Archive for 7月, 2021

Date: 7月 7th, 2021
Cate: イコライザー

私的イコライザー考(ダイナミックバランス・イコライザー)

トーンコントロール、グラフィックイコライザー、
パラメトリックイコライザーなど、周波数特性を変化させる機器は昔からある。

音を聴いて、トーンコントロールを調整する。
曲のはじめで、トーンコントロールを調整したとしよう。

曲が展開していくにつれて、トーンコントロールの調整はそのままでいいのか。
そう思うことが、10代のころからあった。

かといって、曲を聴いている途中で、またトーンコントロールをいじるということはしたくない。
そういう気持も強かった。

トーンコントロールやイコライザー等の難しいところは、このところにあるといっていい。
音楽は常に変化して、展開していく。

その音楽に対して、その曲のさわりのところをだけを聴いて、
トーンコントロール、イコライザーを調整したところで、
それがどんなにうまくいったとしても、
一分後、五分後、十分後……まで、そのままでうまくいくという保証は、どこにもない。

ならば曲の展開に応じて、カーヴが対応・変化していくことができないものだろうか。
デジタル技術が登場した時に、そんなことを妄想したことがある。

従来のトーンコントロール、イコライザーをスタティックバランスとすれば、
それはダイナミックバランス・イコライザーとも呼べる。

音楽信号を、メモリーに一旦バッファーしておいて、カーヴを対応させていく。
デジタル信号処理ならば、不可能ではないはず。
そう思いながらも、そのための勉強をしようとは思わなかった。

けれど、世の中には同じことを考えただけでなく、それを可能にする人(たち)がいる。

Date: 7月 7th, 2021
Cate:

音の種類(その2)

音楽に奉仕する音がある。
音楽に奉仕しない音もある。

音楽に奉仕させる音も、ある。

Date: 7月 7th, 2021
Cate: VUメーター

VUメーターのこと(その26)

SAEのMark 2500のメーターの駆動回路はどうなっているかというと、
スピーカー出力に並列に接続されている。

メーターのレンジ切り替えのための抵抗と半固定抵抗が複数直列に挿入されていて、
その出力にブリッジダイオードがきて、メーターに接続されている。

音質面を考慮すれば、スピーカーの出力からバッファーアンプを介して、
という接続にするところだが、そんなことはやっていない。

バッファー回路を増設する手もあるが、
まずはブリッジダイオードに対してノイズ対策をすること、
そしてメーターにもコイルが使われている。

ならば、メーターのコイルに対して、別項で書いているCR方法を施す。
まったく効果なしとはならないと予測している。

Date: 7月 6th, 2021
Cate: VUメーター

VUメーターのこと(その25)

メーターがついていれば、その針がどこまで振れるのか。
このことに、まったく関心がない、と断言できるオーディオマニアは、そういないはずだ。

メーター付きのアンプを手に入れたのであれば、
しかもそれがパワーアンプのメーターであれば、どこまで出力が出せるのか、
つまりどこまで針が振れるのかをやってみたくなる。

瀬川先生が、ステレオサウンド 59号の新製品紹介で、
アキュフェーズのM100を取り上げられている。
     *
 いったい、どこまでの出力が出せるものかと、ハイパワー限界のテストをしてみた。こういうテストは、もしもクラシックで、ピーク500Wを出そうとしたら、ふつうの部屋ではとても耐えられない音量になってしまう。むしろ、最近の録音の良いジャズやフュージョンの、むしろマイナー・レーベル(たとえばオーディオ・ラボやシェフィールドなど)のほうが、一瞬のピーク出力が制限されずにそのままカッティングされている。いいかえれば、音量感の上ではむしろ意外なところで、出力の表示は数百Wを軽くオーバーシュートして、びっくりさせられる。
     *
M100は、出力500Wのモノーラルパワーアンプで、
8Ω負荷時のピークパワーの値を数字で示すディスプレイもついている。

