うつ・し、うつ・す(その11)
写す、といえば、まず浮ぶのは写真だ。
カメラを構えシャッターを切ることで、写す。
そうやって写したものを現像して印画紙に映す。
それは移すでもある。
この移す段階で、選ぶことが加わる。
シャッターを切って写した数多くのカットから、選ぶ。
「選ぶ」を五年待つ──、
今年(まだ一ヵ月くらいしか経っていないが)聞いた言葉で、
もっとも印象に残る、と言い切れるほどに、考えさせられる。
写真家のマイク野上(野上眞宏)さんから直接きいた、
この《「選ぶ」を五年待つ》は、できる場合とできない場合とがある。
定期刊行物の雑誌では、そんな悠長なことはいってられない。
月刊誌、週刊誌ではそれこそ撮影した現場で、使用するカットを選ぶこともある。
そこでの「選ぶ」には、感情が多分に含まれている。
撮影時のもろもろの感情を忘れ去るのに、時間がかかる。