待ち遠しい
今年イチバン楽しみに、その発売を待っていたのが、
アンドラーシュ・シフのベートーヴェンのピアノ・ソナタ集第8巻である。
ECMから出る。10月14日に入荷予定とのことだ。
収められているのは30番、31番、32番。
デッカ時代のシフの演奏にも惹かれるものがあったが、
ECMに移ってからの演奏には、まいった。
最初に聴いたのは、バッハのゴールドベルグ変奏曲。
デッカにも、1980年代に録音しているし、聴いていた。
「20年で、これほど人は成長するのか」──、そうも感じた。
ぼんやりとした記憶だが、当時のシフは、グールドを師、もしくはそういう意味で呼んでいたはずだ。
シフは1953年生れ。二度目のゴールドベルグ変奏曲の録音時(2001年10月)は、
48歳になる二カ月ほど前である。
グールドが二度目のゴールドベルグ変奏曲を録音したときは49歳。
あえて、ほぼ同じ歳になったときを選んだのだろうか。
同じ曲を、ときには難解な言葉を並べて、あらゆる言葉を尽くして語ろうとする演奏家もいるし、
詩のように、言葉をできる限り削ぎ落として語る演奏家もいる。
どちらが素晴らしいとかではない。
そんなことを感じさせる演奏があるということだ。
シフの、いまの演奏がどちらかは聴いてみればわかる。