Archive for 6月, 2023

Date: 6月 13th, 2023
Cate: マッスルオーディオ

muscle audio Boot Camp(その22)

1990年代、ゴールドムンドのMimesisシリーズのパワーアンプが登場し、
高い評価を得ていた。

Mimesisシリーズのパワーアンプは、電源部の平滑コンデンサーの容量に特徴があった。
それまて大容量を謳うメーカー(アンプ)は数多くあったなかで、
ハイスピードの実現ということで、あえて小容量のコンデンサーを採用していた。

そのかわりというか、電源トランスはかなり大きいものを搭載していた。
そのころから、アンプのハイスピード化には、平滑コンデンサーに大容量のモノを使うのは、
ダメみたいな受け止め方もされるようになってきた。

けれど実際のところ、ほんとうのところどうなのだろうか。

私の考えでは、出力段がA級かB級かによって、最適なコンデンサーの容量は違ってくる。
A級アンプだと、アイドリング電流をたっぷりと流して、出力段に流れる電流の変化幅も小さい。
こういアンプの場合は、大容量のコンデンサーを搭載した方が、
一方、アイドリング電流をあまり流さないB級(もしくはA級領域が少ないAB級)の場合、
電流の変化幅は、出力が大きいほどに変化するわけだから、
容量の大きさよりも、反応速度を重視すべき──、なのではないだろうか。

そのことを無視して、単に平滑コンデンサーの容量が大きい方がいい、
いや小さい方がいい、というのは、不毛でしかない。

Date: 6月 11th, 2023
Cate: ヘッドフォン

ヘッドフォン考(その11)

その9)で、イエクリン・フロートのヘッドフォンの外観について書いた。

いまの時代、イエクリン・フロートのヘッドフォンを装着した写真も、
インターネットを検索すれば見つかる。
瀬川先生が試聴記に書かれているように
《頭に乗せたところは、まるでヴァイキングの兜のようで、まわりの人たちがゲラゲラ笑い出す》、
まさにそんな感じである。

いま私に、もっとも関心をよせているヘッドフォンは、
HEDDのHEDDphoneである。

イエクリン・フロートほどではないが、
HEDDphoneもけっこう大型で、装着している写真をみると、
ゲラゲラ笑い出すほどじゃないが、かなり大きいな、とは思ってしまうほどだ。

HEDDphoneは、AMTドライバー(いわゆるハイルドライバー)のヘッドフォンだ。
いまのところAMTだけのヘッドフォンとなると、HEDDphoneぐらいのはずだ。

音は聴いたことがない、というか、実物も見ていない。
それでもAMTのヘッドフォンということだけで、すごく気になる存在。

とはいえ聴かない方がいいかも──、とちょっと思っているのは、
けっこう高価なヘッドフォンだからだ。

気に入ってしまい、無理して買ってしまうと、
ヘッドフォンアンプも、このヘッドフォンに見合うモノにすぐさましたくなるだろうし、
そうなっていくと、歯止めがきかなくなるからだ。

買ったとしても、つまり音が気に入ってしまえば、
HEDDphoneの大きさ、デザインはさほど気にならないだろう。

というのも、ヘッドフォンで音楽を聴く行為は、ひとりで音楽を聴くということだからだ。
だから装着している姿を見られるわけではないし、
装着した自分の姿を鏡で見るわけでもない。

Date: 6月 11th, 2023
Cate: 楽しみ方

STUDER A101 + Pass DIY BA-3(その12)

コレクターフォロワーについて書くきっかけとなったのは、
別項「CR方法」の効果と、その理由について考えているからでもある。

CR方法は非常に高い周波数において作用していると考えられる。
そんなに高い周波数においての効果が、ずっと低い可聴帯域にどれほど影響するのか。

はっきりとしたことは、いまのところいえないのだが、
エミッターフォロワーが非常に高い周波数で発振しやすいことと、
なんらかの関連性があるのではないか、とも思っている。

まったく見当はずれなのかもしれないけれども。

Date: 6月 11th, 2023
Cate: 終のスピーカー, 組合せ

終の組合せ(その6)

(その5)まで書いてきて、ふと思い出したのがJBLのB460だ。
1982年に登場したB460は、その型番が示すように43cm口径のウーファー、
2245Hを搭載したサブウーファーである。

