賞からの離脱(その48)
ステレオサウンド 50号を手にした時(まだ高校生だった)、
前号の企画をそのまま旧製品を対象にしただけの、すこし安易な企画だな、と思ってしまった。
安易ではあるけれど、面白いと思いながら読んでいた。そして読み返していた。
本づくりを経験したことのない、しかも学生の私に、こう受けとめていた。
けれどいまは、むしろ50号の旧製品のState of the Art賞が先にあり、
この企画をやりたいがために49号での現行製品のState of the Art賞をやった──、
そうとも考えられるくらいに見方が変っている。
旧製品のState of the Art賞は、それまでのステレオサウンドがやってきたことを総括する企画だった。
ただ記事で旧製品をとりあげるのではなく、State of the Art賞を与える。
用意周到だったのか、それともたまたまやったことがそう見えるだけなのか、
ほんとうのところはわからないが、State of the Art賞を始める時期、49号と50号、
用意周到な企画のように思う。
“State of the Art”というセンテンスが定着しなかったこと以外は、State of the Art賞はうまくいった。
けれど”State of the Art”というセンテンスが読者に定着しなかったこと、
さらにはオーディオ業界の人たちのあいだでも定着しなかったことが、
State of the Art賞から始まった「賞」のいくつものところを変質させていくことになる。
現在のStereo Sound Grand Prixになって、変質は決定的となった、と私は感じている。
State of the ArtからStereo Sound Grand Prixへ。
あまりにも変り果てた。
でも、嘆きたくなるのは、State of the Art賞を知っているからであって、
State of the Art賞(49号、50号)を知らない世代にとっては、
なんとおおげさな……、ということになろう。
State of the ArtとStereo Sound Grand Prix、
賞の名称からして、志がまるで違う。