井上卓也氏のこと(その25)
井上先生は黙っておられた。
だからというわけではないが、つい反論が口から出ていた。
「逆でしょう。アナログのほうがすべての現象が目や耳で確認できるし、
きちっと使いこなしができればコントロールできる。
CDプレーヤーは、トレイが引っ込んでしまうと、もう中の動作に対してはいっさい手が出さない。
何がどうなっているのかも直接確認することはできない。出てくる音も、つねに同じわけじゃない。」
こんなことを一気に言ってしまった。
真っ向から否定したわけだから、Hさんは、私を、失礼なヤツだな、と思われていただろう。
すると井上先生が、「うん、宮﨑の言う通りだよ。CDプレーヤーはブラックボックスだし、
アナログプレーヤーはコツ、ツボがわかっていれば、きちんとコントロールできるもの」と、
井上先生と会われた方ならわかってくださるだろう、あの口調で言われた。
嬉しかった。
井上先生に認められたようで、嬉しかった。