エンクロージュアはバスレフ型の横置きのスタイル。

ウーファーが取りつけられているバッフルは垂直だが、
このバッフル面は一段奥にあり、ウーファーの右側は傾斜している。
サランネットを取りつけた状態でも傾斜したスタイルで、
瀬川先生の提唱されていたエンクロージュアに似ている。

しかもB460のバスレフポートは三つ。
瀬川先生が「華麗なる4ウェイシステムの音世界」で提唱されているのも、
バスレフポートは三つである。

瀬川先生の案ではバスレフポートはフロントバッフルに縦に並んでいるのに対し、
B460ではエンクロージュアのサイドに縦に並んでいる。

このB460を思い出しながら、
こういうスタイルのエンクロージュアは、やっぱりいい感じだな、と思っているところだ。

Date: 6月 8th, 2023
Cate: ショウ雑感

2023年ショウ雑感(その1)

今月の24日、25日はOTOTENである。
今年は、ジャーマン・フィジックスの輸入元、タクトシュトックが出展する。

タクトシュトックはジャーマン・フィジックス以外のスピーカーも取り扱っているため、
ジャーマン・フィジックスのスピーカーをつねに聴けるわけではないだろうが、
とにかくオーディオショウで、ひさしぶりにジャーマン・フィジックスが聴ける。

Date: 6月 8th, 2023
Cate: audio wednesday
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第九回audio wednesday (next decade)

第九回audio wednesday (next decade)は、7月5日。

参加する人は少ないだろうから、詳細はfacebookで。
開始時間、場所等は参加人数によって決める予定。

Date: 6月 6th, 2023
Cate: 表現する

熱っぽく、とは(その3)

ステレオサウンド 227号の特集は、
「待望のニューモデル導入顛末記」である。

ステレオサウンドのウェブサイトには、こんなふうに紹介されている。
     *
特集1は、215号(2020年6月発売)以来、3年ぶりとなるオーディオ製品の導入記です。4名のオーディオ評論家が2022年以降に新しく導入した製品について執筆しています。各評論家による製品選びの基準や、製品との出会いから導入に至るまでの経緯が明らかになると同時に、一人のオーディオファンとしての個人的な情熱やコダワリまで感じられる記事となっています。
     *
227号はまだ読んでいないけれど、記事の構成としては215号と同じなはずだ。
《各評論家による製品選びの基準や、製品との出会いから導入に至るまでの経緯》が、
それぞれのオーディオ評論家の書き原稿によって語られているはずだ。

こういう記事を目にするたび毎回思うのは、
なぜ同じやり方をくり返すのかだ。

そしてもうひとつ、オーディオはコンポーネントであり、組合せの世界である。
なぜ記事にも、組合せという考えを持ち込まないのかだ。

ステレオサウンドは、195号(2015年6月発売)と208号(2018年9月発売)の特集で、
「オーディオ評論家の音」をやっている。
オーディオ評論家によるオーディオ評論家のリスニングルーム訪問の記事である。

「待望のニューモデル導入顛末記」と「オーディオ評論家の音」、
この二つの企画を組合せないのか。

Date: 6月 6th, 2023
Cate: 楽しみ方

STUDER A101 + Pass DIY BA-3(その11)

こんなふうに書いていってると、
パワーアンプをふくめて出力はコレクターから取り出した方が音がよい──、
そんなふうに受けとられるかもしれない。

確かにそう思っている、というか、そう感じているところはある。
けれどエミッター(FETの場合はソース)から出力を取り出すことを、
まったく認めていないわけではない。

ただエミッターフォロワーは発振しやすい傾向がある。
この事実は見落していけない。

ChatGPTに、エミッターフォロワーは発振しやすいのか、と訊ねると、
ひじょうに安定した回路だと答えが返ってくる。

けれど、その一方である条件が揃うとひじょうに発振しやすいのも事実だし、
しかもやっかいなことに、その発振周波数は非常に高いため、見逃されやすい。

回路方式だけで音が決定されるわけではない。
とはいうものの、もしスペンドールのD40がエミッターフォロワーの出力段だったら、
ミュージカルフィデリティのA1もそうだったら──、
そんなことをつい想像してしまう。

Date: 6月 4th, 2023
Cate: 終のスピーカー, 組合せ

終の組合せ(その5)

