瀬川冬樹というリアル(その4)
孤独な聴き手と孤立した聴き手は、まるで違う。
音楽は独りで聴くものだ。
私は、ずっとそう思っている。
家族といっしょに楽しむ音楽もいいとは思うけれど、
私には他人事のように感じてしまう。
そんな私が、audio wednesdayでは、
来てくれる人は少ないとはいうものの、同じ空間で同じ音楽を聴いていることを、
四年ほど続けている。
瀬川先生は、孤独な聴き手だった、と思っている。
どんなに広い空間を得られたとしても、
それがリビングルームで家族と一緒に聴くのであれば、
狭くてもいいから独りで聴ける空関をもつべきであり、
その理由として「音楽に感動して涙をながしているところを家族にみられてたまるか」、
という気持があるからである。
その瀬川先生は、オーディオ店での試聴会では、
来場者といっしょに音楽を聴くことになる。
そういう時は真剣に音楽を聴かれていない──、
人によっては、そんな見方をするだろうが、そうだろうか。
熊本のオーディオ店に定期的に来られていた瀬川先生をみてきた。
そんな感じは一度もなかった。