SUMOのThe Goldとヤマハのプリメインアンプ(その13)
パワーアンプにつきもののバイアス回路は音質に影響するだけでなく、
動的ウォームアップとも密接な関係をもつ。
だからこそ適切なバイアス回路の設計と温度補償のために、
ヒートシンクのどこにバイアス回路の一部のパーツの最適な取付け位置が重要となるわけ。
バイアス回路はそれだけ面倒な箇所ともいえる。
ならばバイアス回路をなくしてしまえないのか。
なくしてしまえば、バイアス回路に起因する問題は少なくともなくなってしまう。
ジェームズ・ボンジョルノがそう考えたのかどうかは、ボンジョルノが亡くなってしまったいまは確認もできないが、
SUMO時代のパワーアンプ、The Goldには、いわゆるバイアス回路がない。
AB級動作のThe Powerにはバイアス回路はもちろんあるけれど、
A級動作のThe Goldにはない。
これは片チャンネル当り二組のフローティング電源を必要とする、
The Gold独特の出力段の回路によって可能となっていて、
それでは出力トランジスターのバイアス電流はどうやって定めているのかといえば、
フローティング電源の他に、バイアス用の電源が用意されていて、
出力トランジスターのベース−エミッターを流れる電流を、ここで設定して、
出力トランジスターのバイアス電流は、このベース−エミッター間電流のhFE(直流電流増幅率)倍となるわけだ。
hFEは使用している出力トランジスター固有の値である。