現代スピーカー考(その26)
より正確なピストニックモーションを追求し、
完璧なピストニックモーションを実現するためには、振動板の剛性は高い方がいい。
それが全面駆動型のスピーカーであっても、
振動板の剛性は(ピストニックモーションということだけにとらわれるのであれば)、高い方がいい。
ソニーがエスプリ・ブランドで、振動板にハニカム構造の平面振動板を採用し、
その駆動方法もウーファーにおいてはボイスコイル、磁気回路を4つ設けての節駆動を行っている。
しかもボイスコイルボビンはハニカム振動板の裏側のアルミスキンではなく、
内部のハニカムを貫通させて表面のアルミスキンをふくめて接着する、という念の入れようである。
当時のソニーの広告には、そのことについて触れている。
特性上ではボイスコイルボビンをハニカム振動板の裏側に接着しても、
ハニカム構造を貫通させての接着であろうとほとんど同じなのに、
音を聴くとそこには大きな違いがあった、ということだ。
つまり特性上では裏側に接着した段階で充分な特性が得られたものの、
音の上では満足の行くものにはならなかったため、さらなる検討を加えた結果がボイスコイルボビンの貫通である。
APM8は1979年当時でペアで200万円していた。
海外製のスピーカーシステムでも、APM8より高額なモノはほとんどなかった。
高価なスピーカーシステムではあったが、その内容をみていくと、高くはない、といえる。
そして、この時代のソニーのスピーカーシステムは、
このAPM8もそうだし、その前に発売されたSS-G9、SS-G7など、どれも堂々としていた。
すぐれたデザインとは思わないけれど、
技術者の自信が表に現れていて、だからこそ堂々とした感じに仕上がっているのだと思う。
これらのソニーのスピーカーシステムに較べると、この10年ほどのソニーのスピーカーシステムはどうだろう……。
音は聴いていないから、そこについては語らないけれど、どこかしら弱々しい印象を見たときに感じてしまう。
このことについて書いていくと、長々と脱線してしまう。
話をピストニックモーションにもどそう。