EMT 930stのこと(余談・ベイヤー DT440 Edition2007)
30年以上前ならばEMTの930stをオーディオ店で見たり、聴くこともできたであろうが、
いまはその機会も少なくなっている、と思う。
ここで930stのことをいくら書いたところで、
930stに関心をもってくれても聴くことがなかなかかなわないのは時代の成り行きとはいえ、
残念なことだし、さびしくもあり、もったいない感じもする。
中古を専門に扱っているところに行けば、930stはあることにはある。
けれど、それがどの程度のコンディションかといえば、はっきりとしたことは何も言えない。
いいコンディションの930stにあたるかどうかは、運次第ともいえる。
完全整備と謳っているところは少ないないけれど、
私はほとんど、この謳い文句は信用していない。
店主の人柄がいいから、といって、そこで扱っている930stのクォリティが保証されるわけでもない。
結局、自分の目で判断できなければ、ということになる。
それでも930stの音がどういう音なのか、
その良さを、なにか別のモノで聴くことはできないのか──。
いまから三年前、iMacで使うヘッドフォンを探していた。
ちょうどそのころ、瀬川先生の文章を集中的に入力作業していたころで、
しかもステレオサウンド別冊の「Hi-Fiヘッドフォンのすべて」にとりかかっていた。
iMacで使うものだから、高価なものでなくてもいいし、日常使いとして適当なヘッドフォンがあればいい、
という気持で探しに来ていた。
たまたま目についたのが、ベイヤーのDT440 Edition2007だった。
価格も手頃だし、「Hi-Fiヘッドフォンのすべて」で瀬川先生が購入されていたことを知っていたから、
試聴もせずに、これに決めた。