Date: 3月 12th, 2022
Cate: 五味康祐, 情景
Tags:

情景(その9)

グラシェラ・スサーナの歌が、
ハイ・フィデリティ再生になるほど──、といったことを書いているが、
ここでのハイ・フィデリティ再生とは、情感たっぷりに歌ってくれることでもある。

私の目の前でグラシェラ・スサーナ本人が歌っているかのような、
しかも情感豊かな歌を聴かせてくれようとも、
情景が浮んでこない、という状況をどう受けとったらいいのだろうか。

結局、ラジカセでミュージッテープを聴いていたときの情景は、
私が勝手につくりあげた妄想、もしくは錯覚だったのか。

そのことを確認したい、という気持があって、
ヤフオク!でグラシェラ・スサーナのミュージックテープ、
それも中学生のころ聴いていたミュージックテープが安価で出品されていたら、
入札しては手に入れていた。

五本ほど集まった。
でもラジカセを買うまでにはいたらなかった。
買おうかな、と思って、量販店のラジカセのコーナーを何度か見てまわったことはある。

まったく食指が動かなかった。
だからといって昔のラジカセを探し出してまで買おう、という気もなかったのは、
もしかすると情景が浮ばなくなったのは、こちら側のせいなのか。
ようするに老化してしまったからなのか……。

けれどそうでないことを確認できた。
2018年9月8日、audio wednesdayで、
グラシェラ・スサーナのMQA-CDを.メリディアンのULTRA DACで聴いて、
そうでないことを確認できた。

情景がふたたび浮んできた。

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