オーディオ「原器」考(SPUと国産MC型)
オルトフォンのSPUは、鉄芯入りMC型カートリッジの原器といっていい存在である。
日本のMC型カートリッジにも、
SPU型といえるMC型カートリッジがいくつも存在していた。
コーラルの777シリーズ、デンオンのDL103シリーズ、アントレーのEC1、EC10、グレースのf10シリーズ、
ハイレクトの2017、ナカミチのMC1000、スペックスのSD909などがそうだ。
海外モデルではEMTのTSD15がある。
上記の国産MC型カートリッジは、構造によってふたつに分けられる。
コーラル、アントレー、グレースのグループと、
デンオン、ハイレクト、ナカミチ、スペックスのグループとにである。
手元にステレオサウンド別冊HIGH-TECHNIC SERIES 2がある方は、
これらのカートリッジの内部構造図を比較していただきたい。
すぐに気づかれるであろう。
MC型カートリッジの構造はコイルの後にダンパーがあり、
さらにその後にはポールピースがあり、
ポールピースと向き合うようにマグネットが配置されている。
SPUではマグネットとポールピースは平行の位置関係にある。
カンチレバーはポールピースからまっすぐに出ている。
SPUのカートリッジ本体をGシェル(もしくはAシェル)から取り出してみると、
マグネットが斜めになっている。
そのため通常のヘッドシェルにSPUの本体を取り付けるためにはスペーサーが必要になる。
以前はオーディオクラフト、フィデリティ・リサーチからSPU用のスペーサーが発売されていた。
つまりトラッキングアングルの分だけSPUの本体は角度をつけて専用シェルに取り付けられている。
国産MC型のコーラル、アントレー、グレースのグループは、
SPUと同じで、ポールピースとマグネットが平行関係にある。
これだとカートリッジの内部でなんからのスペーサーを必要とする。
ならばポールピースとマグネットを平行の位置関係にせずに、
ポールピースをトラッキングアングルの分だけ傾けてしまえば合理的ともいえる。
デンオン、ハイレクト、ナカミチ、スペックスのグループが、これにあたる。
どちらが構造として優れているのだろうか。
SPU型ではない他のMC型カートリッジをみると、
ポールピースとマグネットが平行の位置関係であるモノが多い。
ちなみに構造をみれば、
ナカミチのカートリッジを製造していたのはスペックスだとわかる。