理というもので、
いまでは300万部くらいらしいが、それでも少年ジャンプの発行部数はすごいと思う。

部数の減った少年ジャンプ(に限らずマンガ週刊誌)にとってかわったのが携帯ゲーム機であり、携帯電話だった。
それもいまではスマートフォンに取って代られている。

文庫本は文字だけ、といっていい。新聞には写真もあるが文字が圧倒的に占めている。
マンガは絵と文字で、巻頭の数ページはカラーだが、これらは基本的にモノクロである。

スマートフォンが表示できるのは文字だけではない。絵も写真も動画もフルカラーで表示でき、音楽も聴ける。
しかも音楽を聴きながら、画面では何かを読むこと(表示すること)もできる。

スマートフォンを触ってなくとも、東京の電車(山手線、中央線など)では、
ドアの上に液晶画面がついていて、ニュースやコマーシャルなどを常に流している。

Date: 11月 1st, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その6)

年月が経って思うことはもうひとつある。
ターンテーブルシートを交換した時、トーンアームの高さだけは調整した。
針圧、インサイドフォースキャセラーに関してはいじらなかった。
けれど、これでは厳密な意味での比較試聴には不十分である。

針圧も調整し直し、インサイドフォースキャセラーについても同じである。
再調整して、調整前と同じ針圧、キャンセル量となることもあるだろうし、変ることもある。

アナログディスクは剛体ではなく弾性体である。
だから針がトレースした直後は溝がわずかだが変形する。
この変形はしばらくすると元にもどる。

ということはアナログディスクという塩化ビニール盤も、わずかとはいえダンパーと見做すことができる。
ウェストレックスの10A、ノイマンのDSTといったカートリッジには、ダンパーと呼べるパーツが使われていない。

10AもDSTも、一般的なカートリッジとは異る発電構造をしていることもダンパーの有無に大きく関係している。
だからカンチレバーの根元に発電コイルとダンパーをもつ一般的な構造のカートリッジは、
10AやDSTほどにはアナログディスクをダンパーとは見做していないだろうが、
それでもアナログディスクの素材の特質からしてダンパーとして働いている、とみていいだろう。

ならばアナログディスクとターンテーブルシートプラッターの間にあるシートも、
その材質によってダンパー的といえるようになるのではないか。
つまりシートの硬軟によって、適正針圧に微妙に影響するわけで、
そうなるとターンテーブルをシートを交換するのであれば、
つまり比較試聴するのであれば、厚みに応じてトーンアームの高さを調整するのはもちろん、
音を聴いて針圧とそれにともなうインサイドフォースキャセラーもまた微調整しなければならない。

このことはアナログディスクの厚みについても同じことがいえるはず。
重量盤は通常盤よりも厚みがある。ということはダンパーとして見做した場合、
その分針圧に影響しているはずである。

以前重量盤を聴く際に、トーンアームの高さは調整していたことがある。
だが針圧までは再調整しなかった。
これでは不十分だった。

もっともカートリッジの針圧を、カタログに最適1.5gと書かれてあるからといって、
1.5gにきちんと合わせれば針圧調整は終りでしょう、と思っている人には関係のないことでしかない。

Date: 11月 1st, 2014
Cate: BBCモニター

BBCモニター、復権か(その8)

1981年のオーディオフェアで、もうひとつよく憶えているのはエレクトリのブースだった。
マッキントッシュのXRT20が鳴っていた。菅野先生によるデモだった。
ブースに人がはいりきれないほどで、立って聴いていた。それでも窮屈な思いをしながら聴いた。

この年の6月に出たステレオサウンド 59号の新製品紹介のページで、
菅野先生がXRT20について書かれていた。
その数ヵ月後のオーディオフェアである。
衆目を集めるのは当然とはいえ、オーデックスのブースの人の入り具合がなんとなく悲しく思えた。

本来ならば瀬川先生が鳴らされるはずだったのが無理になったことも重なって、
これが人気のあるスピーカーとさほどでもないスピーカーの違いでもあるという現実だった。

BBCモニター系列のスピーカーシステムは、アメリカのスピーカーシステムからすれば、地味といえた。
それに物量投入という点でも、BBCモニターにはもの足りなさをおぼえていたことは、すでに書いた。
BBCモニターの音に惚れ込んでいる私でもそうなのだから、
BBCモニターの音に魅力を感じない人にとっては、よけいにもの足りなさとなるはず。

