毅然として……(その7)
グレン・グールドがコンサート・ドロップアウトした理由については、本人が語っているし、
これまでにも多くの人が言ったり書いたりしてきている。
コンサート・ドロップアウトするということは、
コンサートを行わない、ということであり、ライヴ録音を残さない、ということでもある。
この、ライヴ録音を残さない──、
このことがグールドのコンサート・ドロップアウトに関係していると考えることはできないのか。
音楽の録音にはスタジオ録音とライヴ録音とがある。
コンサート・ドロップアウトしたグールドの演奏を伝えるのはスタジオ録音されたものによる。
スタジオ録音もライヴ録音もマイクロフォンがありテープレコーダーがあって成り立つ。
ライヴ録音ではないという意味のスタジオ録音には、
文字通り録音スタジオでの録音も含まれるし、どこかのホール、教会を借りての録音も含まれる。
つまりスタジオ録音とライヴ録音は、録音される場所の違いで分けることはできず、
聴衆の存在が、このふたつをわけている。
聴衆のいるいないに関係なく、録音はひとつの記録である。
スタジオ録音もライヴ録音も音の記録である。
同じ記録であるものの、ライヴ録音にはドキュメンタリーとしての側面が強い場合がある。