日本のオーディオ、これから(Made in Japan・その5)
1991年ごろのことだ。
府中で、ある看板が目に入った。
木工の工房だった。
そこには、オーレックスのスピーカーの試作品を手がけていた、
そんなことが書かれていた。
そのころオーレックスは、本格的なオーディオから手を引いていた。
なので、その木工の工房も、東芝からの仕事が減ったかなくなったのか。
そのころの私は無職に近い状態だったから、
そこにスピーカー・エンクロージュアの製作を依頼する余裕はなかった。
それから十年くらい経っていただろうか、
その工房のあたりに行ったけれど、見つけることはできなかった。
工房はすでに閉めていたのか、
それとも私の記憶違いで、別の場所で探していたのか。
その後、何度かこのあたりを通りかかることはあった。
気をつけて見ていたけれど、見つけられなかった。
この工房が、オーレックスのスピーカーシステムの試作のどれだけを請け負っていたのか、
それはわからない。
試作品の大半を、この工房で作っていたのか、ごく一部だけなのか。
ただいえるのはエンクロージュアの試作品を外注していたことは確かだ、ということ。
このことが、当時の私には意外だった。
オーレックス(東芝)ほどの大企業でも、エンクロージュアの試作品を外注に出すのか。
自社で腕のいい木工職人を雇っていなのか。
他のメーカーはどうだったのか。
エンクロージュアの試作品は外注に出さず、すべて自社内で作っていたところは、
どのくらいあったのだろうか。