「華麗なる4ウェイシステムの音世界」を引用しておく。
     *
 JBLのプロシリーズユニットを中心にマーク・レビンソンのアンプを使ってマルチドライブするという贅沢な組合せ。ユニット構成は片チャンネル当りウーファーに2231Aを2本、中域用にドライバー2420に2397ホーンの組合せ、トゥイーターには2405、さらに超高域にテクニクス10TH1000を加えた4ウェイ構成だ。アンプ類はマーク・レビンソンの最新製品を使って徹底的にマルチ化を図る。パワーアンプは低音用、中音用にそれぞれモノ構成のML2Lを2台ずつ使い、高音用、超高音用にステレオ構成のML3を1台ずつ使う、計6台という夢の組合せだ。ML2LはA級動作で出力25W、ML3はAB級動作で250W×2だが、実際に比較して聴いてみると、ML2Lの方が音の輪郭が明解でML3の方が少し甘いという印象がある。したがって、好みに応じてマルチ帯域分担を交換してもかまわない。この6台のパワーアンプをもっと凝って使うなら、低音用にML2Lをブリッジ接続にして計4台使い、中音用と高音用にML3を1台ずつ、超高域はLCネットワークで分割するという方法もある。8Ωの2231Aは並列接続で4Ωになり、ブリッジ接続のML2Lからは200Wのパワーが供給できる。ML2Lは実際には公称出力の倍以上の実力があり、これは事実上400Wクラスに相当するといってよい。エレクトロニック・クロスオーバーはLNC2Lを2台使い、クロスオーバーは800Hzと8kHz近辺でうまくいくはずだ。LNC2Lは2チャンネル型だが、別売のOCSモジュール組込みの3ウェイ型にすると、高域は15kHz近辺でクロスさせれば゛4ウェイマルチドライブとなる。コントロールアンプのML6は、輸入元への注文によりフォノイコライザーのゲインやインピーダンス値をEMT・TSD15カートリッジ用に調整してもらう。プレーヤーは、DD型全盛時代にあえてマイクロのRX5000/RY5500の糸ドライブを選ぶ。このプリミティブな方式により安定した音が再生できるので、ハイエンドのユーザーにも十分価値のある製品といってよい。アームはオーディオクラフトのAC3000MCで、アームパイプをEMT・TSD15用とする。取りつけるカートリッジの最適ポイントに合わせた音はすばらしい。
     *
マルチアンプ駆動による4ウェイ・システムだから、かなり大がかりなシステムであり、
このシステムの規模からすると、瀬川先生が提案されているリスニングルームとしてのスペースも、
かなり広いものだと想像されるかもしれないが、
瀬川先生が、この組合せで想定されているのは10畳ほどの空間だ。

ウーファー用のエンクロージュアは、
HIGH-TECHNIC SERIES-1と「華麗なる4ウェイシステムの音世界」とでは、基本的に同じである。

フロントバッフルが傾斜している形状の横に長いエンクロージュアである。
寸法比には気を配られている。
そのくらいで、特別なエンクロージュアとはいえない。

HIGH-TECHNIC SERIES-1、「華麗なる4ウェイシステムの音世界」の記事は、
どちらも1970年代後半であり、それから四十年以上が過ぎ、
エンクロージュアは形状も材質も仕上げも、実に多彩になってきた。

それらエンクロージュアを見慣れた目には、
瀬川先生提案のエンクロージュアは、際立った特徴はないといえる。
何の変哲もないエンクロージュアだけれども、
凝ることのみにこだわってしまい、先に進めない状況を自らつくりだすよりも、
まず、このエンクロージュアでいい。

そうなるとウーファーユニットの選定だ。

Date: 6月 2nd, 2023
Cate: 終のスピーカー, 組合せ

終の組合せ(その4)

Troubadour 40という私にとっての終のスピーカーに組み合わせるウーファーだけに、
どうしても最初から理想に近いもの、最高に近いものを求めがちになるけれど、
そんなことではいつまで経っても先には進めない。

菅野先生にしても、長い時間をかけての、あの低音の実現だったのだから、
とにかく始めることが大事なのだ。

そこで頭に浮ぶのは、瀬川先生がステレオサウンド別冊HIGH-TECHNIC SERIES-1での、
フルレンジからスタートする4ウェイ・システムの構想である。

Troubadour 40も、フルレンジユニットといえば、そうである。
瀬川先生のフルレンジからスタートする4ウェイについては、
別項で書いているからここでは省略するが、
HIGH-TECHNIC SERIES-1を読んだ高校生のころ、実現したいことの一つであった。

