何を欲しているのか(その23)
(その22)で終りのつもりだった。
なので、この(その23)は蛇足のようなもの。
「グレン・グールドのピアノしか聴かない」、
そう言葉にしてしまう人は、
グレン・グールドによって演奏されたバッハ、ベートーヴェン、モーツァルト、ブラームスなど、
つまりは音楽を欲しているのではなく、
グレン・グールドによってなされた演奏を、
知的アクセサリーのようなものとして欲しているだけなのかもしれない。
私に似合うのは、グレン・グールドだけ──、
いいかえると、そういうことのような気もする。
「グレン・グールド」のところを、他の固有名詞に置き換えてみる。
有名ブランドに置き換える。
「聴かない」を「身につけない」に置き換える。
はっきりとしてくる。
ただ、特定の音楽を知的アクセサリーとして扱うことは、
己をデコレーションしていくだけでしかない。
デザインしていくことではなく、そこから離れていくだけだ。