それに瀬川先生も書かれているように、クリアーでシャープな音、
いいかえれば最新の音の傾向に馴染んでしまっている耳に、
音のピントを会わせるのに時間が必要だったのかもしれない。

私はそのころは最新の音に馴染む機会はあまりなかったし、
スペンドールのBCIIの音が心のどこかに残っているくらいだったから、
条件的には決していいとはいえない環境で鳴っていたPM510の音に、ピントはすぐに合った。
というよりもとくに合わせる、という意識はなかった。

私には、PM510の音は異色などではなかった。

Date: 11月 1st, 2014
Cate: BBCモニター

BBCモニター、復権か(その7)

ロジャースのPM510を聴いたのは、オーディオフェアでの輸入元であったオーデックスのブースだった。
1981年のオーディオフェアは私にとって初めてのオーディオフェアであったし、
オーデックスのブースでは予定では瀬川先生がPM510を鳴らされる、ということになっていた。

オーディオ雑誌に掲載されていたオーディオフェアの予定表を見ながら、
これだけは絶対に聴き逃せない、と思い楽しみにしていた。
けれど直前に出たオーディオ雑誌に載っていた予定表からは、瀬川冬樹の名前が消えていた。
えっ? と思いつつも、以前の予定表と同じように、その日、その時刻にはPM510のデモが行なわれる。

結局、瀬川先生は来られなかった。
あとで知ることになるのだが、このときすでに入院されていた。

よくインターナショナルオーディオショウの条件はひどい、という人がいる。
出展社のスタッフにも来場者にもいる。
けれど、晴海で行なわれていたころのオーディオフェアの条件は、もっと厳しいものだった。

そんなところで音を聴いて、何がわかるの? という人もけっこう多い。
それでもわかることは、はっきりとある。
1981年のオーディオフェアのオーデックスのブースで、私はPM510を初めて聴いた。

いま思えばさほどでもなかったけれど、それでもステレオサウンド 56号に瀬川先生が書かれた音が、
少なくとも私には聴き取ることができた。

どんな条件で聴いても、自分にとって運命のスピーカーといえるモノであれば、すぐにわかる。
そのことを瀬川先生から聞いたことがある。

そういう存在のスピーカーがあることを感じとれるのが、直感であり、
スピーカー選びで大事なことは、この直感だけでしかない。

どんなに試聴環境を整えようと、自宅でいま鳴らしているスピーカーと時間をたっぷりかけて比較試聴しようと、
それで自分にとって正しいスピーカーが選べるとは限らない。
むしろ誤ってしまう可能性を自分で高めているだけなのかもしれない。

そうやって私はPM510を選んだ。

Date: 11月 1st, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その5)

購入したターンテーブルシートは、アメリカのWATERLOOという会社のPLATTER PADだった。
ヤマハ(当時は日本楽器製造)が輸入販売していたものだった。

素材は、熱可塑ポリエーテル系ウレタンゴムと書いてあった。
厚みは6.5mm。当時使っていたアナログプレーヤーのゴムシートよりも若干厚い。
重量は470g。もった感じでは附属シートよりも重い程度だった。
価格は7500円だった。

色は茶色だったと記憶している。
硬めのシートだったはずだ。
附属シートと取り換える。
厚みが違うのでトーンアームの高さを調整し直して音を聴く。

30年以上前のことだから記憶もぼんやりとしているが、
少なくとも附属のシートよりもいい感じで鳴ってくれた。

それにターンテーブルシートがかわると、プレーヤーの雰囲気も変わる。
これに関しても附属のシートよりもいい感じになってくれたので、満足していた。

このときはジュエルトーンのGL602Jにしなくてよかった、と思っていた。
PLATTER PADは透明ではないから、ターンテーブルプラッターの、いわばボロを隠してくれる。
GL602Jはそうではないのだから。

でも30年くらい経ち、やっぱりGL602Jを買っておけばよかった、と思っている。
GL602Jは川崎先生が手がけられたモノであることを知ったからだ。

Date: 11月 1st, 2014
Cate: BBCモニター

BBCモニター、復権か(その6)

ロジャースのPM510は、ピーエム・ファイヴ・テンと読む。
ピーエム・ゴーイチマルでもピーエム・ゴヒャクジュウでもない。

PM510に惚れ込んだ人に対しては、510(ファイヴ・テン)で通じる。

書いていて思い出した。
以前、PM510をことを話していたら、「ほんとうにファイヴ・テンっていうんですか」と言ってきた人がいる。
揚げ足を取りたい感じだった。
惚れ込んで買ったスピーカーの正しい呼称を間違えるはずがないし、勝手に読み方を考えたわけでもない。