それを四十数年後にようやく取り組もうとしている。

瀬川先生のプランはフルレンジ、そこにトゥイーターを加え2ウェイ化。
それからウーファーを加えて3ウェイ、
最終的にフルレンジとトゥイーターのあいだにミッドハイをくわえての4ウェイである。

私のところにはフルレンジとなるTroubadour 40がある。
トゥイーターとなるエラックの4PI PLUS.2もある。

これだけで低音は不足気味ではあるけれど、2ウェイまでは用意されている。
ウーファーである。

ならば、ここでも瀬川先生が挙げられていたエンクロージュアをそのまま使うという手がある。
同様のプラン、そして同様のエンクロージュアは、
ステレオサウンド別冊「SOUND SPACE 音のある住空間をめぐる52の提案」にも出てくる。

「華麗なる4ウェイシステムの音世界」というタイトルがついている記事である。

Date: 6月 2nd, 2023
Cate: 「オーディオ」考

オーディオがオーディオでなくなるとき(その21)

その19)、(その20)で、
ステレオサウンド・グランプリの次の選考委員長は誰なのかについて、すこしばかり書いている。

(その19)と(その20)を書いたのは2020年9月。
三年前に書いていることの続きを、いま書いているのは、
昨日発売になったステレオサウンド 227号に、柳沢功力氏の名前がないからだ。

3月発売の226号にも、柳沢功力氏の名前はなかった。

今年12月発売の229号でのステレオサウンド・グランプリの選考委員に、
柳沢功力氏の名前はないかもしれない。

そうなった場合、次の選考委員長は誰になるのだろうか。
そして、誰か一人、選考委員に新たに加わるのだろうか。
それは誰なのだろうか。

Date: 6月 2nd, 2023
Cate: 楽しみ方

STUDER A101 + Pass DIY BA-3(その10)

M50とは、スペンドールのパワーアンプのことで、
BC1Aのアクティヴ型用のアンプである。

BC1Aとは、いわゆるBCIIのこと。
M50搭載のBC1Aの音は聴いていない。

けれど、これはD40のパワーアップ版ではないのか。
D40は型番が示すように40W+40Wである。
M50は50Wの出力を持つ。

M50の回路図はないのか。
すんなり見つかった。

おそらくD40も同じ回路構成だと思われる。
D40は1977年に登場しているが、当時のアンプの回路構成と比較すると、
かなり独自路線の回路といえる。

初段は、この時代のアンプは差動回路を採用しているアンプがほとんどだった。
ほぼすべてといっていいかもしれない。

M50は違う。それから出力段が一般的なエミッターフォロワーではなく、
コレクターフォロワーになっている。

定電圧回路は電圧増幅段だけでなく、出力段へも電源を供給している。
この定電圧回路もシリーズ型でありコレクターから出力を取り出している。
QUADの44と同じように、である。

Date: 6月 2nd, 2023
Cate: きく

野口晴哉記念音楽室レコード鑑賞会(その9)

スピーカーはスピーカーの音を聴いている──。

以前、別項で、そう書いた。
スピーカーはスピーカーの音を聴くなんて、なんと非科学的な、
という人もいるのはわかっている。

あくまでも感覚的なことなのだが、それでもそうおもってしまうことが、
オーディオをながく続けていると、そういう結論めいたことに行き着くことがある。

そんなこと、一度もない、という人もいるし、
私と同じように、そう感じている人もいる。

どちらが正しいとか間違っているとか、
上とか下とか、そういう問題ではなくて、
同じオーディオを趣味としている、といっている者であっても、
そのくらいの違いがある、という事実でしかない。

5月28日の夜、野口晴哉記念音楽室レコード鑑賞会に集まった数人と飲んでいた。
あれこれ話して駅で別れた。
私一人、反対方向の電車に乗る。

一人になって、(その8)で書いたことをおもっていた。
カザルスのバッハの無伴奏の音について、である。

なぜ、カザルスのバッハが、それまでの三枚とまるで違う鳴り方だったのか。
その理由について考えていると、
結局のところ、スピーカーはスピーカーの音を聴いている、という結論にたどりつく。

そんな非科学的なことが結論か──、といわれれば、
そうかもしれませんね、というしかないが、
スピーカーはスピーカーの音を聴いている、としか説明のしようのないことが、
現実にはあることはかわりようがない。