瀬川冬樹氏のこと(ステレオサウンド 61号・その3)
ステレオサウンドの論文募集には、ほぼ間違いなく新しい筆者を探す意図があったと見ていい。
菅野先生によるベストオーディオファイル訪問にも、そういう意図はあった。
事実、ベストオーディオファイル訪問に登場した人の何人かは、
筆者としてステレオサウンドの誌面に登場している。
おそらくどのオーディオ雑誌の訪問記事も、新しい筆者探しの意図があるとみていい。
書き手としての寿命より、雑誌の寿命が長いことがある。
ステレオサウンドもそうである。
9月に発売になる号で200号。創刊50周年。
創刊号をもっている人は、めくってみてほしい。
いまステレオサウンドに書いている人で、創刊号に書いていた人はいない。
筆者も編集者も、そして読者も新陳代謝していくのだから。
ならばなぜステレオサウンドは、59号以降、読者の論文募集をやらなくなったのか。
応募がほとんどない、というのが現実的な理由であろうが、
それだけが理由だろうか……、といまは思っている。
これは私が勝手にそう思っているだけで、確たる根拠はなにもない。
それでもそう思えることがある。
論文募集に積極的であったのは瀬川先生だったのでは……、ということだ。
ステレオサウンド 61号から瀬川先生は不在になった。
同時に論文募集も終ってしまった。