毅然として……(その1)
6年ほど前のことだと記憶しているが、
NHKで美空ひばりのドキュメンタリー番組をやっていたのを、最後の方だけ見たことがある。
番組の流れからして、最後に「川の流れのように」を流すのだろうとは誰もが思うだろうし、
そのとおりに「川の流れのように」が流れた。
美空ひばりの写真が次々と映し出されていくのを見ているうちに、
唐突に映画「スパイダーマン2」でのセリフが浮んできた。
映画の中盤以降、主人公のピーター・パーカーに、メイおばさんが語るセリフがある。
このセリフを、最後のシーンで、今度はピーター・パーカー(スパイダーマン)がオクタビアスに語る。
このセリフが浮んできたとき、美空ひばりもそうだったのかもしれない、と思った。
才能と夢についても思っていた。
美空ひばりの才能は、歌にある。
美空ひばりの「夢」は、歌にあったのだろうか。
違うところにあったのように、その番組のエンディング「川の流れのように」を聴いていて思っていた。
ゆえに「スパイダーマン2」でのセリフが思い出されてきたのかもしれない。
才能は夢を実現するためのものなのだろうか。
才能は天からの授かり物だとしたら、
その才能が大きければ、強ければ、
毅然としてあきらめなければならないものがある──、それが夢であっても。
「川の流れのように」は、この時、そう語っていた。