「商品」としてのオーディオ評論・考(その9)
(その5)から少しそれてしまったが、本題に戻ろう。
(その4)の最後に、
出版社が直接関係しない試聴が、オーディオ評論家にはある、と書いた。
オーディオ評論家は、オーディオ雑誌の試聴室でしか試聴しないわけではない。
メーカー、輸入元の試聴室ですることもあれば、
自身のリスニングルームで試聴することもある。
オーディオ雑誌の編集部からの依頼で、そういうところでの試聴もあれば、
そうでない場合もある。
これが悪いこととは考えない。
オーディオ評論家の仕事は、何もオーディオ雑誌に原稿を書くだけではない。
ただ考えたいのは、ここでも試聴料という名の対価を得ていることに関係してくる。
対価を得ること自体が悪いことではない。
その金額が高いとか、そんなことも問題にはしない。
そこでの試聴が、そのオーディオ評論家が書くものに関係してきた場合を考えたいだけである。
(その2)で、オーディオ評論家という書き手の商取引の相手は、誰かというと出版社である、と書いた。
読み手ではない。
オーディオ評論家と出版社との商取引のあいだに、
メーカー、輸入元との商取引が関係してくることになる。
(その3)で、
季刊誌ステレオサウンドという商品は、読み手とのあいだの商取引、
広告主とのあいだの商取引、このふたつの商取引をもつ。
これが雑誌という商品の特徴でもある、と書いた。
オーディオ評論という商品も、雑誌という商品と同じで、
ここではふたつの商取引をもつ。