瀬川先生は、この時の試聴で640Wを記録した、と書かれている。
この時のスピーカーはJBLの4345だろうから、出力音圧レベルは95dB/W/m。
いまどきの80dB前後のスピーカーとは違う。

メーターがついていると楽しい。
ピークメーターであれば、さらに楽しい。

とはいえ、メーターの針の動きを、ずっと眺めているわけではない。
瀬川先生も、59号で、こうも書かれている。
     *
 というのは、かなり時間をかけてテストしたにもかかわらず、C240+M100(×2)の音は、聴き手を疲れさせるどころか、久々に聴いた質の高い、滑らかな美しい音に、どこか軽い酔い心地に似た快ささえ感じさせるものだから、テストを終えてもすぐにスイッチを切る気持になれずに、そのまま、音量を落として、いろいろなレコードを、ポカンと楽しんでいた。
 その頃になると、もう、パワーディスプレイの存在もほとんど気にならなくなっている。500Wに挑戦する気も、もうなくなっている。ただ、自分の気にいった音量で、レコードを楽しむ気分になっている。
     *
ならばメーターなどなくてもいいじゃないか、
メーターがないほうが音がよくなるのだから、と。
人によっては、そう思われるかもしれないが、
オーディオ機器の製品としての魅力というものは、
そんなふうに割り切れるわけではないところに潜んでいたりする。

Date: 7月 6th, 2021
Cate: 日本のオーディオ

日本のオーディオ、これから(取り残されてきているのか・その4)

1月に発表され販売されていたHiByのFC3が、
半年経って、ようやく日本の輸入元、飯田ピアノが扱う、と発表になった。

特殊な製品で製品サポートに難しい面があるというのであれば、
体制が整うまで取り扱いを先延ばしにするというのならばわかるが、
FC3はそういう類の製品ではない。

なのに、どうして半年も、取り扱いを始めるのにかかったのだろうか。
私を含めて、欲しいと思った人は、すでに海外のストアから購入している、と思う。

それに今回の発表をみると、
付属するケーブルはUSB-C to USB-CとUSB-A to USB-Cである。

私が購入したサイトでは、オプションで、Lightning to USB-Cケーブルを選べた。
iPhoneユーザーにとっては、Lightning to USB-Cケーブルは便利である。

日本はきめ細かなサービスを得意とする、といわれたのは、ずいぶん昔のこと。
いまのところ、飯田ピアノのサイトをみるかぎり、
Lightning to USB-Cケーブルは用意されていないようである。

中国のストアでは、発売開始から用意されていたものが、
日本の輸入元ではない。

輸入元のサポートを必要としない製品ならば、どちらから買うのか。

Date: 7月 6th, 2021
Cate: VUメーター

VUメーターのこと(その24)

マランツのModel 510Mは、ここ十年、オーディオ店で中古を見かけることはなくなった。
たまたま私が出会っていないだけで中古として流通しているのかもしれないが、
1990年代には、オーディオ店で中古を見かけることが何度かあった。

ステレオサウンドでリファレンスとして使われていたし、
510Mが現役だったころのステレオサウンドが行っていた読者の選ぶベストバイでも、
510Mは上位にランクされていた。

人気があったモデルだから、中古が出てくるわけでもある。

それでも私がみかけた510は、510MかP510Mのどちらかだった。
メーター無しの510は一度も見かけたことがない。

510と510Mの価格差は五万円。
この時代、メーターの有無による音の違いがあるとは、
少なくともオーディオ雑誌で見かけたことはない。

となると、このクラスのモデルを購入する人にとって、
510Mという選択だったのだろうか。

510にはメーターがないので、メーターの感度切り替えのツマミがない。
510Mには、フロントパネル下側に四つのツマミがあるが、
510は二つだけである。

これ以外にも細かな違いがいくつあって、
写真で見較べると、510Mのほうに魅力を感じる。

メーター無しの510は、あまり売れなかったのか。

おそらくだが、510と510Mを比較試聴すれば、510のほうが音はいいであろう。
それでも510と510Mを直接比較すれば、そうであっても、
510Mを選択した人は、他社製とのアンプの比較はやったであろうが、
510との比較試聴は、ほとんどの人がやっていないはずだ。

