「商品」としてのオーディオ評論・考(その3)
同じ商品であっても、オーディオ機器とオーディオ雑誌は同一視できない。
アンプしろスピーカーにしろ、ジャンルに関係なく、
オーディオ機器においての商取引は、メーカー(もしくは輸入商社)とユーザーとで成り立つ。
実際には流通系路の関係で直接取引ではなく、問屋、小売店が間にいるわけだが、
それでもメーカーの商取引の相手はユーザーである。
オーディオ雑誌も、出版社と読み手とのあいだで商取引は行われるが、
前回書いているように、出版社は広告主とも商取引をしている。
メーカー、輸入商社には、この商取引はない。
メーカー、輸入商社はオーディオ雑誌に広告を出している。
ということは出版社と商取引をしているではないか──、という反論は成り立たない。
ここでの商取引は、商品においての商取引である。
メーカーが製造したオーディオ機器、
輸入商社が輸入したオーディオ機器、
これらが商品であり、この商品においての商取引はユーザーとのあいだに成り立っている。
メーカー、輸入商社がオーディオ雑誌に広告を出すのは、別の商取引である。
けれど出版社にとっては、別の商取引とはいえない。
株式会社ステレオサウンドにとっての商品は、季刊誌ステレオサウンドであり、
他の雑誌、HiViであったり、管球王国であったりする。
ここでは季刊誌ステレオサウンドに絞って話を進める。
季刊誌ステレオサウンドという商品は、読み手とのあいだの商取引、
広告主とのあいだの商取引、このふたつの商取引をもつ。
これが雑誌という商品の特徴でもある。
同じ出版物でも書き下しの書籍は、雑誌とは違ってくる。
そこに広告はないからだ。
書籍の商取引の相手は読み手のみである。