PM510がステレオサウンドに登場したのは56号。
瀬川先生の文章によってだった。

PM510の音を、こう書き出されている。
     *
 PM510は、本誌試聴室と自宅との2ヵ所で聴くことができた。
 全体の印象を大掴みにいうと、音の傾向はスペンドールBCIIのようなタイプ。それをグンと格上げして品位とスケールを増した音、と感じられる。BCIIというたとえでまず想像がつくように、このスピーカーは、音をあまり引緊めない。たとえばJBLのモニターや、国産一般の、概して音をピシッと引緊めて、音像をシャープに、音の輪郭誌を鮮明に、隅から隅まで明らかにしてゆく最近の多くの作り方に馴染んだ耳には、最初緊りがないように(とくに低音が)きこえるかもしれない。正直のところ、私自身もこのところずっと、JBL♯4343の系統の音、それもマーク・レヴィンソン等でドライヴして、DL303やMC30を組み合わせた、クリアーでシャープな音に少々馴染みすぎていて、しばらくのあいだ、この音にピントを合わせるのにとまどった。
     *
音の傾向がBCIIのようなタイプとあったのが、うれしかった。
しかも「グンと格上げして品位とスケールを増した音」である。
BCIIの音に惚れ込みながらも、オーディオマニアとしてモノとしてのBCIIにのめり込めるかというと、
どこが不満というわけではないけれど、もの足りなさをおぼえてしまう。

だからこそPM510の登場と、瀬川先生の文章のこの部分に、待望のスピーカーシステムの誕生(登場)だと思った。

これはもう早く聴きたかった。
実際に聴けたのは一年くらいしてからだった。

Date: 11月 1st, 2014
Cate: BBCモニター

BBCモニター、復権か(その5)

こういう音が好きなんだ、と実感した最初のスピーカーシステムは、スペンドールのBCIIだった。
瀬川先生が熊本のオーディオ販売店に定期的に来られていた時に聴くことができた。
そのとき、もうひとつスピーカーがあった。JBLの4341だった。

このころすでに4341は製造中止になっていて4343に切り替って二年くらい経っていたはずなのに、
なぜか4341だった。
4341はすごいスピーカーだ、と感じた。
けれどその後に鳴らされたBCIIの音に惹かれた。

スピーカーシステムとしての性能の高さは、はっきりと4341が格段にBCIIよりも高い。
けれどどちらの音に惹かれるのか、といえば、BCIIとはっきりといえた。

BCIIも、このスピーカーをつくっているスペンドールも、BBCモニターの流れを汲んでいる。
つまり、この時がBBCモニターの音との出会いだった。

それから一年くらい経って聴いたBBCモニターはLS3/5Aだった。
その前にKEFのModel 105を聴いている。
この時代のKEFのスピーカーシステムも、私にとってはBBCモニター系列に属する音である。
ややきまじめすぎる印象はあるけれど。

ハーベスのMonitor HLも、しばらくして聴いた。
それからロジャースのPM510を聴いた。

BCIIからPM510を聴くまでに、他のスピーカーシステムも聴いてきた。
その中にはイギリスのスピーカーを代表する存在であるタンノイも含まれる。

同じイギリスのスピーカーであっても、BBCモニター系列の音とは違う。
私が惹かれるのは、この時代はBBCモニターの音であった。
BCII、Model 105、LS3/5A、Monitor HL、PM510、
その音を思い出すと(美化されているのだろうが)、グッドリプロダクションとはまさにこういう音であり、
いまも惹かれていることを感じてしまう。

Date: 11月 1st, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その4)

EMTの927Dstはガラス製のターンテーブルシートである。
まだ927Dstの音は聴いていなかったけれど、927Dstがどんなにすごいプレーヤーであるのかは知っていた。

普及クラスのアナログプレーヤーのシートをガラス製にしたからといって、
927Dstに近づけるわけではないことはわかっている。
こんなことは高校生にだってわかる。
それでも気分だけでも927Dstに近づけたい。

だからジュエルトーンのGL603Jにしようと思ったのだった。
けれどガラスということは透明な素材である。
つまりターンテーブルプラッターの上に、GL602Jを置くと、
ターンテーブルプラッターの上面が丸見えになる。
そのことに気づいた。

