オーディオの「本」(近所の書店にて・その5)
「ステレオサウンドが一人勝ちすると、オーディオ界にとってはよくないことだ」、
井上先生から何度かきいている。
井上先生は2000年12月に亡くなられているから、
ステレオサウンドという固有名詞のことろは、別の固有名詞に置き換えられたかもしれない。
井上先生の、このことばを聞いたときは、
確かにステレオサウンドの一人勝ちも、ありえないことではなかった。
でも、現状はずいぶん変ってきた。
オーディオ雑誌の書店での取り扱いが冷たくあしらわれるようになってきて、
少しずつ、けれど確実にオーディオ雑誌が淘汰されるようになってくると、
最後にのこるのは、ステレオサウンドとはいえなくなってきている。
だからといって、このオーディオ雑誌が残る、とはいえない状況でもある。
淘汰の末に、どれか一誌が残ったとしても、
それは一人勝ちといえるのか、という疑問はあるが、
すべてのオーディオ雑誌が書店から消えてしまうことはない、はずだ。
そうなったときに、どうなるのか。
仮にステレオサウンドが生き残ったとしよう。
それを喜ぶ人もいよう。
やっぱりステレオサウンドが、No.1のオーディオ雑誌だ、と信じ込める人は、
そうであろう。
けれど考えてみてほしい。
そうなった時に、ステレオサウンドの編集方針は大きく変化していくはずだ──、
というよりも、変化せざるをえない。
オーディオ雑誌には役目があり、
それぞれのオーディオ雑誌には役割があるからだ。