数字からの解放(その1)
マーク・レヴィンソンは1977年にパワーアンプのML2を発表したときに、
実際の使用にあたって必要となる基本的な項目──、
入力インピーダンス、電源電圧と消費電力、外形寸法と重量、こういった項目以外の、
たとえば周波数特性、混変調歪率、高調波歪率、S/N比などの表示を行わない、と明言している。
このことはステレオサウンド 47号に掲載されている、
当時のマークレビンソンの輸入元であったR.F.エンタープライゼスの広告が詳しい。
レヴィンソンは、その理由として、
「10年も20年も前に作られた製品の中に、現在のすばらしい〝特性〟を誇る優秀製品のあるものに比べても、
音楽をきいたとき、ずっと楽しめるものがすくなくない」ことをまず挙げ、
「こうした測定によって得られた数値から、われわれはいったい何を知ることができるのだろうか」
と続けている。
さらに
「最も重要な問題は、これらの〝特性〟のうち何が、肝心の音の良し悪しを明確に示してくれるか、ということだ。
答えは、『どれも、それを示すものはない』である。これはまことに、いらだたしくもあり、
厄介千万なことだけれども、しかし、これが事の真相だ。」
と語っている。
47号は1978年6月に出ているから、47号を読んだ時、私は15歳。
素直に、マーク・レヴィンソンが語る言葉を信じていた……。