普及クラスのアナログプレーヤーのターンテーブルプラッターはアルミ製。
仕上げはお世辞にもいいとはいえなかった。
たとえばマイクロのRC5000のようなプレーヤーであれば、
ターンテーブルプラッターに直接レコードを置くことを前提としているため、
プラッターの上面の仕上げも丁寧になされている。

RC5000の上にGL602Jを置くのであれば、何も問題とするところはない。
だが現実に、そのころの私が使っていたのRX5000のような仕上げのプラッターではない。

レコードをのせてしまえば気にならないだろうが、
レコードをかけ替えるごとに、ターンテーブルプラッターのあまりよくない仕上げを見ることになる。
これは気持ちのいいことではないし、GL602Jを買わなかったいちばんの理由である。

Date: 10月 31st, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その3)

トリオのセラミック製のTS10も重量は1.2kgで、ぎりぎりだったが、これは26000円していた。
価格的に候補から外した(というより外れていった)。

サエクかジュエルトーンか。
サエクのSS300は16500円、ジュエルトーンのGL602Jは10000円。
どちらもなんとか買える範囲の価格。

ただサエクのSS300はレコードのレーベルが接触するところにネジ穴が切ってあった。
なんのためのネジ穴かというと、レコードのレーベルに穴を開けて、
レコードをSS300にネジ止めするためのものだった。

SS300を買っても、このネジ穴を使わなければそれで済む話だろうか。
レコードに穴を開ける。それがレーベル面であろうと、そういうことを考えるメーカーのシートを買ってしまったら、
レコードそのものがひどく傷つくような気もしたし、
そんな発想をしてしまうメーカーの製品は買いたくない、というのが強かった。

GL602Jを買おう、と決めていた。
10000円で1kg。価格、重量ともに問題はない。

ゴムや革とは違い、この手の硬質な素材のシートではレコードが傷つきやすくなるのでは、と危惧する人はいた。
私も考えた。
けれど軟らかい素材のシートでも、シート上にホコリがあり、
レコードをその上でスリップさせてしまえば、レコードは傷ついてしまう。
シートが硬いか軟らかいではなく、シートをどれだけきれいにしているか、それとレコードの扱い方である。

このころすでにマイクロの糸ドライヴRX5000+RY5500は登場していた。
RX5000は砲金製のターンテーブルプラッターに、直にレコードを置く。
マイクロという、アナログプレーヤー専門メーカーから、こういう仕様のプレーヤーが出ていたことも、
私の考え方が間違ってないことを裏付けてくれた。

だがGL602Jは、結局買わなかった。

Date: 10月 31st, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その2)

アナログプレーヤー関連のアクセサリーの価格は、ひとつひとつはそれほど高価でなくとも、
あれこれ買っているとそこそこの金額になってしまう。
ならば、アクセサリーに使う分を貯めておいて、
アナログプレーヤーそのものをグレードアップするという考えもある。

それはわかってはいた。
けれど実際にグレードアップした、という手応えが得られるのは、
いま使用している機器の価格の倍程度のモノまでいかなければならない。
五万円のアナログプレーヤーを使っているのならば、
次のステップとしては十万円クラスのモノということになる。

ここで六万円のプレーヤーを買ったところで、音の違いはあっても格の違いはまず得られない。
それにアクセサリーをあれこれ使ってみることで得られることもある、ということで、
カタログを見ては、次はこれにしよう、か、あれにしようか、と迷っていた。

1970年代の終りには、アナログプレーヤーの音に関係してのことがらがオーディオ雑誌の誌面をにぎわしていた。
慣性質量を増すのが効果的とも書く雑誌(オーディオ評論家)もいた。
ただし普及クラスのダイレクトドライヴ型は軸受けが弱いので、それほど重量化は無理だともいわれていた。

それでもできる範囲で試してみたい。
当時すでにゴム以外の素材のターンテーブルシートが登場していた。
鉛もあったし、セラミック、大理石、銅、ステンレス、ガラス、特殊金属などもあった。
これらが、それまで一般的だったゴムシート、セーム革などの軟らかい素材に対して、硬い素材のシートだった。

硬い素材のシートは、軟らかい素材のシートよりも比重があり、重量もある。
大理石、ステンレスのシートは3kg超えていた、銅のシートも1.8kgあった。
普及クラスのプレーヤーを使っていたので、これではあまりにも重すぎる、と判断した。
1kgが上限のような気がしていた(とくに根拠はなかった)。

