真空管の美(その3)
Edのことは、別項ですでに書いている。
他の人が作ったアンプなら、そのアンプの出来が……、といえても、
伊藤先生が作られたアンプそのものを聴いているわけだから、
Edという真空管のもつ特質が、どういうものであるのかは掴めたといえよう。
その後で聴いた300Bのシングルアンプの音には、心底びっくりした。
こういう体験をしてしまうと、それまで古くさい形に思えていた300Bが、
実にいい形をしている、というふうに思えてくる。
誰がなんといおうと、真空管は見た目通りの音がしてくる。
Edからは300Bの音はしてこないし、300BからEdの音は鳴ってこない。
美という漢字は、羊+大である。
形のよい大きな羊を表している。
ということはEdよりも、他のどんな真空管よりも300Bの形は、まさしく「美」、
つまり形のよい大きな羊そのものに見えてくる。
300Bこそ、美という漢字を真空管という造形で表現した唯一のモノ。
いまはそうおもっている。