世代とオーディオ(その2)
私は1963年生れだから、主となるプログラムソースはレコード、
つまりアナログディスク(LP)だった。
カセットテープも使っていたけれど、あくまでも買いたいレコードを、
そうたやすく買えるわけではなかったから、その代りとしてのカセットテープであり、
カセットテープでの録音・再生にそれほど夢中になることはなかった。
一通りの知識はもってはいても、
アナログプレーヤーにあれだけのモノを購入したのにくらべると、
カセットデッキは普及クラスの製品を買うに留まっていた。
ナカミチの1000ZXLの音については、
実際に聴いているから知ってはいたものの、欲しい、という気はまったく起きなかった。
あり余るほどのお金があったとしても、カセットデッキにあれだけのモノを買おうとは思わない。
それは価格の点ではなく、カセットテープを聴くのに、あれほど大袈裟な機械を使おうとは思わないだけであり、
カセットテープに対しての思い入れもないからである。
それにナカミチのカセットデッキには、これは欠点ではないものの、
他社のカセットデッキにくらべて、ひとつまずい(ずるい)点があることも確かである。
カセットテープに録音する。
その録音ずみのテープは自分でのみ聴くこともあれば、誰かに渡すこともある。
それに自分だけで聴くにしても、リスニングルームにて録音したカセットデッキで再生することもあれば、
リビングルームでラジカセで、車のなかでカーオーディオで聴くことだってある。
つまり録音した機器で必ずしも再生するわけではない。
ナカミチのカセットデッキは、音の良さ、性能の高さなどで知られている。
ナカミチのカセットデッキで録音したテープをナカミチのカセットデッキで聴く分には、
たしかに、ナカミチのデッキだけのことはあるな、とおもわせる。
けれど他社製のカセットデッキで再生した場合、首をかしげたくなることがある。
どんなデッキでも録音したデッキで再生することが、いい音で鳴ることが多いけれど、
そこには程度ということがあり、それがあまりにも極端であることは、
テープというメディアを考えた場合には、好ましいこととはいえない。
このところが、ナカミチのカセットデッキは、他社のデッキよりも極端であったと感じられた。