続・再生音とは……(その35)
つぼみのままで終ってしまう音と花を咲かせる音。
どちらを愛でるのか。
つぼみのままで終ってしまう音は、
花を咲かせはしないものの、熟すことのない音ともいえるだろう。
ずっとつぼみのままなのだから。
そういう音を愛でるのが好きな人がいる。
対象が音なのだから、周りがとやかくいうことではない。
けれどつぼみのままで終ってしまう音は、決して実を結ぶことはない。
花を咲かせた音は、いつか花が散ってしまうことだろう。
そうなるくらいならつぼみのままのほうが──、という人にはわからないだろうが、
花が散っていった先には、実が生る。
この音の「実」を意識することなく終るのか、そうでないのか。