菅野沖彦氏のこと(紅茶、それにコーヒー)
2002年7月4日、14年ぶりに菅野先生のリスニングルームを訪れて、
戻ってきた、と感じたのは、部屋に入ったときでせなく、音を鳴ったときでもない。
菅野先生の奥さまがだされる紅茶の香りと味で、
私は、菅野先生のリスニングルームに戻ってきたんだ、と感じていた。
ステレオサウンド時代に伺っていたとき、
いつも出してくださった紅茶と同じだった。
当り前のことなのに、「同じだなぁ」と感慨深いものがあった。
菅野先生といえば、紅茶だった。
試聴でステレオサウンドの試聴室に来られるとき、
当時ステレオサウンドの真向いにあった水コーヒー どんパからコーヒーをとっていた。
菅野先生だけが紅茶だった。
コーヒー嫌いなのか、と、ずっと思っていた。
いつだったのか、はっきりと憶えていないが、ある時、
奥さまがコーヒーを出してくださった
私にだけコーヒーではなく、菅野先生もコーヒーだった。
意外だったので、つい「コーヒー、飲まれるんですか」と訊いた。
もともとコーヒー好きで、水だしコーヒーに、すごくハマった時期があった、とのこと。
どうすれば美味しい、菅野先生にとっての理想の水だしコーヒーを淹れられるか、
あらゆる要素を少しずつ変えては淹れて飲み、比較。
それを果してなくくり返されたそうだ。
そんなことを続けていたら、ある日、コーヒーを体が拒否してしまった、とのこと。
濃いコーヒーの飲みすぎであろう。
それから紅茶にされた、そうだ。
だから「最近、少しコーヒーが飲めるようになったんだよ」と話してくださった。
オーディオとまったく関係がない、と思われるかもしれないが、
これこそが、ある意味、菅野先生的バランスのとりかたである。