「ルードウィヒ・B」(ジャズ喫茶の描写・その6)
「リバーエンド・カフェ」の、あのシーンで思い出したことは、まだある。
井上先生が書かれていたことだ。
ステレオサウンド別冊「JBLのすべて」に、
各筆者による「私とJBL」が載っている。
井上先生は、こんなことを書かれている。
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奇しくもJBLのC34を聴いたのは、飛行館スタジオに近い当時のコロムビア・大蔵スタジオのモニタールームである。作曲家の古賀先生を拝見したのも記憶に新しいが、そのときの録音は、もっとも嫌いな歌謡曲、それも島倉千代子であった。しかしマイクを通しJBLから聴かれた音は、得も言われぬ見事なもので、嫌いな歌手の声が天の声にも増して素晴らしかったことに驚嘆したのである。
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こんなことを思い出すのは、マンガの読み方として邪道なのかもしれない。
それでも、やはり思い出してしまうし、
思い出すからこそ、気づくことがあるものだ。