Date: 3月 22nd, 2015
Cate: 岩崎千明
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岩崎千明氏のこと(アナログディスクの扱い・その1)

岩崎先生のリスニングルームに行ったことのある人たちから何度も聞く話がある。
岩崎先生のレコード(アナログディスク)の扱いである。

レコードは、特にマニアでない人でも、
盤面に触れないように縁を両手で挟んで、静かにターンテーブルの上に置く。
岩崎先生は違った。

盤面を指で持ってジャケットから取り出しターンテーブルの上に置く。
聴き終ったらジャケットにしまうのではなく、
次に聴きたいレコードを、さっきまでかけていたレコードの上に置く。
さらにその上に、次に聴きたいレコードが置かれる。

当然トーンアームの水平がとれなくなり、トレースが困難になると、
数枚のレコードはターンテーブルの上からとりのぞかれる。

しかもカートリッジは静かに盤面に降ろすのではなく、落下である。
カートリッジがレコード盤上で数回バウンドすることもある。
ボリュウムは、もちろん上げたままである。

いまレコードマニア、オーディオマニアと呼ばれる人は、
レコードをほんとうに丁寧に扱う。
クリーニングに関しても、あれこれ試されている人もいる。
とにかく神経質なくらいに丁寧に扱う。

そんな人にとっては、岩崎先生のレコードの扱いは、論外となる。
そんな扱いをしていたのか……、と思われるかもしれない。

けれど、岩崎先生のレコードの扱いについて話す人は、みな楽しそうに話してくれる。
なぜなのか。

そして、もうひとつなぜなのかは、
なぜ岩崎先生はそういう扱い方をされたのかだ。

丁寧に扱うことの大事さはわかっておられた。
それに右手の小指をプレーヤーキャビネットについて、
聴きたい箇所に静かにカートリッジを降ろすことも得意だった、という話も聞いている。

そういう岩崎先生が、そういうレコードの扱い方(それは聴き方でもある)をされていたのか。
この「なぜか」と、岩崎先生の音とが結びついていく感触を、話を聞くたびに感じている。

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