SAEのMark 2500もメーターがないほうが音はいいに決っている。
それでもメーター無しのMark 2500を想像すると、
この精悍なパネルフェイスは得られない、と思う。

Date: 7月 5th, 2021
Cate: VUメーター

VUメーターのこと(その23)

SAEのMark 2500と同時期のパワーアンプに、
マランツのModel 510Mがあった。

1970年代後半のステレオサウンドのリファレンス・パワーアンプでもあった。

ステレオサウンド 43号の特集ベストバイで、
井上先生は《標準アンプ的に使えるマランツの伝統をもつ音は信頼度が高い》、
瀬川先生は《いわゆる音のクセというほどの色づけは感じられず、音質評価の基準として使うことができる》、
と評価されている。

510M(525,000円)には、メーターがついていた。
その510Mには、メーターを省いたModel 510(475,000円)があり、
完成後の測定で、特に優れた個体をピックアップして、
8mm厚の19インチ・ラックマウントのパネル仕様のModel P510M(565,000円)もあった。

この三つの仕様の510の音は、それぞれどう違っていたのだろうか。

510MとP510Mの違いについては、
1978年発行の「世界のコントロールアンプとパワーアンプ」のなかで、
井上先生は《リファレンス用の♯510Mよりも余裕のあるスケール感タップリの音であり、ソリッドさ、タイトさの面では不足気味かもしれない》、
瀬川先生は《そのほんのわずかな違いを拡大していえば、510Mにくらべてこちらの方がいくつか反応がおっとりしている》、
こんなふうに表現されている。

P510MのPはprofessionalの頭文字である。
だから19インチ・ラックマウントパネル仕様なのだ。

セレクト品だからの音の違いもあるだろうが、
8mm厚のフロントパネルの違いも、違いの要因として無視できないはずだ。

510Mのフロントパネルの厚みがどれだけなのかは、はっきりとしないが、
P510Mが、わざわざ8mm厚と謳っていることからも、8mmよりも薄いはずだ。

しかもフロントパネルの横幅が違う。
510Mの横幅は39.0cm、P510Mは48.3cm。
厚みも違うのだから、重量も違うわけだ。
それにラックハンドルもついているから筐体の違いは無視できない。

私が510MとP510M以上に、その音の違いがどれだけなのか知りたいのは、
510Mと510(メーターの有無)の違いである。

Date: 7月 4th, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(2500とA68のこと)

SAEのMark 2500と同時期に、
瀬川先生が愛用されていたパワーアンプに、スチューダーのA68がある。

A68はプロ用のパワーアンプのため、
コンシューマー用とは、かなり違う構成となっている。

ブロックダイアグラムをみると、
まずAFフィルター(コイルとコンデンサーで構成)がある。
そのあとに、1:1のトランス、レベルコントロール、
それからゲイン14dBのプリアンプ部、カットオフ周波数50kHzのローパスフィルター、
これらの回路が、いわゆる通常のパワーアンプ部の前段にある。

パワーアンプ部の電圧増幅部のゲインは21dB、
出力段はトランジスターの3パラレル・プッシュプルとなっている。

A68もまた、FETを使っていない。
プリアンプ部もパワーアンプ部も能動素子はトランジスターのみで、
定電圧電源も、その点は同じである。

EMTのプレーヤー搭載のイコライザーアンプの155stも、
すでに書いているように、FETは使っていない。
Mark 2500もそうであり、A68もである。

FETを使っていないアンプを愛用されていたことは、単なる偶然であろう。
FETを使っていないアンプを探しての選択ではないことはわかっている。

それでも、このことは素通りできない事実であるように感じている。

Date: 7月 3rd, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(2500とAMPZiLLAシリーズのこと)

