続・再生音とは……(その13)
SFの世界では、人型ロボットだけでなく、クローン人間も登場する。
完璧なコピーといえるクローン人間が造り出せたとしても、
そのクローン人間の脳には、何が入っているのだろうか。
そのクローン人間の脳に、オリジナルの人間の脳の記憶の全てをコピーすることができたら……、
これはSFの世界での、自我とはなにか、というテーマとつながっていく。
体も完璧なコピー、記憶もそうである。そういうクローン人間がいたら、
オリジナルの人間と同じ自我が、そこに芽生えるのだろうか。
現在の録音・再生のシステムでは、いわゆる原音再生は無理である。
けれど将来、まったく違う理論と方法によって、
録音と再生の場が異っていても、原音再生が可能になったとしよう。
それも完璧なコピーといえる原音再生である。
完璧なコピーといえるクローン人間のような原音再生である。
そんなクローン人間ならぬクローン音が実現したとして、
クローン音には、自我があるのか、と思い、
次の瞬間には、元となる、いわゆる原音(生音)には自我があるのだろうか……、と考え込んでしまった。
音に自我などあるものか、といいきれない自分に気がつく。
いいきれないということは、音に自我、自我のようなものを感じとっているのだろうか、とまた考える。
自我があるとすれば、それは原音(生音)ではなく、再生音なのではないか。