マリア・カラスとD731(その3)
ローザ・ポンセルのCDは、ナクソスから数枚出ている。
「椿姫」もナクソスから、である。
ポンセルの「椿姫」は、ジャケットにBroadcast on 5th January, 1935と記されているように、
放送用に録音されたもので、
再生してみればわかるようにいきなり音楽から始まるのではなく、コメンタリーから始まる。
録音年代からすると、それほど音は悪くはないし、
鑑賞にたえるだけの音質ではある。
それでも、セラフィンの
「私の長い生涯に、三人の奇蹟に出会った──カルーソー、ポンセルそしてルッフォだ。この三人を除くと、あとは数人の素晴らしい歌手がいた、というにとどまる」、
アーネスト・ニューマンがカラスのコヴェント・ガーデンへのデビューの際に評した
「彼女は素晴らしい。だが、ポンセルではない」、
これらにすなおに首肯けたかというと、決してそうではなかった。
ずっと以前きいたときよりも印象はよくなっていたけれど、
それでも……、とやっぱり感じてしまうのは、ポンセルの実演に接していないからなのか。
残されている録音を聴くことしかできない聴き手にとって、
ローザ・ポンセルのすごさは感じとり難いとしかいいようがない。
1月のaudio wednesdayに19時前に来られた方は二人。
二人とも、ポンセルの歌にすごさは感じられてなかった。
ローザ・ポンセルの「椿姫」の二枚組のCDは、昨秋ディスクユニオンで買ったものだ。
新品で定価は500円となっていた。
レジに持っていくと、店員がちょっと待ってください、という。
なにかな、と思っていたら、何かのセールのようで、100円になっていた。
一枚あたり50円。
だからそれだけの価値しかない、とはいわないし、思っていない。
それでも……、ともう一度くりかえしてしまうが、
私は、おそらく死ぬまでローザ・ポンセルのすごさはわからないのかもしれない。
ローザ・ポンセルの「椿姫」を最後までかけはしなかった。
19時になったので、マリア・カラスの「椿姫」をかけた。