SAEのmark 2500とMark 2600の回路図を比較すると、
抵抗やコンデンサー、電圧などの値が回路図に入ってなければ、
まったく同じである。

これまで書いてきたように、2500と2600の基本回路の設計は、
ジェームズ・ボンジョルノであり、
Mark 2500と同時期に、GASを設立し、AMPZiLLAを出している。

AMPZiLLAは、いうまでもなくボンジョルノの設計である。
基本設計とことわることなく、彼のアンプである。

兄弟といっていいほど、Mark 2500とAMPZiLLAシリーズは似ているし、
違うところもいくつかある。

入力コンデンサーに関してもそうである。
どちらのアンプも、入力には電解コンデンサーが入っている。

Mark 2500では100μFの電解コンデンサーが使われている。
電圧増幅回路は、いわゆる上下対称回路と呼ばれているもので、
入力信号は、プラス側のトランジスターとマイナス側のトランジスターの入力へと、
分岐している。

それぞれの入力に電解コンデンサーが入るわけだが、
電解コンデンサーの向きが、プラス側とマイナス側とでは違う。

プラス側のコンデンサーは+端子が入力側で、
マイナス側のコンデンサーの+端子はトランジスター側となっている。

AMPZiLLAでは、ここに関しては同じなのだが、
AMPZiLLA IIからは変ってきている。

220μFの電解コンデンサーを二つ直列接続している。
そしてこのコンデンサーの出力から分岐して、
プラス側とマイナス側のトランジスターへと接続されている。

SUMOのThe Power、The Goldでも電解コンデンサーがあって、
AMPZiLLA IIと同じ使い方がされている。

ちなみにSAEのXシリーズでも、この電解コンデンサーはある。
使い方はMark 2500、AMPZiLLAと同じなのだが、容量が47μFと約半分になっている。

Date: 7月 2nd, 2021
Cate: 再生音

ゴジラとオーディオ(その8)

半年以上公開が遅れた「ゴジラvsコング」が、
やっと今日(7月2日)公開を迎えた。

さっそく観てきた。

2005年に公開されたピーター・ジャクソン監督の「キング・コング」を観た時に、
CGでつくれない映像はなくなった、と感じていた。

どんな映像でもつくれるようになったから、どんな映像をつくりだしたいのかが、
これまで以上に重要になってくる、とも感じていた。

「ゴジラvsコング」を観ていても、同じことを考えていた。
2005年から十年以上が経っているから、技術はさらに進んでいる。

もうCGの技術に驚くことはなくなりつつある。

日本の「ゴジラ」は着ぐるみゴジラであり、
アメリカの「ゴジラ」はCGIゴジラである。

着ぐるみゴジラをミニチュアの街を壊していく。
着ぐるみゴジラと着ぐるみ怪獣とが戦う。
それが日本の「ゴジラ」映画であり、私が子供のころに観た「ゴジラ」シリーズだ。

本編が始まる前に、アメリカから始まった特撮の技術、
それに刺戟された日本の映画人たちが独自の特撮を生み出して、
「ゴジラ」を撮影した、という短い映像が流れた。

この短篇(サントリーの缶コーヒー、BOSSのコマーシャル)があったから、
よけいにあれこれ思ってしまったし、
ここでもSAEのMark 2500に関することを思っていた。

Mark 2500は1975年に登場したアンプで、
筐体は、曲げ加工を施したアルミニウムで構成されている。

Mark 2500と同時代のパワーアンプで、1976年時点で、
価格的に同じか超えていたアンプとなると、
アルテックの9440A(691,000円)、オーディオ・リサーチのD150(1,280,000円)、
マッキントッシュのMC2300(858,000円)くらいしかなかった。