サエクのSS300(特殊金属、870g)とジュエルトーンのGL602J(クリスタルグラス、1kg)が条件に合っていた。

Date: 10月 31st, 2014
Cate: 情景

情報・情景・情操(8Kを観て・その5)

テレビのいいモノは欲しい、という気持はいつもどこかにある。
FORIS.TVは、だから欲しい、と思った。サイズも私が思うテレビのサイズにぴたりとあう。

私が住いに欲しいと思うのは、あくまでもテレビであり、
100インチをこえるスクリーンを設置して──、というのは感覚としてテレビではなくなる。

そんな私が8Kはすごい、と思っているし、
心底すごいと思っているからこそ、ホームシアターにはほとんど関心のない私が、
いままここにこうして書いているわけである。

8Kを観て、感じたのは、いままでいかに情報量が不足していたのか、ということだった。
相当に不足している状態で、4Kはきれいだ、とか、あれこれいっている。

私は8Kで初めて、必要な情報量が提供されるようになった、と感じている。
だからこそ8Kはすごい、と思うし、8Kが4Kと決定的に異るのは、この点ではないのか。

私は映像の専門家ではないし、知識も素人レベルである。
はっきりしたことは何もいえないけれど、8Kのレベルに達して、
人に必要な情報量について語れるようになるのではないか、と思う。

それまではいかにも不足しすぎていた。
そんな状況でどんぐりの背比べをやっていたようなものだ。

8K以上の情報量が必要なのかは、8K以上のモノが登場してみたいことにはなんともいえない。
16Kがいつ登場するのか、その予測は出来ない。
けれど16Kまではこの目で観たい。

16Kを観て、8Kでもまだ情報量が足りない、ということになるのか、
それとも8Kから上になると、そう大きな違いは生じないのか。

そして、もうひとつ思っているのは、音の情報量に関してだ。
いまわれわれは情報量ということばを、20年前、30年前よりも多く使っている。
ハイレゾ(ハイ・レゾリューションのひどい略し方だ)という言葉も定着してきつつある。

そこに収められる情報量は確実に増している。
けれど、いまのオーディオのレベルは、8Kと同等なのか、それとも4K程度なのか、もっと下なのか。

Date: 10月 31st, 2014
Cate: 素材

羽二重(HUBTAE)とオーディオ(その9)

なぜ木は腐ることがあるのか。
木という素材が呼吸をする素材であるからで、
そのため湿気の多過ぎる環境下では腐っていく。

CRAFT-α9000の振動板に採用されたαウッドは、通常の木が腐ってしまう環境下でも腐らないのだろう。
つまりαウッドは呼吸をしない素材ではないのか。
その意味で、井上先生は「それは、もう木じゃないね」といわれた。

羽二重=HUBTAEの発表会での川崎先生の話の中に、ナイロンのことが出てきた。
ここでも「呼吸しない素材」ということだった。
最新のナイロンはそうではない、ということだった。

呼吸をしている素材だから、場合によっては腐ることもある。
腐るということは素材としての死であり、ならば呼吸をしているということは、素材として生きている──、
そう受けとめることもできる。

いかなる環境下でも腐らない、というのは呼吸をしていない、ということになり、
ならばその木は防腐処理をされた死んだ状態(つまりは生きていない状態)ともいえるわけだ。

生きていない状態の素材でも、それが役に立つこと(箇所)はあるだろう。
だが、オーディオの、それもスピーカーの振動板となると、
本来生きている状態の素材を生きていない状態にしてしまって使うことに、どれだけのメリットがあるといえるのか。

井上先生が話されたことは、そういうことだった。

Date: 10月 31st, 2014
Cate: ジャーナリズム,

賞からの離脱(その48)

ステレオサウンド 50号を手にした時(まだ高校生だった)、
前号の企画をそのまま旧製品を対象にしただけの、すこし安易な企画だな、と思ってしまった。

安易ではあるけれど、面白いと思いながら読んでいた。そして読み返していた。
本づくりを経験したことのない、しかも学生の私に、こう受けとめていた。

けれどいまは、むしろ50号の旧製品のState of the Art賞が先にあり、
この企画をやりたいがために49号での現行製品のState of the Art賞をやった──、
そうとも考えられるくらいに見方が変っている。

旧製品のState of the Art賞は、それまでのステレオサウンドがやってきたことを総括する企画だった。
ただ記事で旧製品をとりあげるのではなく、State of the Art賞を与える。

