チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その3)
ステレオサウンド 55号での瀬川先生のMy Best3のチューナーに関しては、やや意外な感じを受けた。
ケンウッドのL01T、アキュフェーズT104は新しい製品で、
チューナー以外の項目、スピーカーにしてもアンプにしても、旧製品よりも新製品を中心に選ばれている。
何を選ばれているのかについて、そして選考理由については、こちらをお読みいただきたい。
例外的なのがプレーヤーにおけるEMT・930st、チューナーにおけるパイオニア・Exclusive F3の選出だ。
930stは瀬川先生にとって、ながく愛用のプレーヤーシステムであったから、わかる。
けれどExclusive F3は愛用のチューナーではない。
ステレオサウンド 38号での瀬川先生のリスニングルームの写真には、 F3は写っている。
これは、おそらく43号で書かれているモニター期間だったのだろう。
瀬川先生の新しいリスニングルームの写真には、
アキュフェーズのT104は写っているけれど、Exclusive F3はない。
にもかかわらず、ステレオサウンド 55号でのチューナーのMy Best3として、
すでに旧製品と呼んでいいExclusive F3を挙げられている。
41号で、デザインについてやや否定的なことを書かれていても、
My Best3として挙げられるのには、音質面での、他には買え難い魅力を感じてのことだと思ったからこそ、
Exclusive F3への私の興味は強いものになっていったわけである。
同時に、Exclusive F3の音を聴いてみたい、と強く思うようになってもいた。
けれど聴く機会は訪れなかった。
オーディオ店で、電源の入っていないExclusive F3を見たことはあったけれど、
そこまで留まりだった。
ステレオサウンドで働くようになっても、チューナーの試聴の機会はほとんどなかった。