いまでは650,000円のパワーアンプは最高級機とは呼べなくなっているが、
四十年以上前は、そうではなかった。

当時の最高級機といえたMark 2500と、
現在の最高級機といえるパワーアンプの筐体のつくりを、
「ゴジラvsコング」を観ながら比較していた。

Date: 7月 2nd, 2021
Cate: 世代

世代とオーディオ(ある記事を読んで)

ソーシャルメディアを眺めていたら、
facebookでもtwitterでも、フォローしている人数人が、
ある記事をシェアして、感想を述べていたのが目に入ってきた。

記事のタイトルは、
「オンキヨーの衰退、“経営陣だけ”を責められないワケ 特異すぎる日本のオーディオ市場」
本田雅一氏が書かれている。

良記事だ、という人もいたし、そうでもないという人もいた。
私の感想は控えておくが、一箇所だけひっかかった。

記事には、こうある。
《従って、多くの人の心に残っているオンキヨーは大朏家が経営していた頃と重なっている。》

記事にもあるが、大朏直人氏が1993年に、個人でオンキヨーを買収している。
つまり本田雅一氏にとって、
そして本田雅一氏がいうところの「多くの人」の心に残っているオンキヨーは、
1993年以降のオンキヨーということになる。

このところを読んで、本田雅一氏は、私よりも一回り以上若い方なんだ、と思ってしまった。
本田雅一氏の名前は何度か目にしたことはあるが、
書かれたものを読んだことはなかったし、どういう経歴の人なのかもまったく知らなかった。

なので、
《従って、多くの人の心に残っているオンキヨーは大朏家が経営していた頃と重なっている》
のところだけで、私よりも若いと勝手に思ってしまった。

けれど検索してみると、1967年生れとあった。
私より四つ若い人。まあ、同世代と呼んでもかまわないだろう。

だからこそ、よけいに、
《従って、多くの人の心に残っているオンキヨーは大朏家が経営していた頃と重なっている》
のところがひっかかった。

私にとってのオンキヨーというオーディオメーカーは、
1980年代まで、といっていい。
それ以降の製品も知っているし、いくつか聴いてはいるけれど、
心に残るではなく、記憶に残っている製品ということでは、
1980年代までのオンキヨーである。

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」でソニーについて、
井上先生が書かれたことを引用しておく。
     *
 とかく趣味の世界には、実際に使ったことがなくても、本やカタログなどを詳細に調べ、同好の士と夜を徹して語り明かし、ユーザー以上に製品のことを熟知しているという趣味人も多い。それはそれでよいのだろうが、オーディオ、カメラ、時計など、物を通じて楽しむ趣味の場合には、対象となる製品は基本的に人間が人間のために作った優れた工業製品であるべきだと考えるため、最初に巡り合った製品が、そのメーカーやブランドの価値を決定することになるようだ。
     *
井上先生の、この文章を思い出していた。

《最初に巡り合った製品が、そのメーカーやブランドの価値を決定》するところは、
オーディオには、はっきりとある。

本田雅一氏が、最初に巡り合ったオンキヨーの製品は、
私が最初に巡り合ったオンキヨーの製品とは、違うことだろう。
製品が違うだけでなく、時代も違うのだろう。

Date: 7月 2nd, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(2500と2600の関係・その3)

Mark 2500の出力段にかかる電圧は95V、
Mark 2600は105Vである。

パワートランジスターとヒートシンクは、振動源と音叉の関係に近い。
トランジスターを流れる電流で振動を発生する。
この振動がヒートシンクのフィンに伝わっていく。

だからパワーアンプ(ヒートシンクのつくり、取り付け方)によっては、
パワーアンプの出力に抵抗負荷を接ぐ、入力信号をいれ、ヒートシンクに耳を近づければ、
音楽が、かなり盛大に聞こえてくることもある。