用意周到だったのか、それともたまたまやったことがそう見えるだけなのか、
ほんとうのところはわからないが、State of the Art賞を始める時期、49号と50号、
用意周到な企画のように思う。

“State of the Art”というセンテンスが定着しなかったこと以外は、State of the Art賞はうまくいった。
けれど”State of the Art”というセンテンスが読者に定着しなかったこと、
さらにはオーディオ業界の人たちのあいだでも定着しなかったことが、
State of the Art賞から始まった「賞」のいくつものところを変質させていくことになる。

現在のStereo Sound Grand Prixになって、変質は決定的となった、と私は感じている。
State of the ArtからStereo Sound Grand Prixへ。
あまりにも変り果てた。

でも、嘆きたくなるのは、State of the Art賞を知っているからであって、
State of the Art賞(49号、50号)を知らない世代にとっては、
なんとおおげさな……、ということになろう。

State of the ArtとStereo Sound Grand Prix、
賞の名称からして、志がまるで違う。

Date: 10月 31st, 2014
Cate: BBCモニター

BBCモニター、復権か(その4)

1983年にステレオサウンドからTHE BRITISH SOUNDという別冊が出た。
この本に岡先生によるBBCモニター物語という記事がある。
この中で、岡先生が書かれている。
《BBCモニターのことを書くべき最適任者は、故瀬川冬樹さんだったと思う》と。
BBCモニターに関心のある人の多く(すべてといっていい)が、首肯いたことだろう。

瀬川先生によるBBCモニター物語、
きっと瀬川先生自身も書きたいと思われていただろうだけに、
読みたかった……、という気持は募る。

岡先生はBBCモニター物語を書くにあたり、
ステレオサウンド編集部から、瀬川先生が渡英の際に入手されたいくつかの資料を借覧されている。

その瀬川資料の中に、BBCモニターの型番のクラシフィケーションの説明があり、
その資料を元に岡先生がLSナンバーの区分について書かれている。
     *
●LS1/ アッセンブルされたラウドスピーカーで、用途は種主あるが主力にはなっていない(現用正式モデルではない)。
●LS2/ シャーシ・ユニットのみのもの。
●LS3/ アッセンブルされたスピーカー(主として外録その他に使用される。可搬性をもつ小型のもの)。
●LS5/ アッセンブルされたスピーカー(スタジオ用)。
 将来は、LS1/、LS2/、LS5/のクラシフィケーションを用いることになり、外録用のLS3/シリーズもLS5/のコード番号のなかに組み込まれることになる、という注記がある。
     *
LS5/9は20cm口径のウーファーとソフトドーム型トゥイーター、
エンクロージュアの外形寸法はW36.0×H55.0×D36.0cm。
本来ならばLS3/8という型番がついても不思議ではないし、
むしろ、その方が、このスピーカーシステムの性格をはっきりとさせると思うのだが、
岡先生が書かれているとおり、LS3/シリーズはLS5/シリーズに組み込まれたことがわかる。

Date: 10月 31st, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その1)

私がオーディオを始めたころはCDはなかった。
当然プログラムソースのメインはアナログディスク(LP)ということになる。
カセットデッキも持っていたけれど、あくまでも補助的な存在であった。
あれば便利な機器という印象が私の場合、最後まで拭えずそれほど真剣に取り組んでいたとはいえない。

アナログプレーヤーに関しては、これが唯一のメインなのだから、
それに当時はプレーヤー関連のアクセサリーが各社からいくつも出ていた。
値段も、当時高校生だった私にも、それほど無理せずとも買える範囲のモノが大半だった。

シェルリード線が各社から出始めていた。
ヘッドシェルも各社から出ていた。素材もアルミだけでなく、いくつかの種類が用意されていた。
カートリッジをヘッドシェルに取り付けるネジも、ヘッドシェルやカートリッジ附属してくるのはアルミ製だったが、
ここでも音が変化するということで真鍮製も発売されていた。

ヘッドシェルは音だけでなく、見た目も重要だったし、
それ以上に指掛けの形状が操作面に大きく関係してくることを実感できるようになると、
自分の感覚に添うヘッドシェルを探すようになってくる。

ヘッドシェルもいくつか試した、シェルリード線も、真鍮製のビスも買った。
このへんはカートリッジ関連のアクセサリーとなる。

アナログプレーヤーのアクセサリーは、ターンテーブル関連のアクセサリーもあれこれあった。
ターンテーブルシート、スタビライザーなどである。
これらももちろん買っていた。