世代とオーディオ(ある記事を読んで)
ソーシャルメディアを眺めていたら、
facebookでもtwitterでも、フォローしている人数人が、
ある記事をシェアして、感想を述べていたのが目に入ってきた。
記事のタイトルは、
「オンキヨーの衰退、“経営陣だけ”を責められないワケ 特異すぎる日本のオーディオ市場」、
本田雅一氏が書かれている。
良記事だ、という人もいたし、そうでもないという人もいた。
私の感想は控えておくが、一箇所だけひっかかった。
記事には、こうある。
《従って、多くの人の心に残っているオンキヨーは大朏家が経営していた頃と重なっている。》
記事にもあるが、大朏直人氏が1993年に、個人でオンキヨーを買収している。
つまり本田雅一氏にとって、
そして本田雅一氏がいうところの「多くの人」の心に残っているオンキヨーは、
1993年以降のオンキヨーということになる。
このところを読んで、本田雅一氏は、私よりも一回り以上若い方なんだ、と思ってしまった。
本田雅一氏の名前は何度か目にしたことはあるが、
書かれたものを読んだことはなかったし、どういう経歴の人なのかもまったく知らなかった。
なので、
《従って、多くの人の心に残っているオンキヨーは大朏家が経営していた頃と重なっている》
のところだけで、私よりも若いと勝手に思ってしまった。
けれど検索してみると、1967年生れとあった。
私より四つ若い人。まあ、同世代と呼んでもかまわないだろう。
だからこそ、よけいに、
《従って、多くの人の心に残っているオンキヨーは大朏家が経営していた頃と重なっている》
のところがひっかかった。
私にとってのオンキヨーというオーディオメーカーは、
1980年代まで、といっていい。
それ以降の製品も知っているし、いくつか聴いてはいるけれど、
心に残るではなく、記憶に残っている製品ということでは、
1980年代までのオンキヨーである。
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオブランド172」でソニーについて、
井上先生が書かれたことを引用しておく。
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とかく趣味の世界には、実際に使ったことがなくても、本やカタログなどを詳細に調べ、同好の士と夜を徹して語り明かし、ユーザー以上に製品のことを熟知しているという趣味人も多い。それはそれでよいのだろうが、オーディオ、カメラ、時計など、物を通じて楽しむ趣味の場合には、対象となる製品は基本的に人間が人間のために作った優れた工業製品であるべきだと考えるため、最初に巡り合った製品が、そのメーカーやブランドの価値を決定することになるようだ。
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井上先生の、この文章を思い出していた。
《最初に巡り合った製品が、そのメーカーやブランドの価値を決定》するところは、
オーディオには、はっきりとある。
本田雅一氏が、最初に巡り合ったオンキヨーの製品は、
私が最初に巡り合ったオンキヨーの製品とは、違うことだろう。
製品が違うだけでなく、時代も違うのだろう。