試聴ディスク考(その7)
ステレオサウンド 44号の発売とともに、
ブレンデルのモーツァルトのピアノ協奏曲のレコードを買ったわけではない。
45号が出てもまだ買っていなかった。
近所のレコード店に置いてなかったというのも理由のひとつだが、
他に買いたいレコードはかなりの数あったから、つい先延ばしにしていた。
なのでしばらくは黒田先生の試聴ディスクを一枚も聴かずに、その試聴記を読んでいた。
それぞれのレコードの5つのチェックポイントについては、
特集記事の前半にまとめられているから、黒田先生の試聴記を理解するには、
チェックポイントのページと行き来しながら読む必要があった。
これが10枚すべての試聴ディスクを持っていて聴き込んでいればそんな手間は必要なかっただろうが、
そのころは私はそうする必要があった。
44号、45号の黒田先生の試聴スタイルは、いまでも意義のあることだったと考えているが、
ページ数に制限があれば、読者にわずかとはいえ負担を強いることになる。
それう厭わずに読む人もいれば、そうでない人もいるのが現実だ。
ステレオサウンドの誌面構成は納得のいくものではあったけれど、
読みやすさという点では問題があり、黒田先生の意図をうまく読者に伝えていたかについては疑問も残る。
このやり方はあれこれ考えて細部を見直しても、誌面に限りのある実際の本に向いているとはいえない。
そのためか、このスタイルの試聴は44号と45号限りだった。