終の組合せ(その5)
「華麗なる4ウェイシステムの音世界」を引用しておく。
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JBLのプロシリーズユニットを中心にマーク・レビンソンのアンプを使ってマルチドライブするという贅沢な組合せ。ユニット構成は片チャンネル当りウーファーに2231Aを2本、中域用にドライバー2420に2397ホーンの組合せ、トゥイーターには2405、さらに超高域にテクニクス10TH1000を加えた4ウェイ構成だ。アンプ類はマーク・レビンソンの最新製品を使って徹底的にマルチ化を図る。パワーアンプは低音用、中音用にそれぞれモノ構成のML2Lを2台ずつ使い、高音用、超高音用にステレオ構成のML3を1台ずつ使う、計6台という夢の組合せだ。ML2LはA級動作で出力25W、ML3はAB級動作で250W×2だが、実際に比較して聴いてみると、ML2Lの方が音の輪郭が明解でML3の方が少し甘いという印象がある。したがって、好みに応じてマルチ帯域分担を交換してもかまわない。この6台のパワーアンプをもっと凝って使うなら、低音用にML2Lをブリッジ接続にして計4台使い、中音用と高音用にML3を1台ずつ、超高域はLCネットワークで分割するという方法もある。8Ωの2231Aは並列接続で4Ωになり、ブリッジ接続のML2Lからは200Wのパワーが供給できる。ML2Lは実際には公称出力の倍以上の実力があり、これは事実上400Wクラスに相当するといってよい。エレクトロニック・クロスオーバーはLNC2Lを2台使い、クロスオーバーは800Hzと8kHz近辺でうまくいくはずだ。LNC2Lは2チャンネル型だが、別売のOCSモジュール組込みの3ウェイ型にすると、高域は15kHz近辺でクロスさせれば゛4ウェイマルチドライブとなる。コントロールアンプのML6は、輸入元への注文によりフォノイコライザーのゲインやインピーダンス値をEMT・TSD15カートリッジ用に調整してもらう。プレーヤーは、DD型全盛時代にあえてマイクロのRX5000/RY5500の糸ドライブを選ぶ。このプリミティブな方式により安定した音が再生できるので、ハイエンドのユーザーにも十分価値のある製品といってよい。アームはオーディオクラフトのAC3000MCで、アームパイプをEMT・TSD15用とする。取りつけるカートリッジの最適ポイントに合わせた音はすばらしい。
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マルチアンプ駆動による4ウェイ・システムだから、かなり大がかりなシステムであり、
このシステムの規模からすると、瀬川先生が提案されているリスニングルームとしてのスペースも、
かなり広いものだと想像されるかもしれないが、
瀬川先生が、この組合せで想定されているのは10畳ほどの空間だ。
ウーファー用のエンクロージュアは、
HIGH-TECHNIC SERIES-1と「華麗なる4ウェイシステムの音世界」とでは、基本的に同じである。
フロントバッフルが傾斜している形状の横に長いエンクロージュアである。
寸法比には気を配られている。
そのくらいで、特別なエンクロージュアとはいえない。
HIGH-TECHNIC SERIES-1、「華麗なる4ウェイシステムの音世界」の記事は、
どちらも1970年代後半であり、それから四十年以上が過ぎ、
エンクロージュアは形状も材質も仕上げも、実に多彩になってきた。
それらエンクロージュアを見慣れた目には、
瀬川先生提案のエンクロージュアは、際立った特徴はないといえる。
何の変哲もないエンクロージュアだけれども、
凝ることのみにこだわってしまい、先に進めない状況を自らつくりだすよりも、
まず、このエンクロージュアでいい。
そうなるとウーファーユニットの選定だ。