その聞こえ方も、アンプの構造によって違ってくる。
それゆえにヒートシンクの扱いは、パワーアンプの音質を大きく左右するともいえる。

このことを、高校生の私は知らなかった。
このことを知ったうえで、2500と2600を比較すると、
トランジスターにかかる電圧が若干高くなったことでトランジスターの振動は、
多少ではあるだろうが、2500の95Vのときよりも増えているはずだ。

振動源であるパワートランジスター。
その振動が変化するということは、ヒートシンク(音叉)との関係にも変化がある。

2500と2600の筐体構造は共通である。
ヒートシンクも写真でみるかぎりは共通している。

パワートランジスターとヒートシンクの振動源と音叉の関係を理解したうえで、
2500と2600の音の違いを考えれば、このへんが影響してのことのはず、といえる。

Date: 7月 2nd, 2021
Cate: 戻っていく感覚

SAE Mark 2500がやって来る(2500と2600の関係・その2)

SAEのMark 2500とMark 2600の違いは、
回路図で比較する限りでは、電源電圧の違いと、
それと関係して電解コンデンサーの耐圧が増え、容量が少し減ったことぐらいである。

インターケットで検索して見ることができる写真を比較しても、
少なくともRFエンタープライゼス輸入の2500と2600に関しては、
これといった違いが見つけられない。

もっとも実物を手に入れてじっくりと比較すれば、いくつか違いはあるのだろうが、
ほとんどないに等しい、といってもいい。

この時代の海外製のオーディオ機器は、
ロットによって使用されている部品に違いがあることは、
けっこうざらにあって、ある特定のロットで比較して違いがあったからといっても、
違うロットではどうなっているのかは、なんともいえない。

三洋電機貿易になってからのMark 2600は電源トランスがトロイダル型になっているし、
使用トランジスターにも、はっきりとした違いがある。

(その4)で、Mark 2600は、日本に製造を委託した、というコメントがあった。
RFエンタープライゼスは、SAEが拡張路線をとることに反対し、取り扱いをやめている。

なので日本で製造ということもあったのかもしれない。
それでもRFエンタープライゼス扱いのMark 2600はアメリカ製造だと私は思っている。

なので、ここでの2500と2600の違いに関して、
あくまでもRFエンタープライゼス取り扱いのモノについて、である。

瀬川先生は、「世界のコントロールアンプとパワーアンプ」での試聴記で、
《♯2500にくらべると、低域がややひきしまり、中〜高域の音色がわずかに冷たく硬質な肌ざわりになったところが、多少の相違点といえる》
と書かれている。

このわずかな違いは、なぜなのか。
当時は、その理由がはっきりとはわからなかった。

Date: 7月 1st, 2021
Cate: Cornetta, TANNOY

TANNOY Cornetta(2020年7月1日)

一年前の7月1日は水曜日だった。
audio wednesdayの日だった。
コーネッタを鳴らした日だった。

ひさしぶりにコーネッタの音を聴いた日だった。
初めて自分の手でコーネッタを鳴らした日だった。

コーネッタで聴いたカラヤンのパルジファルが忘れられないでいる。

Date: 7月 1st, 2021
Cate: 長島達夫

長島達夫氏のこと(その13)

ステレオサウンド 50号掲載の「2016年オーディオの旅」に登場するスピーカー。
これは、スピーカーの理想像の一つといえるわけだが、
長島先生は「2016年オーディオの旅」のなかで、
このスピーカーの周波数特性は、20Hzから20kHzまでとされている。
可聴帯域のみに限定している、とある。

空気を磁化して駆動するスピーカーなのだから、
振動板といわれるモノは存在しない。

空気を直接駆動するわけだから、
空気の質量分だけが、駆動部分の質量となる。

つまり、ないに等しいわけで、
高域の周波数特性は100kHzであっても、余裕でカバーできるはずだ。
それでも、あえて20Hzから20kHzまで、とされていることを、
当時読んでいて、どうしてなんだろうと考えていた。